徴収法上の定義


徴収法上の定義(徴収第2条)

(1)労働保険

労災保険及び雇用保険の総称である。

(2)賃金

賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの(通貨以外のもので支払われるものであって、厚生労働省令で定める範囲のものを除く)をいう。賃金の総額に算入されるものとされないものは次表のようになる。

賃金総額に算入されるもの

賃金総額に算入されないもの

① 休業手当(法定超過額を含む)

② 労働保険料や社会保険料の被保険者負担分

③ 住宅手当(原則)

④ 通勤定期券

⑤ 保険年度内に支払が確定したがその保険年度内に支払われなかった賃金

⑥ 遡及してベースアップを行うことが決定された場合のベースアップ分

⑦ 単身赴任手当

⑧ 臨時に支払われる賃金

⑨ 3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

① 休業補償(法定超過額を含む)

② 財産形成貯蓄奨励金又は会社が負担する生命保険の掛け金

③ 実費相当額が労働者の賃金から徴収される場合の食事の利益

④ 作業衣の支給費用(現物給付に代えて被服費相当額が現金で支払われる場合も含む)

⑤ 結婚祝金、災害見舞金、死亡弔慰金、退職金

⑥ 解雇予告手当

⑦ 傷病手当金

⑧ ストックオプション

・徴収法における賃金は、基本的には労働基準法の賃金と同様であるが、退職金、結婚祝金等については、支給要件が明確な場合(就業規則等に定めがある)場合であっても賃金とみなさない点で異なっている。(通達)

・通貨以外のもので支払われる賃金(現物給与)の範囲及びその評価額は所轄労働基準監督署又は所轄公共職業安定所長が定めるところによることとされている。(則3条)

(3)保険年度

4月1日から翌年3月31日までの期間をいう。

(4)事業

事業とは、経営上一体をなす本店、支店、工場等を総合した企業そのものをいうのではなく、個々の本店、支店、工場、事務所等のように、1つの経営組織として独立性をもった経営体をいう。(行手20002)

(5)適用事業

事業に該当し、労働者を使用する事業(労災保険法3条1項)、労働者が雇用される事業(雇用保険法5条1項)であれば、原則として、労災保険及び雇用保険の適用事業となる。適用事業は一元適用事業と二元適用事業に大別される。

①一元適用事業

労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係とを一体的な1つの労度保険関係として取り扱い、保険関係の適用及び保険料の徴収等の事務が一元的に処理される事業をいう。

②二元適用事業

労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係とを別個に2つの事業に係る保険関係として取り扱い、保険関係の適用及び保険料の徴収等の事務が労災保険、雇用保険の別に二元的に処理される事業をいい、次に掲げる事業が該当する。(則66条)

a 都道府県及び市町村の行う事業

b 都道府県に準ずるもの及び市町村に準ずるものの行う事業

c 港湾労働法の適用される6大港(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門)における港湾運送の行為を行う事業

d 農林の事業、畜産、養蚕又は水産の事業

e 建設の事業

・これらの事業においては、労災保険と雇用保険とで適用労働者の範囲が異なること、あるいは事業の単位(一般保険料徴収の単位)を統一しがたい実情があること等により、保険料の適用について一律に処理することが困難であり、労働保険の適用徴収の一元化にはなじまないので各保険ごとに別個の事業とみなして徴収する。(通達)

・「都道府県や市町村に準ずるもの」とは特別区や地方公共団体の組合などの特別地方公共団体をいう。また、私立学校及び各種学校は市町村に準ずるものの事業に含まれる。(=二元適用事業である)(通達)

・国の行う事業は二元適用事業ではない。(国の行う事業には、労災保険に係る保険関係が成立する余地がない)

・一元適用事業であっても、その使用する労働者の中に雇用保険法の適用を受けない者がいる場合には、一般保険料の算定に当たって、当該事業を労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業とみなすものとされている。(整備省令17条)

(6)適用事業の事業主

徴収法の規定による労働保険料の納付、労働保険各法及び徴収法の規定による各種の届出等の義務を負うものである。個人事業にあっては自然人(代表者等)が、また、会社等の法人が経営する事業にあっては法人そのものが事業主となる。

 

(7)有期事業

事業の期間が予定されている事業、すなわち、事業の性質上一定の予定期間内に事業目的を達成して終了する事業をいい、具体的には次の事業がこれに該当する。

①建設の事業(建築工事、ダム工事、道路工事等)

②立木の伐採の事業

・有期事業として取り扱う事業は、その事業の実態上、一般的に二元適用事業に属するが、雇用保険に係る保険関係については、有期事業としての取り扱いをせず、労災保険に係る保険関係についてのみ有期事業としての取り扱いをする。(雇用保険法には有期事業という概念はない)

(8) 継続事業

有期事業以外の事業(事業の期間が予定されていない事業)をいい、例えば、一般の工場、商店、事務所等がこれに該当する。

・事業が継続事業に該当するか有期事業に該当するかによって、事業の一括の方法、保険料の納付手続、メリット制の適用方法等、徴収法の適用上の差異が生じる。

 

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