特別加入


特別加入(労災保険法第33条から36条)

労災保険は労働者に対して所定の給付を行い保護することを目的とする制度である。従って、労働者以外の者(中小事業者、自営業者、家族従事者等)の労働災害については、本来労災保険は関与せず、国民健康保険、国民年金による保護が予定されるところである。しかし、これらのもの中には業務の実態、災害の発生状況などからみて労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしい者もいる。また、労災保険は局地主義の考えをとっているため、適用事業は日本国内の事業に限られるが、海外の事業場に国内の事業場から派遣された労働者等についても、国外における労働災害保護制度が十分でない状況等に鑑み、国内労働者と同様の保護を与える必要がある。これらの者の業務災害又は通勤災害については、制度本来の趣旨を損なわない範囲で労災保険への加入を認め、労災保険の保険給付等を行う制度を特別加入という。

(1)中小事業主等の特別加入

① 加入対象者

a 中小事業主

次表に示す規模の事業(特定事業)の事業主をいう。

事業の種類 常時使用労働者数
金融業、保険業、不動産業、小売業 50人以下
卸売業、サービス業 100人以下
上記以外の事業(原則) 300人以下
  • 数次の請負による建設の事業の場合には、保険関係が一括されて元請負人のみが事業主となる(徴収法8条)が、これは保険技術上、元請負人のみを保険加入者として扱うということで、これによって下請負人の事業主たる事実が否定されるわけではない。特別加入の制度は、事業主の実態に着目して設けられたものであるので、このような下請負人も特別加入することができる。(通達)
  • 使用労働者数の算定に当たっては、事業主単位で行うことになっているので、2人以上の事業を行う事業主については、各事業の使用労働者数の合計数でもって判断される。(企業単位)しかし、同一人が異なる会社を兼任している場合は、事業主各会社となるので、使用労働者数は会社ごとに算定されることになり、合算されることはない。(通達)
b 中小事業主が行う事業に従事する者

中小事業主の家族従事者や法人企業の代表者以外の役員等であって、労働者ではない者をいう。

② 要件

a 中小事業主の行う事業について労災保険に係る保険関係が成立していること(=労働者が1人以上いないと加入できない)
b 労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託するしていること
c 中小事業主及びその者が行う事業に従事する者を包括して加入するものであること
d 中小事業主が特別加入することにつき申請をし、政府の承認を受けること。

  • 申請は、労働保険事務組合の証明を受けたうえで、申請書を所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に提出することによっておこなわなけらばならない。(則46条の19、1項、2項)

    特別加入申請書(中小事業主等)PDF無料ダウンロード

  • 暫定任意適用事業であって、労災保険に係る保険関係が成立していない事業の事業主は特別加入することはできないが、任意加入の申請と特別加入の申請とは同時に行うことができる。(通達)
  • 中小事業主及びそのものが行う事業に従事する者は特別加入するには包括して加入するのが原則ではあるが、次のような就業の実態がない中小事業主については、そのものが行う事業に従事する者のみを加入させることができる。(通達)
    イ 病気療養中、高齢その他の事情により就業の実態がない事業主
    ロ 事業主の立場において行う事業主本来の業務のみに従事する事業主
  • 中小事業主等が特別加入するためには、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託しなければならないが、この委託の時期は必ずしも特別加入の申請前である必要はなく、これと同時であってもよい。(通達)
  • 承認又は不承認については、文書で通知しなければ成らないことになっており、承認の場合は、特別加入申請の翌日から起算して14日の範囲内において加入申請者が加入を希望する日が承認決定日となる。(通達)
  • 2以上の事業を行う事業主は、当該承認基準を満たしている限り、一つの事業についてのみ特別加入することも2つ以上の事業について重ねて特別加入することもできる。(同一業種でもよい)(通達)
  • 特別加入者の従事する業務が次の特定業務に該当するときは、申請書にその者の業務履歴を記載しなければならない。
    イ 粉じん作業を行う業務
    ロ 身体に振動を与える業務
    ハ 鉛業務
    二 有機溶剤業務
  • 所轄都道府県労働局長は、特定業務の業務歴を考慮し、特に必要があると認めるときは、申請した事業主から所轄都道府県労働局長が指定する病院又は診療所の医師による健康診断の結果の証明書等を、所轄労働基準監督署長を経由して提出させることとされている。この診断結果によっては特別加入が承認されないこともあり得る。 具体的に加入時健康診断が必要な業務の従事期間は以下の通りとなる。

