休業(補償)給付


休業(補償)給付(労災保険法第14条)

労働者が業務上または通勤により負傷し、若しくは疾病にかかって休業を必要とする場合に休業(補償)給付が行われる。

原因が業務上の場合は「休業補償給付」と、通勤上の場合は「休業給付」という名称となる。
給付内容が同等なので両給付を合わせて「休業(補償)給付」とする。

(1)支給要件(法14条1項)

休業(補償)給付は、労働者が業務上または通勤の負傷又は疾病のために休業した場合に、次の要件を満たす休業日について支給される。

① 療養のため、労働することができない(医師の証明が必要)ために賃金を受けない日であること

② 第4日目以後の休業日であること(待機期間を満たしていること)

◎ 療養のため
労働福祉事業に当たる外科処理(患部の治ゆ後に行う義肢の装着やそれに伴う再手術等)を受ける場合や温泉保養に行く場合等(リハビリ等)はこれに該当しないためその休業日についての休業(補償)給付は支給されない。(原則は医師の診療等)

◎ 労働することができない
一般に労働不能であることをいう。

  • 負傷前の作業はできないが、被災した事業場で他の作業をすることができる場合は、休業(補償)給付は支給されない。
  • 事業場に通勤することはできるが、病院に診療を受けにいくため労働することができない場合には、休業(補償)給付は支給される。
  • 事業場に通勤できないが、家庭で妻の内職を手伝っている場合でも休業(補償)給付は支給される。
  • 夏期休暇期間中にアルバイトとして稼動して労災事故が起こった場合であっても、医学的に一般人として観察し、当然労務に服することができないと認められる期間については休業(補償)給付の対象となる。また、当該学生がその後療養を継続しながら大学に登校受講する場合、療養のため休業を要する者であっても、受講可能の場合もあり、労働契約の本旨とする健全な心身で就業する状態とは相違するものであるので休業(補償)給付を支給すべきものである。(通達)

◎ 賃金を受けない日(通達)
次のいずれかの日をいう。

a 所定労働時間の全部について労働不能であって、全額を全く受けないかあるいは平均賃金の60%未満の金額しか受けない日
b 所定労働時間の一部分について労働不能であって、その労働不能の時間について、全く賃金を受けないか、あるいは平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額の60%未満の金額しか受けない日

  • 入院した場合のように所定労働時間の全部を休業している場合、平均賃金の60%以上の金額を事業主から受領すると、賃金を受けない日に該当しないので、休業(補償)給付は支給されない。(全部労働不能の場合には例えば平均賃金の50%の金額を受けた場合には休業(補償)給付として約60%、特別支給金として約20%で合せて約130%平均賃金相当額がもらえることとなる。)
  • 通院する場合のように所定労働時間の一部分について労働不能である場合は、その時間について平均賃金-賃金額の60%以上の金額を事業主から受領すると賃金を受けない日に該当しないので、休業(補償)給付は支給されない。
  • 特別加入者については賃金を受けない日という要件が排除されるため、収入があっても休業(補償)給付が減額されるようなことはない。(ただし、全部労働不能でなければならない)

◎ 待期期間
休業の最初の3日間は待期期間とされ、休業(補償)給付は支給されない。

  • この待期期間は健康保険法の傷病手当金のように継続(連続)している必要はない。
  • 休業補償給付(業務災害)の場合は、当該3日間について、労働基準法の規定により事業主が休業補償を支払う義務が生じる。(労働基準法の休業補償とは?
    休業(補償)給付の待期期間の計算に当たっては、労働者が監獄に拘置等されている日は、待期期間に算入しない。(通達)
  • 待期期間に事業主から金銭を受けていても待期期間の完成には何ら影響はない。
  • 最初の休業日(待期期間)の扱いは次のようになる。
    ①その日の所定労働時間内に災害が発生した場合は、当日を休業日とし(待期期間に算入し)、残業中に災害が発生した場合は、当日は休業日としない。(翌日から待期期間に算入する)つまり、所定労働時間の一部休業の場合のみ負傷当日を休業日数(待期期間)に算入する。」なお、所定労働時間内に災害が発生し、所定労働時間の一部について労働することができない場合については、平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額の100分の60以上の賃金が支払われているときであっても、その日は休業日(待期期間)とする。(通達)
    ②三交代制等の労働者が、午前0時を跨いで徹夜労働して翌朝に災害が発生した場合は、その翌朝の属する日から休業日とする。(翌朝の属する日から待期期間に算入する)(通達)

    (健康保険の傷病手当金の比較)

      労災保険の休業補償 健康保険の傷病手当金
    待期期間 合計日数が3日間あれば完成する。 傷病により労務不能の日が連続して3日間経過していること。
    療養の意義 医師の診療等を受けることをいい、その傷病が治ゆした後に行われる外科処置、温泉保養は含まれない。 健康保険上の保険事故であること。また現物給付たる療養の給付に限定されるものではなく、自宅療養、病後の必要な静養も含まれる。
  • 傷病が再発した場合も休業(補償)給付の支給対象となる。
  • 日々雇入れられる者も休業(補償)給付の支給対象となる。

