業務災害とは?


業務災害とは?

業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいう。

一般的に業務上と認められるためには業務起因性が認められなければならず、その前提条件として業務遂行性が認められなければならないとされている。

業務遂行性とは?

労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態

業務起因性とは?

業務と傷病等の間に一定の因果関係があること

(1)業務遂行性の類型

①事業主の支配・管理下で業務に従事している場合

→この場合、作業中に発生した災害は、大部分が業務災害として認定される。ただし、その災害が私的行為や業務逸脱行為、天災地変等(事業場の立地条件などにより、天災地変に際して災害を被り易い業務上の事情があるときは、業務起因性が認められる場合がある)により起こった場合や業務離脱中、担当業務外の行為に従事中等に起こった場合には業務外とされることもある。

(例1)業務災害○

被災者Aは、朝6時頃から資材係や倉庫番等を協力し、前夜運搬されてきた小型パイプが営業所資材置場に乱雑に荷下ろしされているのを整理していたが、材料が小型のため、付近の草むらに投げ込まれていないかと草むらに探し入ったところ、この地に多く生息するハブ(毒蛇)に左足部をかまれ負傷した。本件は業務災害である。(通達)

(例2)業務災害○

トラック運転手Aは、運転手Bと引っ越し荷物を積載して疾走中に国道上で故障修理中の他のトラックの乗務員が車の荷覆シートがめくれている旨を手真似で知らせたので、直ちに停車し、Bとともにシートをかけなおした。そのとき川の堤防上から強風が吹き、Aの防寒帽が国道中央に吹き飛ばされたので、とっさにその帽子を追って走り出した際、前方より疾走してきた乗用車に跳ね飛ばされ、死亡した。本件は業務災害である。(通達)

(例3)業務災害○

当日午前8時、本人は製剤作業を開始しようとして電動機のスイッチを入れたところ、モーターが回転しない上トランスから音がしているので、修理しようとして工場敷地内にある電柱に登ったところ、前日からの雨のため、3つめのダルマスイッチを抜こうとしたとき感電してコウ(木材の切れ端)の上に転落し、1時間後に死亡したものである。なお、本人は元A木工に働いていたときにも電気設備の修理に当たっていた経験がある。本件は業務災害である。(通達)

(例4)業務災害○

労働者Bは、オートバイで出勤し、工場の中門守衛所でタイムカードに記入のうえ、再びオートバイにて自転車置き場に向かう途中、同工場構内の指導において、同工場の製品を積載した台車をけん引中のフォークリフトと側面衝突し、左前額部挫傷等の災害を受けたものである。市道は、同工場が既設の工場施設を順次拡張していった結果、工場構内を指導が通ずることとなったもので、市道の管理は事業場が行っている。(一般市民の通行の用に供しているが、自転車、オートバイ等の通行については守衛が制限している)本件は業務災害である。(通達)

(例5)業務災害○

A社の販売外交員であるBは、事業主から井戸さらい雑用のため店に待機するように命ぜられていた。たまたま井戸掘り作業に従事していたCが、井戸内の泥をさらうため降りていってガス中毒を起こしたので、これを救助しようとして事業主が井戸に入ろうとするのを見て、Bが自ら申し出て交替して井戸に入ったところ、ロープが切れ井戸底に転落し、救出後まもなく一酸化炭素ガス中毒により死亡した。本件A社は、いわゆる「よろずや」で商品の種類も多く、当該井戸水は家事に使用するほか営業用として味噌桶の洗浄、豆腐、こんにゃくの桶水等に相当量を使用せねばならない事情があった。本件は業務災害である。(通達)

(例6)業務災害○

A事業所の部長Bは、指揮監督の責任者で、建築現場の巡回中に、大工Cが作業に手抜きをしているところを発見したので、これを指摘し、Cにやり直しを要求した。この工事の手抜きについては、既に以前にも一度注意を促したことがあり、今回が2度目であったので、厳重に戒告した。しかるにCはその非を改めようとしないで反抗的態度で抗弁したので口論となり、Cは不注意に手近の建築用の角材を手にしてBに打ってかかった。Bはこれに対し、なんら抵抗しないでその場を逃げたが、あまりにひどく打たれたので昏倒した。本条は業務災害である。

(例7)業務災害○

修理工が修理を完了した車を無免許であったが、日直職員の許可を得て試運転していたところ途中道路下に落ちて死亡した。本件は業務災害である。(通達)

②事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合

出社して事業場施設内にいる限り、労働契約に基づき事業主の施設管理下にあると認められるが、休憩時間や就業前後は実際に仕事をしているわけではないので行為そのものは私的行為となるため、そのような行為によって発生した災害は業務災害とは認められない場合がある。なお、通勤は一般的には事業主の支配下にあるとはいえないことから業務遂行性はないこととなる。従って通常は通勤災害の対象となるが、次のような災害は業務災害となる。