    イ 粉じん作業を行う業務...3年以上
    ロ 身体に振動を与える業務...1年以上
    ハ 鉛業務...6か月以上
    二 有機溶剤業務...6か月以上

    特別加入時健康診断申出書(PDF)の無料ダウンロード

  • 上記特別加入時健康診断の具体的な手続きの流れは以下のようになる。

    ①「特別加入時健康診断申出書」(以下「申出書」)を労働保険事務組合を通じて所轄労働基準監督署長に提出。
    ②申出書の業務歴から判断して加入時健康診断が必要であると認められる場合、所轄労働基準監督署長は「特別加入健康診断指示書」(以下「指示書」)および「特別加入時健康診断実施依頼書」(以下「依頼書」)を交付。
    ③指示書に記載された期間内に、あらかじめ労働局長が委託している診断実施機関の中から選んで加入時健康診断を受診。依頼書は診断実施機関に提出。
    ※加入時健康診断の費用は国が負担するが、交通費は自己負担となる。
    ④診断実施機関が作成した「健康診断証明書(特別加入用)」を申請書または変更届に添付し、監督署長に提出。
    ※じん肺健康診断を受けた場合には、じん肺の所見がないと認められた場合を除き、健康診断証明書にエックス線写真を添付する必要がある。
    なお、健康診断証明書を提出しなかったり、業務の内容や業務歴などについて虚偽の申告をした場合には、特別加入の申請が承認されない、または、保険給付が受けられないことがある。

  • 加入時健康診断の結果が次のような場合には、特別加入が制限される。

    ①特別加入予定者がすでに疾病にかかっていて、その症状または障害の程度が一般的に就労することが難しく、療養に専念しなければならないと認められる場合には、従事する業務の内容にかかわらず特別加入は認められない。

    ②特別加入予定者がすでに疾病にかかっていて、その症状または障害の程度が特定の業務からの転換を必要と認められる場合には、特定業務以外の業務についてのみ特別加入が認められることとなる。

  • 特別加入前に疾病が発症、または加入前の原因により発症したと認められる場合には、特別加入者としての保険給付を受けられないことがある。

特別加入者に関する業務上の災害として保険給付の対象となる疾病は、特別加入者としての業務を遂行する過程において、その業務に起因して発症したことがあきらかな疾病に限定される。特別加入前に発症した疾病や特別加入前の事由により発症した疾病に関しては、保険給付の対象とならない。したがって、加入時健康診断の結果、疾病の症状または障害の程度が、特別加入についての制限を行う必要のない程度であった場合であっても、加入時点における疾病の程度及び加入後における有害因子へのばく露濃度、ばく露機関などからみて、加入前の業務に主たる要因があると認められる疾病については、保険給付は行われない。

③ 加入の効果

中小事業主等が特別加入をすると、その者は申請に係る事業に使用される労働者とみなされ、業務災害や通勤災害に対して保険給付や特別支給金の支給を受けることができる。(労働福祉事業の対象者となる)が、次のように部分的に異なる扱いがある。

a 業務上外の認定(通達)

特別加入者についての業務上外の認定については、特別加入に係る申請書に記載された業務又は作業の内容を基礎とし、厚生労働省労働基準局長が定める基準によって行うこととされている。なお、中小事業主等の業務災害の範囲は一般的には労働者と同じであるが、株主総会や役員会に出席するといった事業主本来の業務による災害は除外される。

b 保険給付等

イ 休業(補償)給付を受ける場合には「賃金を受けない日」という要件が排除される。(給与等が支払われることによる減額がない
ロ ボーナス特別支給金は支給されない。(一般の特別支給金は支給される)
ハ 通勤災害によって療養給付を受ける特別加入者については、一部負担金は徴収されない。
二 二次健康診断等給付は行われない。

c 給付基礎日額

特別加入者は、労働者ではないため給付基礎日額の基礎となる賃金がない。したがって、給付基礎日額はその事業に使用される労働者等の賃金、その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額とされている。具体的には、次の厚生労働大臣が定めた給付基礎日額のうちから、特別加入者が申請の際に希望する額に基づいて都道府県労働局長が決定することとなる。

・25000円
・24000円
・22000円
・20000円
・18000円
・16000円
・14000円
・12000円
・10000円
・ 9000円
・ 8000円
・ 7000円
・ 6000円
・ 5000円
・ 4000円
・ 3500円

