費用の負担


費用の負担(労災保険法第30条から31条)

(1)保険料

労働者災害補償保険事業に要する費用にあてるため政府が徴収する保険料については、徴収法の定めるところによる。

(2)事業主等からの費用徴収

①事業主からの費用徴収(法31条1項)

事業主から費用徴収を行う場合の当該徴収金の額は厚生労働省労働基準局長が保険給付に要した費用等を考慮して定める基準に従い所轄労働基準監督署長が定めるものとされ、具体的には次のようになっている。

A 故意又は重大な過失により保険関係成立届を提出していない期間(概算保険料の認定決定後の期間を除く)中に事故が生じた場合

→ 療養(補償)給付、介護(補償)給付及び二次健康診断等給付を除く保険給付の額の40%相当額が支給のつど、徴収される。ただし、当該徴収は療養の開始日(即死の場合は事故発生日)の翌日から起算して3年以内に支給事由が生じたものに限られる。

B 一般保険料滞納中(督促状に指定する期間後の期間の滞納に限る)に事故が生じた場合

→ 療養(補償)給付、介護(補償)給付及び二次健康診断等給付を除く保険給付(再発に係るものを除く)の額に滞納率(滞納額/納付すべき額)を乗じて得た額が支給のつど、徴収される。ただし、滞納率が40%を超えるときは40%とし、療養開始日(事故発生日)の翌日から起算して3年以内に支給事由が生じたものに限られる。

C 事業主の故意又は重大な過失により業務災害の原因である事故が生じた場合
  • 事業主の故意・重過失による事故は基本的には費用徴収の対象であって支給制限の対象ではない。逆に労働者の故意・重過失による事故は支給制限の対象であって費用徴収の対象ではない。
  • 特別加入している事業主についてはB、Cの場合費用徴収は行われず、支給制限が行われる。
  • 特別支給金は保険給付でないので事業主からの特別の費用徴収は行われない。
  • Cについては業務災害の原因である事故を事業主が故意又は重過失により生じさせた場合に費用徴収の対象となるのであって通勤災害については対象とはならない。
  • 天災事変その他やむをえない事由により保険料を納付することができなかったと認められる場合等には、費用徴収の対象とはならない。(通達)
  • Bの費用の徴収は「督促状指定期限の翌日から、当該概算保険料を完納した日の前日」までの期間中に生じた事故に係る保険給付のうち、「事故発生の火から当該概算保険料を完納した日の前日」までに支給事由が生じたものに限られる。従って、例えば、滞納期間中に事故が発生したとしても、完納した後に支給事由が発生した場合には当該費用の徴収は行われない。(通達)
  • 療養(補償)給付、介護(補償)給付、二次健康診断等給付については事業主からの費用徴収の対象とならない。

②一部負担金

通勤災害は事業主の支配下にあることによって生じたものである業務災害とは異なり、費用の一部を受益者である労働者に負担させるのが公平であるという理由に基づき、政府は原則として療養給付を受ける労働者から一部負担金を徴収する。

A 一部負担金の額

(原則)
200円(健康保険の日雇特例被保険者については100円)

(例外)
現に要した費用の総額が原則の額に満たない場合は、現に療養に要した費用の総額

B 一部負担金の徴収

療養給付を受ける労働者に支給される休業給付であって、最初に支給事由の生じた日に係るものの額から控除することによって行われる。

  • 次に掲げる者からは一部負担金は徴収されない。
    a 第三者の行為によって生じた事故により療養給付を受ける者
    b 療養の開始後3日以内に死亡した者その他休業給付を受けない者。
    c 同一の通勤災害に係る療養給付について既に一部負担金を納付した者
    d 特別加入者
  • 一部負担金も保険料と同様に徴収金であるので、時効は2年である。

 

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