介護(補償)給付


介護(補償)給付(労災保険法第12条の8)

業務災害または通勤災害により被災労働者が介護を受ける場合、介護費用の高額化が著しくなっている近年においては、その介護費用を労災保険で当然にてん補する必要がある。そこで、平成7年の改正によって、従来労働福祉事業として支給されていた介護料が介護(補償)給付として保険給付化された。

原因が業務上の場合は「介護補償給付」と、通勤上の場合は「介護給付」という名称となる。

給付内容が同等なので両給付を合わせて「介護(補償)給付」とする。

(1)支給要件(法12条の8、4項)

介護(補償)給付は、常時介護を要する状態又は随時介護を要する状態に該当する障害の程度にある障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の受給権者が常時又は随時介護を受けている場合にその請求に基づいて支給される。

・上記支給要件を満たしていても、次の施設に入所又は入院している期間について介護(補償)給付は支給されない。

a 身体障害者療護施設
b 特別養護老人ホーム
c 原子爆弾被爆者特別養護ホーム
d 労災特別介護施設
e 病院又は診療所(介護老人保健施設を含む)

当該程度の障害により労働者がある介護を要する状態 障害の程度
常時介護を要する状態
  1. 神経系統の機能若しくは精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの(別表第1第1級の項身体障害の欄第3号に規定する身体障害をいう。)又は神経系統の機能若しくは精神に著しい障害を有し、常に介護を要するもの(別表第2第1級の項障害の状態の欄第1号に規定する障害の状態をいう。)
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの(別表第1第1級の項身体障害の欄第4号に規定する身体障 害をいう。)又は胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に介護を要するもの(別表第2第1級の項障害の状態の欄第2号に規定する障害の状態をいう。)
  3. 別表第1に掲げる身体障害が2以上ある場合その他の場合であって障害等級が第1級であるときにおける当該身体障害又は別表第2第1級の項障害の状態の欄第3 号から第9号までのいずれかに該当する障害の状態(前2号に定めるものと同程度の介護を要する状態にあるものに限る。)
随時介護を要する状態  

  1. 神経系統の機能若しくは精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの(別表第1第2級の項身体障害の欄第2号の2に規定する身体障害をいう。)又は神経系統の機能若しくは精神に著しい障害を有し、随時介護を要するもの(別表第2第2級の項障害の状態の欄第1号に規定する障害の状態をいう。)
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの(別表第1第2級の項身体障害の欄第2号の3に規定する身体障害をいう。)又は胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、随時介護を要するもの(別表第2第2級の項障害の状態の欄第2号に規定する障害の状態をいう。)
  3. 障害等級が第1級である場合における身体障害又は別表第2第1級の項障害の状態の欄第3号から第9号までのいずれかに該当する障害の状態(前2号に定めるものと同程度の介護を要する状態にあるものに限る。)

(2)支給額(法19条の2)

次の区分によりを単位として支給される。

①支給対象者が常時介護を要する状態にあるとき

親族又は友人・知人の介護を受けていない場合
介護の費用として支出した額(ただし、104,290円を上限)が支給される。

親族又は友人・知人の介護を受けている場合
A 介護の費用を支出していない場合には、一律定額として56,600円が支給される。
B 介護の費用を支出しており、その額が56,600円を下回る場合には、一律定額として、56,600円が支給される。
C  介護の費用を支出しており、その額が56,600円を上回る場合には、その額(ただし、104,290円を上限)が支給される。

  • 月の途中から介護を開始した場合で、介護費用を支払って介護を受けた場合→上限額の範囲で介護費用が支給される。
  • 月の途中から介護を開始したケースで、介護費用を支払わないで親族等から介護を受けた場合→当該月は支給されない。

②支給対象者が随時介護を要する状態にあるとき

親族又は友人・知人の介護を受けていない場合
介護の費用として支出した額(ただし、52,150円を上限)が支給される。

親族又は友人・知人の介護を受けている場合
A 介護の費用を支出していない場合には、一律定額として28,300円が支給される。
B 介護の費用を支出しており、その額が28,300円を下回る場合には、一律定額として、28,300円が支給される。
C 介護の費用を支出しており、その額が28,300円を上回る場合には、その額(ただし52,150円を上限)が支給される。

  • 月の途中から介護を受けた場合の扱いは常時介護のあるときに準じる。

(3)請求(則18条の3の5)

①請求の時期

a 障害(補償)年金の受給権者

障害(補償)年金の請求と同時に又は請求をした後に行わなければならない。

b 傷病(補償)年金の受給権者

傷病(補償)年金の支給決定を受けた後に行わなければならない。

②請求手続

介護(補償)給付の支給を受けようとする者は、介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号2の2)所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号2の2)(PDF)の無料ダウンロード

  • 当該請求書には医師又は歯科医師の診断書及び介護に要した費用の額の証明書(介護の費用を支出していない場合は不要)を添付しなければならないが、継続して2回目以後の介護(補償)給付を請求する者については、診断書の添付を要しないこととされている。ただし、この場合は、年金の受給権者の定期報告書に添付することになっている医師又は歯科医師の診断書は従来の記載項目に加え、「障害を有することに伴う日常生活の状態を」記載したものでなければならない。
  • 1月ごとの請求となっているがまとめて5月などの請求をしても問題ない。

介護に要した費用の額の証明書 (PDF)の無料ダウンロード

(4)その他の留意点

① 相対的支給制限

労働者に故意の犯罪行為、重過失又は療養に関する指示違反があった場合でも介護(補償)給付については支給制限の対象とされない。

  • 労働者が故意に傷病等の原因となった事故を生じさせた場合は、介護(補償)給付は支給されない。

② 事業主からの費用徴収

事業主に重大な過失がある事故について介護(補償)給付をした場合であっても、事業主からの費用徴収は行われない。(通達)

  • 不正受給者からの費用徴収は、他の保険給付と同様に行われる。

③ 損害賠償との関係

介護(補償)給付に係る障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の支給事由をなる障害の原因となる負傷又は疾病が平成8年4月1日以後に発生したもの(平成8年4月1日前は福祉事業として支給されていたので損害賠償との調整がなかった)については民事損害賠償との調整が行われる。(通達)

 

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