・特別加入者の給付基礎日額についてはスライド制の適用はあるが給付基礎日額の特例(最低保障額)や休業給付基礎日額、年金給付基礎日額に係る年齢階層別の最低限度額・最高限度額の適用はない。

d 支給制限(法34条1項4号、支給金則16条4号)

次の場合には、当該事故に係る保険給付及び特別支給金の支給の全部又は一部を行わないことができる。

イ 業務災害の原因である事故が、事業主の故意又は重大な過失によって生じたものであるとき
ロ 事故が、第1種特別加入保険料が滞納されている期間中に生じたものであるとき。

  • 特別加入者については費用徴収が行われず支給制限が行われる。
  • 特別加入者に支給される特別支給金も当該支給制限の対象となる。
  • 特別加入者には本来の労働者としての支給制限も適用される。
e 脱退(法34条2項)

特別加入をした中小事業主等は、政府の承認を受ければいつでも脱退することができるが、この場合、事業に従事する者を包括して脱退しなければならない。

f 承認の取消し

政府は、中小事業主が労働者災害補償保険法若しくは徴収法又はこれらの法律の基づく厚生労働省令の規定に違反したときは、特別加入の承認を取り消すことができる。

  • 特別加入者たる地位が消滅した場合であっても、既に発生した特別加入者の保険給付を受ける権利は、そのことによって変更されることはない。例えば、特別加入期間中に生じた事故によるものであれば、特別加入者たる地位が消滅した後に初めて発生した保険給付であっても受給できる。
  • 特別加入した中小事業主が隠居するために、その地位を息子に譲ったような場合には、その中小事業主は、隠居と同時に特別加入者たる地位を喪失することになる。ただし、息子については、この息子が当該事業に従事していたときに特別加入していたときは、特別加入との関係では単に家族従事者から事業主へと身分が変更しただけであるので、特別加入者としての資格と喪失することはない。(支給金則46条の19、6項)
  • 事業主が違法行為を行った場合、政府は、特別加入の承認を取り消すことができるのであって、(事業全体の)保険関係を消滅させることができるわけではない。

(2)一人親方等の特別加入

① 加入対象者

a 一人親方(則46条の17)

次の種類の事業を、労働者を使用しないで行うことを常態とするものをいう。

イ 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業(個人タクシー、個人貨物運送業者等)
ロ 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業(大工、左官、とび、石工等)
ハ 漁船による水産動植物の採捕の事業
二 林業の事業(植木屋は該当しない)
ホ 医薬品の配置販売の事業(いわゆる富山の薬売り等)
へ 再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業(廃品回収業、くず鉄業等)

・法人であっても労働者を使用しない場合は加入できる。

b 一人親方が行う事業に従事する者

一人親方の家族従事者等であって労働者ではない者をいう。

c 特定作業従事者(則46条の18)

次の種類の作業に従事する者(労働者である者を除く)をいう。

イ 特定農作業(一定規模であって危険を伴う農作業)
ロ 指定農業機械作業(特定種類の機械を使用する者)
ハ 職場適応訓練作業等
二 家内労働者及びその補助者の特定作業(一定の機械を使用する者)
ホ 労働組合等の常勤役員の特定作業
へ 介護作業

② 要件

a 加入しようとする一人親方等が、団体の構成員となっていること
b 当該団体が継続性、事務処理能力、労働災害防止活動等から見て特別加入者の団体にふさわしいと認められること
c 当該団体が特別加入することにつき申請をし、政府の承認を受けること

  • cの申請は、その団体の主たる事務所の所在地を管轄する労働基準監督署を経由してその所在地を管轄する都道府県労働局長に特別加入申請書を提出することによって行わなければならない。(則46条の23、1項)
  • 一人親方等の特別加入については、中小事業主等の特別加入の場合と異なり、一人親方等の団体が適用事業主と、また、一人親方等が労働者とみなされて、その団体について保険関係が成立する仕組みになっている。この団体が実質的に労働保険事務組合と類似の仕事をするので、中小事業主等の特別加入の要件である労働保険事務組合への労働保険事務の処理の委託はここでは必要ない。
  • 同一人が同じ種類の事業又は作業に関して複数の団体に加入している場合において、一つの団体を通じて特別加入したときは、同一の事業又は作業に関しては、重ねて他の団体を通じて特別加入することはできない。(法35条2項)ただし、特別加入できないのは同一の事業に関する団体に加入している場合であり、異なる種類の事業又は作業に関して異なる団体に属し、その異なる団体を通じて重ねて特別加入することはできる。
  • 特定農作業従事者は、労働者を使用している場合には当該労働者に係る保険関係を成立させていなければ特別加入することができない。(通達)
  • 特別加入予定者として行う業務が特定業務である場合には申請書に業務履歴を記載しなければならないことや、一定の場合には健康診断の結果を証明する書類等を提出しなければならないことについては中小事業主等の特別加入の場合と同様である。

