付加金の支払い(2020年4月1日改正)


付加金の支払(労働基準法第114条)

裁判所は、第20条「解雇予告手当」、第26条「休業手当」若しくは第37条「割増賃金」の規定に違反した使用者又は第39条第6項「年次有給休暇中の賃金」の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から5年以内にしなければならない。


  • 使用者がすでに未払金の全額の支払を完了し、上記の賃金の支払義務違反の状態が消滅した後においては、労働者は付加金の支払請求はできない。また、未払金がある場合でも、労働者からの付加金の支給請求がない限り、裁判所は付加金の支払を命ずることはできない。
  • 通常の賃金や災害補償は付加金の支払の対象とならない。
  • 本条の2年以内の請求期間は、いわゆる除斥期間であって、時効期間ではないから、2年以内に請求の訴えを提起しなければ、付加金の支払を受けることはない
  • 「除斥期間」とは、その期間内に権利を行使しない場合、その期間の経過によって当然に権利が消滅する期間をいい、その「中断」が認められない点、及び当事者の「援用」がなくても裁判所は権利消滅の効果を認めなければならない点で「時効」とは異なる。
  • 「時効の援用」とは、時効によって利益を得る者が時効の利益を受ける意思表示をすることをいい、裁判所は、時効によって利益を受ける当事者が時効を援用しない以上は、時効を根拠にして判決をすることができない(民法145条)。
  • 労働基準法第114条の付加金支払義務は、使用者が予告手当を支払わない場合に、当然に発生するものではなく、労働者の請求により裁判所がその支払を命ずることによって、初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に労働基準法第20条の違反があっても既に予告手当に相当する金額の支払を完了し使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、労働者は同条による賦課金請求の申立てをすることができないものと解すべきである。(判例)
  • 労働基準法第24条第1項に規定する賃金の全額払いの義務に違反して賃金を支払わなかった使用者に対して、同法第114条の付加金の支払の規定が適用されるわけではない。
  • 2020年4月からの法改正で、付加金を請求できる期間を5年(これまでは2年)に延長しつつ、当分の間はその期間が3年とすることとされた。本改正による新たな賃金請求権の消滅時効期間や付加金の請求期間は、賃金支払期日や労基法第 114 条に規定する「違反があった時」が施行日(2020年4月1日)前であった場合には適用されない。(これらを改正法の施行日以後に請求する場合であっても、改正前の消滅時効期間等が適用される)

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