イ 事業主が提供する労働者の通勤手段(通勤バス等をいい、運行を第三者に委託しているものを含む)の利用に起因する災害
ロ 出勤前、退勤後に途中で用務を行う際の災害
ハ 突発事故等により事業主の命令を受けて出勤する際の災害

(例1)業務災害×

昼の休憩時間中、皮革工場の構内で労働者が同僚とキャッチボールをしていたところ銃の流れ弾に当たり負傷した場合は業務外の災害である。(通達)

(例2)業務災害○

被災労働者らは、A川に砂防えん堤を作る工事に従事していたものであるが、工事現場には緑泥片岩でできた通称「岩屋」があり、そこで昼食休憩をしていたところ、岩屋の上盤が倒壊したため、死傷した。この岩屋は、15名程度が雨宿り、防風、休憩等に使用するのに適しており、ほかに休憩小屋も設けられていたが、狭くて窓もなく、採光も悪いので労働者は南向きで暖かい岩屋を休憩に利用するのが通例であった。岩盤が倒壊した原因は、前日午後及び当日午前にダイナマイト数本による発破が行われたため、岩盤の付着部が破壊又はぜい弱化されていたことであると推定される。(通達)

(例3)業務災害○

負傷労働者は、当日午前6時45分出勤、作業が午前7時に開始するので作業開始までの間、休憩室に使用者が冬期特に設けてある暖房装置(ドラム缶を高さ約1尺に切り周囲下部に穴を開け上部から薪をとおずるもの)を囲んで、ほかの労働者とともにいつものように暖を取っていた。あまり薪が燃えないので、機械掃除用として作業場においてあった石油を他の労働者が持ってきて薪にかけて燃やしたが、もんぺに燃え移って火傷した。本件は業務災害である。(通達)

(例4)業務災害○

A社の運転手の3人は、いつものようにB工場の従業員を輸送するため大型バスを運転してA社倉庫の車庫を出発し、輸送出発地点に到着し方向転換をしようとしたところ、たまたまエンジンが止まっていたので運転手はクランクしていたところ、待ち合わせ中の通勤者が乗車を始め被災労働者Cが続いて乗車しようとしたそのとき、ブレーキを踏んでいた運転手の足がゆるみ、神社前の幟石にのっかっていたバスの前輪が後方に落ち、前輪のフェンダーが幟石に触れたため、幟石がCに倒れ掛かってCは挫傷を受けた。当該バスは、A社所有のものであるが、神社前とB工場との間(22.5キロメートル)を契約により通勤専用バスとして朝夕往復している。本件は業務災害である。(通達)

(例5)業務災害○

市の年中行事の一つである会社対抗野球大会に出場したAは試合中、ベースの留金に頭部を強打して死亡した。この出場選手の選定は一定の選考基準を元に野球部監督と野球部部長である工場次長が協議した上で選出し、工場長、労務課長を通じて社長の承認を得る方法で行われており、第1日は通常の労働時間中に一試合を行い賃金は1日分が支払われ、第2日(災害発生当日)は公休日であり、出場選手に賃金は支払われていないが、日当に相当する額の食事、菓子等が支給され、使用者は口頭で代休を与える旨を選手に申渡している。本件は業務災害である。(通達)

(例6)業務災害○

市水道課の伐採事業に従事していた労働者Aは、飯場で宿泊中、午前3時20分頃台風の影響による強風のため、飯場付近の倒木によってその下敷きとなり死亡した。飯場は粗末な丸太小屋で、村から6里離れた山間に位置し、その飯場の周囲には大木が疎生しており、深雪のため時々倒木していた。本件は業務災害である。(通達)

(例7)業務災害○

当日午前8時、本人は製剤作業を開始しようとして電動機のスイッチを入れたところ、モーターが回転しない上トランスから音がしているので、修理しようとして工場敷地内にある電柱に登ったところ、前日からの雨のため、3つめのダルマスイッチを抜こうとしたとき感電してコウ(木材の切れ端)の上に転落し、1時間後に死亡したものである。なお、本人は元A木工に働いていたときにも電気設備の修理に当たっていた経験がある。本件は業務災害である。(通達)

③事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合

出張や社用での外出、運送、配達、営業などのため事業場の外で仕事をする場合事業場外の就業場所への往復、食事、用便など事業場外での業務に付随する行為を行う場合など出張の場合は、私用で寄り道したような場合を除き、用務先へ向かって住居又は事業場を出たときから帰り着くまでの全行程に亘って業務遂行性が認められる。

(例1)業務災害○

A社の係長Cは、明日午前8時から午後1時までの間に、下請負業者の実施するD町の高圧耐塩用CF遮断器取り替え作業を指導・監督するため部下を1名とともに出張するようにとの命令を受けたので、明日は部下と直接用務地に赴くことを打ち合わせた。翌日、午前7時過ぎ、自転車で自宅を出発し、列車に乗車すべく進行中、踏切で列車に衝突し死亡した。なお、同係長は通常の通勤の場合にも、その列車を使用している。本件は業務災害である。=通勤災害ではない。(通達)