③ 加入の効果

一人親方等の特別加入の場合は、特別加入の承認を受けた団体が適用事業及び事業主とみなされ、一人親方等が労働者とみなされ、業務災害や通勤災害に対して保険給付や特別支給金の支給を受けることができる(労働福祉事業の対象となる)が、部分的に次のような異なる取扱いがある。

a 業務上外の認定

作業に直接附帯しない行為については業務外である。例えば建設業の一人親方が自宅の補修を行う場合や、個人タクシー営業者が家族を一定の場所まで送る行為、銀行等に融資を受けるために赴く行為などには業務遂行性は認められない。

b 保険給付等

イ 休業(補償)給付を受ける場合には「賃金を受けない日」という要件が排除される。
ロ ボーナス特別支給金は支給されない。(一般の特別支給金は支給される)
ハ 通勤災害によって療養給付を受ける特別加入者については、一部負担金は徴収されない。
二 二次健康診断等給付は行われない。

c 通勤災害の適用除外(則46条の22の2)

次に掲げる者は住居と就業の場所との間の往復の実態が不明確なので、通勤災害の適用がない。

イ 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業を行う者
ロ 漁船による水産動植物の採捕の事業を行う者
ハ 特定農作業・指定農業機械作業従事者
二 家内労働者(複数の家庭等に使用される介護作業従事者)及びその補助者

  • 中小事業主等及び海外派遣者については、特別加入の対象となるすべての者について通勤災害の適用がある。(タクシー業を営む中小事業主には通勤災害の適用がある)
  • 一人親方等のすべてについて通勤災害が適用除外となっているわけではない。
d 給付基礎日額

中小事業主等と同様に決定される。

e 支給制限

事故が、第2種特別加入保険料が滞納されている期間中に生じたものであるときは、政府は、当該事故に係る保険給付及び特別支給金の支給の全部又は一部を行わないことができる。

  • 中小事業主等の場合と異なり、事業主の故意又は重過失により生じた事故についての支給制限は行われない。
  • 個人が団体に保険料を納付していても、団体がその支払いの滞納をすれば支給制限の対象となる。

④ 脱退等

a 特別加入からの脱退(団体の脱退)

一人親方等の団体は、政府の承認を受けて、当該団体についての保険関係を消滅させることができる。

b 団体からの脱退

一人親方等は団体から脱退したときにはそのときに特別加入者たる地位が消滅する。(団体が解散したときはその翌日に特別加入者たる地位が消滅する)

⑤ 保険関係の消滅

政府は、一人親方等の団体が労働者災害補償保険法若しくは徴収法又はこれらの法律に基づく厚生労働省令の規定に違反したときは、当該団体についての保険関係を消滅させることができる。

  • 中小事業主等の場合と同様に、特別加入者たる地位が消滅した場合であっても、既に発生した特別加入者の保険給付を受ける権利はそのことによっても変更されることはない。
  • 団体が違法行為を行った場合、政府は保険関係を消滅させるのであって、承認を取り消すのではない。

(3)海外派遣者の特別加入

① 加入対象者

次のいずれかに該当する者

a 開発途上にある地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体が、当該団体の業務の実施のため、当該開発途上にある地域(厚生労働省令に定める地域を除く)において行われる事業に従事させるために派遣する者
b 日本国内で事業(有期事業を除く)を行う事業主が、この法律の施行地域外の地域(厚生労働省令で定める地域を除く)において行われる事業に従事させるために派遣する者(当該事業が特定事業に該当しないときは、当該事業に使用される労働者として派遣される者に限る)

