労働保険の確定保険料


労働保険の確定保険料(徴収第19~21条)

5 確定保険料(法19条~21条)

(解説)

(1) 確定保険料の納付額

①継続(一括有期事業を含む)の場合

(原則)

賃金総額×一般保険料率

(例外)

a特別加入者がいる場合(法19条1項、2項)

第1種特別加入者又は第3種特別加入者を含む事業については、原則の式により計算した額に次の式により計算した額を加算した額が、確定保険料の額となる。

保険料算定基礎額の総額×第1種又は第3種特別加入保険料率

 

b免除対象高年齢労働者を使用する場合(法19条の2)

免除対象高年齢労働者を使用する事業については、原則の式により計算した額から次の式により計算した額を控除した額が、確定保険料の額となる。

 

高年齢者賃金総額×雇用保険料率

 

・賃金総額、保険料算定基礎額及び高年齢者賃金総額に1000円未満の端数があるときは、その端数は切り捨てる。

・確定保険料の額に1円未満の端数があるときは、その端数は切り捨てる。

・賃金総額には、その保険年度中に支払うことが確定した賃金であれば、現実にまだ支払われていないものも含まれる。(通達)

・確定保険料は概算保険料のように延納することができない。

②有期事業の場合

(原則)

 

賃金総額×一般保険料率(労災保険率)

(例外)
第1種特別加入者を含む事業については、原則の式により計算した額に次の式により計算した額が、確定保険料の額となる。

 

保険料算定基礎額の総額×第1種特別加入保険料率

 

・賃金総額及び保険料算定基礎額の総額に1000円未満の端数があるときは、その端数は切り捨てて計算する。

・確定保険料の額に1円未満の端数があるときは、その端数は切り捨てる。

③第2種特別加入者の場合

a 継続事業(一括有期事業を含む)の場合

保険料算定基礎額の総額に当該事業についての第2種特別加入保険料率を乗じて得た額が納付すべき額となる。

b 有期事業の場合

その事業の保険関係に係る全期間における保険料算定基礎額の総額に当該事業についての第2種特別加入保険料率を乗じて得た額が納付すべき額となる。

(2) 申告、納期限(法19条1項、2項、3項)

①継続事業の場合

a 年度更新による場合

→ 次の保険年度の初日から50日以内(当日起算)

b 保険年度の中途に保険関係が消滅した場合

→ 保険関係が消滅した日から50日以内(当日起算)

② 有期事業の場合

→ 保険関係が消滅した日から50日以内(当日起算)

 

・保険年度の中途に中小事業主等の特別加入の承認の取り消された事業に係る第1種特別加入保険料及び海外派遣者の特別加入の承認が取り消された事業に係る第3種特別加入保険料に関しては、それぞれ当該承認が取り消された日から50日以内に申告しなければならない。

(3) 申告、納付先(則38条)

確定保険料の申告・納付先は原則として概算保険料の申告・納付先と同様であるが、納付すべき保険料がない場合における確定保険料申告書の提出については、日本銀行及び郵便局を経由して行うことはできない。なお、この場合でも労働基準監督署を経由して提出することはできる。

・確定保険料申告書は、納付した概算保険料の額が確定保険料の額以上の場合(納付すべき労働保険料がない場合)でも提出しなければならない。

(4) 確定保険料の認定決定(法19条4項、5項)

政府は、事業主が確定保険料申告書を提出しないとき又はその申告書の記載に誤りがあると認めるときは、労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知する。

①通知(則38条5項)

所轄都道府県労働局歳入徴収官が、事業主に対して認定決定された確定保険料の額を、納入告知書によって通知する。

②納付

当該通知を受けた事業主は、次の額を、通知を受けた日から起算して15日以内(翌日起算)に、納入告知書によって納付しなければならない。

a 概算保険料(増加概算保険料及び追加聴取による概算保険料を含む)を全く納付していない場合は認定決定された確定保険料の全額

b 既に納付した概算保険料(増加概算保険料及び追加徴収による概算保険料を含む)の額が認定決定された確定保険料の額に足りないときは、その不足額

・事業主が認定決定による確定保険料を納付しなければならない場合には、原則として追徴金が徴収される。

(5) 追徴金の徴収(法21条、則26条)

①要件及び額

事業主が確定保険料の認定決定により確定保険料又はその不足額を納付しなければならない場合には、納付すべき額(1000円未満の端数は切り捨て)に100分の10を乗じて得た額が追徴金として徴収される。

・次の場合には追徴金は徴収されない。

a 認定決定により納付すべき確定保険料又はその不足額が1,000円未満である場合

b 天災その他やむを得ない理由により認定決定による確定保険料又はその不足額を納付しなければならなくなった場合

・概算保険料には追徴金は課されないため、認定決定がなされても追徴金は徴収されない。

②徴収手続

所轄都道府県労働局歳入徴収官は、追徴金を徴収する場合には、通知を発する日から起算して30日を経過した日(当日起算)をその納期限と定め、納入告知書によって、事業主に追徴金の額及び納期限を通知しなければならない。

(6) 還付・充当(法19条6項)

事業主が納付した概算保険料の額が、確定保険料の額(確定保険料の認定決定が行われた場合にはその決定された額)を超える場合には、政府はその超える額を次の保険年度の労働保険料若しくは未納の労働保険料その他徴収法の規定による徴収金に充当し、又は還付する。

①還付(則36条)

事業主が、確定保険料申告書を提出する際(認定決定が行われた場合には、確定保険料の認定決定の通知を受けた日の翌日から起算して10日以内)に、それぞれ、既に納付した概算保険料の額のうち、確定保険料の額を超える額(超過額)の還付を請求したときは、所轄都道府県労働局労働保険特別会計資金前渡官吏(所轄都道府県労働局資金前渡官吏)が、その超過額を還付する。

・超過額の還付請求は、労働保険料還付請求書を所轄都道府県労働局資金前渡官吏(労災関係申告・納付手続に係る還付請求書の場合は所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局資金前渡官吏)に提出することによって行わなければならない。

②充当(則37条)

事業主による還付請求がない場合には所轄都道府県労働局歳入徴収官は、超過額を、次の保険年度の概算保険料又は未納の労働保険料その他徴収法の規定による徴収金(未納の概算保険料、延滞金、追徴金等)に充当する。

・充当は、事業主の請求ないし承認を必要としないが、充当したときは、所轄都道府県労働局歳入徴収官は、その旨を事業主に通知しなければならない。

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