(2)業務上の疾病

業務上疾病は、労働基準法施行規則別表第1の2に規定されている。(例示列挙)一定の職業に従事する者がここに規定した種類の疾病に該当した場合には、反証のない限り業務と疾病の因果関係が認められる。

①業務上の負傷に起因する疾病

②物理的因子による次に掲げる疾病

  1. 紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患
  2. 赤外線にさらされる業務による網膜火傷、白内障等の眼疾患又は皮膚疾患
  3. レーザー光線にさらされる業務による網膜火傷等の眼疾患又は皮膚疾患
  4. マイクロ波にさらされる業務による白内障等の眼疾患
  5. 電離放射線にさらされる業務による急性放射線症、皮膚潰瘍等の放射線皮膚障害、白内障等の放射線眼疾患、放射線肺炎、再生不良性貧血等の造血器障害、骨壊死その他の放射線障害
  6. 高圧室内作業又は潜水作業に係る業務による潜函病又は潜水病
  7. 気圧の低い場所における業務による高山病又は航空減圧症
  8. 暑熱な場所における業務による熱中症
  9. 高熱物体を取り扱う業務による熱傷
  10. 寒冷な場所における業務又は低温物体を取り扱う業務による凍傷
  11. 著しい騒音を発する場所における業務による難聴等の耳の疾患
  12. 超音波にさらされる業務による手指等の組織壊死
  13. 1から12までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他の物理的因子にさらされる業務に起因することの明らかな疾病

③身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病

  1. 重激な業務による筋肉、腱、骨若しくは関節の疾患又は内臓脱
  2. 重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛
  3. さく岩機、鋲打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務による手指、前腕等の末梢循環障害、末梢神経障害又は運動器障害
  4. 電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頚部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害
  5. 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病

④化学物質等による次に掲げる疾病

  1. 厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)にさらされる業務による疾病であって、厚生労働大臣が定めるもの
  2. 弗素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務による眼粘膜の炎症又は気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患
  3. すす、鉱物油、うるし、タール、セメント、アミン系の樹脂硬化剤等にさらされる業務による皮膚疾患
  4. 蛋白分解酵素にさらされる業務による皮膚炎、粘膜炎又は鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
  5. 木材の粉じん、獣毛のじんあい等を飛散する場所における業務又は抗生物質等にさらされる業務によるアレルギー性の鼻炎、気管支喘息等の呼吸器疾患
  6. 落綿等の粉じんを飛散する場所における業務による呼吸器疾患
  7. 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚
  8. 空気中の酸素濃度の低い場所における業務による酸素欠乏症
  9. 1から8までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他化学物質等にさらされる業務に起因することの明らかな疾病

⑤粉じんを飛散する場所におけるじん肺症又はじん肺法(昭和35年法律第30号)に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則(昭和35年労働省令第6号)第1条各号に掲げる疾病

⑥細菌、ウィルス等の病原体による次に掲げる疾病

  1. 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患
  2. 動物若しくはその死体、獣毛、革その他動物性の物又はぼろ等の古物を取り扱う業務によるブルセラ症、炭疽病等の伝染性疾患
  3. 湿潤地における業務における業務によるワイル病等のレプトスピラ症
  4. 屋外における業務による恙虫病
  5. 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウィルス等の病原体にさらされる業務に起因することの明らかな疾病

⑦がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病

  1. ベンジジンにさらされる業務による尿路系腫瘍
  2. ベーターナフチルアミンにさらされる業務による尿路系腫瘍
  3. 4-アミノジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍
  4. 4-ニトロジフェニルにさらされる業務による尿路系腫瘍
  5. ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務による肺がん
  6. ペンゾトリクロライドにさらされる業務による肺がん
  7. 石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫
  8. ベンゼンにさらされる業務による白血病
  9. 塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉腫又は肝細胞がん
  10. 電離放射線にさらされる業務による白血病、肺がん、皮膚がん、骨肉腫、甲状腺がん、多発性骨髄腫又は非ホジキンリンパ種
  11. オーラミンを製造する工程における業務による尿路系腫瘍
  12. マゼンタを製造する工程における業務による尿路系腫瘍
  13. コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による肺がん
  14. クロム酸塩又は重クロム酸塩を製造する工程における業務による肺がん又は上気道のがん
  15. ニッケルの製錬又は精錬を行う工程における業務による肺がん又は上気道のがん
  16. 砒素を含有する鉱石を原料として金属の製錬若しくは精錬を行う工程又は無機砒素化合物を製造する工程における業務による肺がん又は皮膚がん
  17. すす、鉱物油、タール、ピッチ、アスファルト又はパラフィンにさらされる業務による皮膚がん
  18. 1から17までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他がん原性物質若しくはがん原性因子にさらされる業務又はがん原性工程における業務に起因することの明らかな疾病

⑧長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病

⑨人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病

⑩前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病

⑪その他業務に起因することに明らかな疾病

(3)脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準

(4)精神障害(うつ病)の認定基準

 

 

労災保険について一覧

PAGETOP