労働保険の保険関係の消滅


(1) 保険関係の消滅の原則(法5条)

適用事業であると暫定任意適用事業であるとを問わず、保険関係は、事業が廃止(継続事業の場合)又は終了(有期事業の場合)した日の翌日に消滅する。

・保険関係消滅のための手続は特に必要としないが、事業主は50日以内に確定保険料申告書を提出して労働保険料の清算手続きを行わなければならない。

・休業(事業の一時停止)の場合は、ここにいう廃止ではないので保険関係は消滅しない。

・「事業の廃止等」とは現に事実上その事業の活動が停止され、その事業における労働関係が消滅したときを持って事業の廃止等とする。従って法人が解散したからといって、直ちにその事業が廃止されたことにはならず、特別の事情がない限り、その「清算結了の日の翌日」に保険関係が消滅する。

(2) 暫定任意適用事業に係る保険関係の消滅

① 労災保険暫定任意適用事業に係る保険関係の消滅(整備法8条)

暫定任意適用事業(擬制任意適用事業を含む)については、(1)の規定によるほか、事業主が当該保険関係の消滅の申請をし、厚生労働大臣労働大臣の認可(都道府県労働局長に権限委任)があった日の翌日に、当該保険関係が消滅する。なおこの申請は、次のいずれにも該当する場合でなければ行うことができない。

a その事業に使用される労働者の過半数の同意を得ること

b 労災保険に係る保険関係が成立した後1年を経過していること(擬制任意適用事業を除く)

・政府は、当分の間、事業主の申請により、暫定任意適用事業についての労災保険に係る保険関係が成立する前に発生した業務災害・通勤災害に関しても、特例として労災保険の保険給付を行うこととしている。この特例による保険給付が行われることとなった場合、政府は厚生労働省令で定める期間、当該事業主から、労働保険料のほか、特別保険料を徴収することとしており、その場合には、上記①、②に該当することに加え、この特別保険料が徴収される期間を経過していなければ、労災保険に係る保険関係を消滅させることはできないとされている。なお、この特例給付の申請は労働者の過半数が希望する場合には必ず行わなければならない。(整備法18条、18条の2、法19条)

・労災保険暫定任意適用事業に係る保険関係消滅申請書は、労働者の同意を得たことを証明することができる書類を添付したうえ、所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に提出する。

② 雇用保険暫定任意適用事業に係る保険関係の消滅(法附則4条)

厚生労働大臣の認可を受けたことにより雇用保険に係る保険関係が成立している事業(擬制任適用事業を含む)の事業主については、(1)の規定によるほか、その者が当該保険関係の消滅の申請をし、厚生労働大臣の認可(都道府県労働局長に権限委任)があった日の翌日に、その事業についての当該保険関係が消滅する。なお、この申請は、その事業に使用される労働者の4分の3以上の同意を得なければ行うことができない。

・雇用保険暫定任意適用事業に係る保険関係消滅申請書は、労働者の同意を得たことを証明することができる書類を添付したうえ、所轄公共職業安定所長を経由して所轄都道府県労働局長に提出する。(則附則3条、則75条)

・労災保険、雇用保険ともに、労働者が保険関係の消滅を希望したとしても事業主にその意思がない場合は、保険関係の消滅の申請をする必要はない。

(暫定任意適用事業に係る保険関係の消滅のまとめ)

 

労災保険暫定任意適用事業

雇用保険暫定任意適用事業

要件

① 事業主の消滅の申請

② 労働者の過半数の同意

③ 保険関係成立後1年を経過していること

④ 特例給付が行われている場合には労災保険の特別保険料が徴収される期間を経過していること

① 事業主の消滅の申請

② 労働者の4分の3以上の同意

提出書類

① 保険関係消滅申請書

② 労働者の過半数の同意を証明できる書類

① 保険関係消滅申請書

② 労働者の4分の3以上の同意を証明できる書類

提出先

所轄都道府県労働局長

(所轄労働基準監督署長を経由)

所轄都道府県労働局長

(所轄公共職業安定所長を経由)

保険関係消滅日

厚生労働大臣労働大臣の認可(都道府県労働局長に権限委任)があった日の翌日

徴収法について一覧

PAGETOP