第三者行為災害


第三者行為災害(労災保険法第12条の4)

(1)求償(法12条の4、1項)

第三者の行為によって業務災害又は通勤災害が生じた場合に、その災害について保険給付が行われたときは、政府は、その支給された給付の価額の限度で、損害賠償請求権(保険給付と同一の事由に基づくものに限る)を代位取得し、第三者に対して請求する。これを求償という。

  • 次の場合(職場の同僚による事故等の場合)には政府は原則として求償は行わない。
     a 同一の事業主に使用される同僚労働者相互の加害行為による災害
     b 同一事業主に使用されるが、事業場を異にする労働者相互の加害行為による災害
     c 同一作業場で作業を行う使用者を異にする労働者相互の加害行為による災害

(2) 控除(法12条の4、2項)

保険給付が行われる前に、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。これを控除という。

(3)第三者行為災害届(則22条)

保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じたときは、保険給付を受けるべき者は、その事実、第三者の氏名及び住所(第三者の指名及び住所がわからないときはその旨)並びに被害の状況を、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

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(4)留意点

①調整の範囲(通達)

求償権の範囲は、受給権者(遺族を含む)が第三者に対して請求しうる損害賠償額のうち保険給付をした価額の限度に限られ、控除ができるのは、同一の事由につきうけた損害賠償額の価額の限度に限られる。また保険給付の調整の対象となるのは、損害賠償額のうち遺失利益、療養費、葬祭費用、介護損害の額に相当する額である。

  • 慰謝料、見舞金、香典等の精神的損害に対する損害賠償額や、物的損害に対する損害賠償額又は贈与と認められる金額は原則として調整の対象とされない。

②調整期間(通達)

年金給付等継続的に支給される保険給付と損害賠償との調整は、災害発生後3年以内に支給されるものに限られる。

  • 災害発生後3年を経過したときは、求償は打ち切られ、控除が行われていた場合には、支給が停止されていた年金給付が開始される。
  • 災害発生後3年以内であれば再発にかかわる年金給付についても調整の対象となる。

③示談の取扱い(通達)

受給権者と第三者との間に示談が行われた場合であって、その示談が次の事項のいずれも満たしている場合は、政府は、災害発生後3年間は保険給付を行わないこととされている。

a 真正に成立していること
b その内容が受給権者の第三者に対して有する損害賠償請求権(保険給付と同一のものに限る)の全部のてん補を目的としていること。

④自動車損害賠償責任保険等との調整(通達)

第三者行為災害が自動車事故によるものである場合、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)等との調整が必要となる。自賠責保険は、自動車事故によって人の生命や身体が害された場合に、自動車の保有者及び運転者の損害賠償責任を保険する制度である。そこで、自賠責保険の損害賠償額支払請求権は、労働者災害補償保険法12条の4、1項、2項にいう損害賠償請求権とみなされ、その価額の限度において各調整が行われる。

⑤転給者との調整(通達)

第三者行為災害の場合は、転給により遺族(補償)年金の受給権者になった者に対しても調整が行われる。具体的には、転給による遺族(補償)年金の受給権者に対し年金給付を行った場合においては、当該転給による受給権者が第三者に対して請求し得る損害賠償額の範囲内において求償が行われる。また、その者が同一の事由に基づき第三者から損害賠償を受けたときは、その額に相当する額を限度として年金の支給調整が行われる。

⑥未支給の保険給付を受ける者との調整

年金の受給権が死亡したことにより未支給の保険給付の規定による受給権者又は民法の規定による相続人に未支給の年金を支給した場合においては、志望した受給権者が損害賠償を受けなかったため承継された損害賠償請求権により第三者に対して請求し得る損害賠償の額の範囲において求償が行われる。また、そのものが第三者から損害賠償を受けたときは、その額に相当する額を見支給の年金額から控除して支給することとなる。

⑦特別支給金について

特別支給金については損害賠償との調整は行われない。

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