(2)支給額(法14条2項)

①所定労働時間の全部について労働不能である場合は、1日につき、休業給付基礎日額100分の60に相当する額

②所定労働時間の一部分について労働不能である場合は、1日につき、休業給付基礎日額から当該労働者に対して支払われる賃金の額を控除した額の100分の60に相当する額となる。

  • 療養開始後1年6箇月を経過すると最低限度額・最高限度額の適用を受けることになるが、このうち最高限度額の適用を受ける場合は次のようにして算出する。

    a 給付基礎日額については、その最高限度額の適用をしない場合の給付基礎日額とし、その給付基礎日額から賃金の額を控除した額の60%相当額が支給額となる。

    (例) 最高限度額が2万円、最高限度額の適用をしない給付基礎日額が4万円、賃金額が3万円とすると支給額は、(4万円-3万円)×0.6=6千円となる。

    b ただし、支給額は、最高限度額の60%相当額を上限とするので、給付基礎日額から賃金の額を控除した額が最高限度額を超える場合にあっては、最高限度額の60%相当額が支給される。
    (例) 最高限度額が2万円、最高限度額の適用をしない給付基礎日額が6万円、賃金額が3万円とすると、賃金控除後の額が6万円-3万円となり最高限度額を超えているので、この場合の支給額は2万円×0.6=1.2万円となる。

  • 特別支給金として別途休業給付基礎日額の100分の20に相当する額が支給される。

(3)支給期間

賃金を受けない日の第4日目から、実際の休業日について休業の続く限り支給される。

  • 傷病(補償)年金に切り替えられた場合には休業(補償)給付は打ち切られる。
  • 休業(補償)給付を受給中の労働者は、療養を必要とするものであるから療養(補償)給付が併給される。
  • 所定労働時間外の残業中に負傷した場合、負傷当日は休業日数に算入しない。 (通達)
  • 労働契約が満了した者であっても、医学的に一般人として観察し、労務に服することができないと認められる期間についても休業(補償)給付は行われる。=退職後も休業(補償)給付が支給される(通達)

(4)休業(補償)給付の請求

休業(補償)給付を請求するときは、休業補償給付支給請求書(様式第8号)又は休業給付支給請求書(様式第16号の6)所轄の労働基準監督署長に提出する。

休業補償給付支給請求書業務災害用(様式第8号)の無料ダウンロード

休業補償給付支給請求書業務災害用(様式第8号(別紙2))の無料ダウンロード

休業給付支給請求書通勤災害用(様式第16号の6)の無料ダウンロード

休業給付支給請求書通勤災害用(様式第16号の6(別紙2))の無料ダウンロード

  • 休業(補償)給付を請求するに当たり、休業した全日数分を一括して請求するか、何回かに分けて請求するかについては定めがなく自由だが、休業が長期にわたる場合は、一般的に1か月分ずつ請求する。(1年分まとめて受給してもよい)
  • 同一の事由によって、障害厚生年金、障害基礎年金等の支給を受けている場合には、その支給額を証明することができる書類を、請求書に添付する必要がある。
  • 「賃金を受けなかった日」のうちに業務上の負傷及び疾病による療養のため、所定労働時間の一部について労働した日が含まれる場合は、様式第8号又は様式第16号の6の別紙2を添付する必要がある。
  • 通勤災害により療養給付を受ける者については、初回の休業給付から一部負担金として200円(日雇特例被保険者については100円)が控除される。
  • 休業(補償)給付の支給を受けることとなった者には、社会復帰促進等事業として、て休業特別支給金が併せて支給される。休業特別支給金の支給申請書は休業(補償)給付支給請求書と同一の様式であり、原則として休業(補償)給付の請求と同時に行うこととなっている。
  • 休業(補償)給付支給請求書を提出する場合には、「労働者死傷病報告(様式第23号)」を提出する必要がある。

労働者死傷病報告(様式第23号)の無料ダウンロード

(5)休業(補償)給付の不支給(法14条の2、則12条の4)

労働者が次のいずれかに該当する場合には休業(補償)給付は行われない。

a 懲役、禁固若しくは拘留の刑の執行のため若しくは死刑の言渡しを受けて監獄に拘置されている場合
b 労役場留置の言渡しを受けて労役場に留置されている場合
c 監置の裁判の執行のため監置場に留置されている場合
d 少年法24条の規定による保護処分として少年院若しくは児童自立支援施設に送致され、収容されている場合
e 売春防止法17条の規定による補導処分として婦人補導院に収容されている場合

  • 労働者が休業(補償)給付以外の保険給付の受給権者であって監獄に拘置された場合等であっても、それが理由でそれらの保険給付が不支給となることはない。
  • 労働基準法の休業補償についても(4)と同様の条文がある。(労基則37条の2)

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