  • 有期事業から派遣される者及び現地採用者は特別加入することができない。
  • 派遣前でも、既に派遣中の者でも特別加入することができる。(通達)
  • 特定事業に該当していれば派遣先事業の代表者として派遣する場合でも特別加入することができる。(通達)
  • 「海外出張」の場合は、海外出張者に関して何ら特別の手続きを要することなく、所属する国内の事業場の労災保険により給付を受けられる。海外出張の例は以下の通りである。
    ①商談
    ②技術・仕様などの打ち合わせ
    ③市場調査・会議・視察・見学
    ④アフターサービス
    ⑤現地での突発的なトラブル対処
    ⑥技術習得などのために海外に赴く場合
  • 「海外派遣」の例は以下の通りである。
    ①海外関連会社(現地法人、合弁会社、提携先 企業など)へ出向する場合
    ②海外支店、営業所などへ転勤する場合
    ③海外で行う据付工事・建設工事(有期事業) に従事する場合(統括責任者、工事監督者、一般作業員などとして派遣される場合)
  • 現地採用の場合は、国内の事業からの派遣ではないため、特別加入することはできない。
  • 単なる留学を目的とした派遣についても、海外において事業に従事するものと認められないため、特別加入することはできない。
  • 国内の有期事業から海外に派遣される者は特別加入することができないが、国内の継続事業から海外において行われる有期事業に派遣される者は特別加入することができる。
  • 海外派遣者の特別加入の場合、申請書に記載された人が現実に派遣先の事業に従事することになった時点で「海外派遣に関する報告書」を1名につき1部、所轄労働基準監督署長を経由して遅滞なく労働局長に提出する必要がある。

    海外派遣に関する報告書(PDF)の無料ダウンロード

② 特別加入の要件

a 派遣元の国内で行われている事業について労災保険関係が成立していること
b 派遣元の国内で行われている事業の団体又は事業主が、海外派遣者を特別加入させることにつき申請をし、政府の承認を受けること。

  • bの申請は、所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に特別加入申請書を提出することによって行わなければならない。
    特別加入申請書(海外派遣)(PDF)の無料ダウンロード
  • 一人親方等や海外派遣者が特別加入する場合には労災保険に係る労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託している必要はない。
  • 一人親方等や海外派遣者が包括加入する必要はない。

③ 加入の効果

海外派遣者が特別加入すると、その者は労働者災害補償保険法の施行地域内において行う事業に使用される労働者とみなされ、業務災害や通勤災害に対して保険給付や特別支給金の支給を受けることができる(労働福祉事業の対象となる)が、次のように部分的に異なる扱いがある。

a 保険給付等

イ 休業(補償)給付を受ける場合には「賃金を受けない日」という要件が排除される。
ロ ボーナス特別支給金は支給されない。(一般の特別支給金は支給される)
ハ 通勤災害によって療養給付を受ける特別加入者については、一部負担金は徴収されない。
二 二次健康診断等給付は行われない。

  • 保険給付の請求は全て派遣元の団体又は事業主を経由して行わなければならない。(則46条の27、5項)
  • 特別加入者が派遣先の国の労災保険から給付を受ける場合であっても併給調整は行われない(通達)
  • 療養補償給付たる療養の費用の支給決定に当たっては、当該療養に要した費用の額は、支給決定日における外国為替換算率により換算した邦貨額による。(通達)
b 給付基礎日額

中小事業主等の場合と同様である。

c 支給制限

事故が、第三種特別加入保険料滞納期間中に生じた者であるときは、政府は、当該事故に係る保険給付及び特別支給金の全部又は一部を行わないことができる。

  • 派遣元の事業主の故意又は重過失により生じた事故の場合にも派遣先の事業主の故意又は重過失により生じた事故の場合にも支給制限は行われない。
  • 海外派遣者は、自己の重過失等(有責行為)によってのみ支給制限を受けるのではない。派遣元の事業主が特別加入保険料を滞納していれば自己に責任がなくても支給制限の対象となる。

④ 脱退等

特別加入の承認を受けた団体又は事業主は、政府の承認を受けて、脱退することができる。

  • 承認を受けた団体又は事業主は、特別加入させた海外派遣者を事業単位で包括して政府の承認を受けて脱退させることも、変更届により個別に脱退させることもできる。(包括脱退する必要はない)(則46条の25の2

⑤ 承認の取消し

政府は当該団体又は事業主が労働者災害補償保険法若しくは徴収法又はこれらの法律に基づく厚生労働省令の規定に違反したときは、特別加入の承認を取り消すことができる。

  • 海外派遣者の場合は承認を取り消すことができるのであって、保険関係を消滅させることができるのではない。
  • 特別加入者については、いずれの場合も特別加入者たる地位が消滅した場合でも既に発生した特別加入者の保険給付を受ける権利はそのことによって変更されることはない。

    (4)業務災害の際の健康保険の利用について

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