二次健康診断等給付


二次健康診断等給付(労災保険法第26条)

二次健康診断等給付は、恒常的な長時間の時間外労働や職場でのストレス等を原因とする脳血管疾患及び心臓疾患の発生が増加していることから、これらの疾患の予防を図るため、健康診断での血圧検査、血液検査等の結果、労働者に異常の所見があると診断されたときに、その労働者に対し、医師による二次健康診断及びその結果に基づく保健指導を労災保険の保険給付として行うものである。

(1)要件

一次健康診断において次のいずれの項目にも異常の所見があると診断された場合において当該労働者に対し、その請求に基づいて行われる。

① 血圧の測定
② 血中脂質検査
③ 血糖検査
④ 肥満度(BMI)の測定

◎一次健康診断

労働安全衛生法66条1項(一般健康診断)の規定による健康診断又は当該健康診断に係る同条5項但書(労働者指定医師による健康診断)の規定による健康診断のうち直近のものをいう。

  • 一次健康診断の結果等により、既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められる場合には二次健康診断等給付は行われない。
  • 二次健康診断等給付は特別加入者には支給されない。(通達)

(2)給付の範囲

①二次健康診断

脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査であって、次に掲げるものを行う医師による健康診断をいう。

a 空腹時の血中脂質検査
b 空腹時の血中グルコースの量の検査
c ヘモグロビンAlc検査(一次健康診断において当該検査を行った場合を除く)
d 負荷心電図検査又は胸部超音波検査
e 頸部超音波検査
f 微量アルブミン尿検査(一次健康診断における尿中の蛋白の有無の検査において、擬陽性又は微陽性である場合に限られる。)

②特定保健指導

二次健康診断の結果に基づき脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防を図るため、面接により行われる医師又は保健師による保健指導をいう。

  • 二次健康診断は1年度につき1回に限り、特定保健指導は二次健康診断ごとに1回に限られる。従って、同一年度内に1人の労働者に対して2回以上の定期健康診断等を実施している事業場であっても、一時健康診断において給付対象所見が認められる場合に当該年度内に1回限り支給する。(通達)
  • 二次健康診断は医師により行われなければならないが、特定保健指導は保健師が行うこともできる。

(3)受給手続

二次健康診断等給付は労働福祉事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所(健康給付病院等)において行う。

  • 二次健康診断等給付を受けようとする者は、二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)を、原則として一次健康診断を受けた日から3箇月以内に健康給付病院等を経由して所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。
    二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)(PDF)の無料ダウンロード
  • 次のようなやむを得ない事由がある場合には3箇月の提出期限は適用されない。
    ①天災事変により請求を行うことができない場合。
    ②一次健康診断を行った医療機関等の都合等により、一次健康診断の結果の通知が著しく遅れた場合。
  • 二次健康診断等給付が薬局や訪問看護事業者において行われることはない。

(4)医師からの意見聴取

二次健康診断を受けた労働者から当該二次健康診断の実施の日から3箇月以内に当該二次健康診断の結果を証明する書面の提出を受けた事業者は、当該二次健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を、当該健康診断の結果を証明する書面が事業者に提出された日から2箇月以内に聴かなければならない。

  • 二次健康診断の場合も、聴取した医師の意見は、健康診断個人票に記載しなければならない。

(5)その他の留意点

① 支給制限

二次権健康診断等給付については、その保険事故の性質上、法12条の2の2に基づく支給制限(故意の事故による絶対的支給制限及び故意の犯罪行為、重過失又は療養に関する指示違反による相対的支給制限)の問題は生じない。(通達)

② 事業主からの費用徴収

事業主に重大な過失がある事故について二次健康診断等給付を支給した場合であって、事業主からの費用徴収は行われない。(通達)

  • 不正受給者からの費用徴収は、他の保険給付と同様に行われる。

③ 第三者行為による事故

二次健康診断等給付については、その保険事故の性質上、法12条の4に基づく第三者に対する損害賠償請求権の取得の問題は生じない。(通達)

④ 労働時間との問題

二次健康診断等給付の受診に要した時間は労働時間ではない。(通達)

⑤ メリット制の収支率との関係

二次健康診断等給付に要した費用の額は、通勤災害に関する保険給付と同様に、メリット制の算定の基礎となる保険給付の額及び一般保険料の額には含まれない。(通達)

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