滞納処分等


滞納処分等(徴収第26~29条)

(1) 督促(法26条1項、2項)

労働保険料等の徴収金を滞納した場合には、督促が行われ、督促状の指定期限(督促状を発する日(当日起算)から起算して10日以上経過した休日でない日)までに納付しなければならず、納付しない場合は、滞納処分の対象となり、さらに、労働保険料については延滞金徴収の対象ともなる。

・督促は時効中断の効果を有する。(法41条2項)

・納付義務者の住所又は居所が不明な場合は、公示送達の方法により督促することとなる。この場合には、掲示を始めた日から起算して7日を経過した日にその送達の効力が生じ、その末日が休日に該当しても延長されない。公示送達の場合の指定期限は公示を始めた日から起算して10日以上経過した日でなければならない。(通則法14条、通達)

・督促は、納付義務者に自発的に納付させるための催告であるから、納付義務者が督促状を受領した後、督促に係る労働保険料を納付するのに必要な時間的余裕がなければならない。従って、督促状に記載された指定期限を過ぎてしまった後に督促状が交付されたとしても、その督促は無効であり、これに基づいてなした滞納処分は無効となる。

(2) 滞納処分(法26条3項、)

政府は、督促を受けた者がその指定期限までに労働保険料その他徴収法の規定による徴収金を納付しないときには、徴収法に別段の定めがある場合を除き、国税滞納処分の例によってこれを処分するものとされている。

・徴収法に限らず、労働・社会保険各法の規定による徴収金の徴収手続においては、原則として、国税通則法や国税徴収法等が準用される。

・「滞納処分」とは、労働保険料等の滞納金を強制的に徴収するため、滞納者の財産を差し押さえて、その差押え財産を換価してその代金をもって滞納金に充てる行政処分をいう。

・労働保険の場合には市町村に対して処分を請求するという規定はない。

 

 

 

(3) 延滞金(法27条)

①徴収の要件

政府が労働保険料の納付を督促した場合で、次のいずれの場合にも該当しないときに、延滞金徴収されることとなる。

a 督促状に指定した期限までに労働保険料その他徴収法の規定による徴収金を完納したとき

b 納付義務者の住所又は居所がわからないため、公示送達の方法によって督促したとき

c 労働保険料の額が1000円未満であるとき

d 延滞金の額が100円未満であるとき

e 労働保険料について滞納処分の執行を停止し、又は猶予したとき(執行を停止し、又は猶予した期間に対応する部分の金額に限る)

f 労働保険料を納付しないことについてやむを得ない理由があると認められるとき

・追徴金について督促を受けた事業主が、督促状により指定された期限までに追徴金を納付しない場合、国税滞納処分の例によって滞納処分をされることはあるが、延滞金が徴収されることはない。(延滞金が徴収されるのは、政府が労働保険料の納付を督促した場合であり、追徴金は労働保険料には該当しないためである)

・追徴金の場合と異なり、概算保険料についても延滞金は徴収される。

・事業の不振又は金融事業等の経済事由により、労働保険料等を滞納している場合であっても延滞金は徴収される。(通達)

②延滞金の額

延滞金の額は、原則として、労働保険料の額(1000円未満の端数切捨て)につき年14.6パーセントの割合で、納期限の翌日からその完納又は財産差押えの日の前日までの日数により計算した額(100円未満の端数切捨て)である。ただし、労働保険料の額の一部につき納付があったときは、その納付の日以後の期間に係る延滞金の額の計算の基礎となる労働保険料の額は、その納付のあった労働保険料の額を控除した額となる。

・延滞金の計算の起算日となる「納期限の翌日」は、督促状に指定した期限の翌日ではなく、労働保険料の本来の納期限の翌日である

・「財産差押えの日」とは国税滞納処分の例による滞納者に対する財産差押えの効力が発生した日をいう。

・年14.6%とは1日当り0.004%ということである。

(4) 先取特権の順位(法28条)

労働保険料その他徴収法の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとされている。

・納付義務者が任意に国税等に先んじて徴収金を納付した場合にまで先取特権の効力は及ばない。

(5) 徴収金の徴収手続(法29条)

労働保険料その他徴収法の規定による徴収金は、徴収法に別段の定めがある場合を除き、国税徴収の例により徴収するものとされている。

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