労災保険の保険給付(労災保険法第7条、12条の8、21条等)
この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
二 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
三 二次健康診断等給付 等
(1)業務災害に関する保険給付
業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡に対して行われる労災保険の保険給付及びその内容は次のとおりである。
① 療養補償給付…原則として負傷、疾病の治療行為という現物給付
② 休業補償給付…療養のため休業する期間の所得保障としての給付
③ 障害補償給付…負傷、疾病の治ゆ後に障害が残った場合に支給される年金又は一時金
④ 遺族補償給付…労働者が死亡した場合にその遺族に支給される年金又は一時金
⑤ 葬祭料 …死亡した労働者の葬祭を行う者に支給される葬祭の費用としての給付
⑥ 傷病補償年金…療養のため長期にわたり休業する期間の所得保障としての給付
⑦ 介護補償給付…障害補償年金又は傷病補償年金を受ける一定の労働者に支給される介護費用としての給付
- 傷病補償年金と介護補給付は労働基準法にはない労災保険法独自の規定である。
(2)通勤災害に関する保険給付
業務災害に関する保険給付については「補償」という語がついているが、通勤災害に関する保険給付にはついていない。これは労災保険法の業務災害に関する保険給付が労働基準法の災害補償の規定に基づいているため、事業主の補償責任が業務災害にのみ存在し、通勤災害については当該補償責任が存在しないためである。また、葬祭料は業務災害、葬祭給付は通勤災害に関する保険給付である。通勤災害には次のような保険給付がある。
① 療養給付…原則として負傷、疾病の治療行為という現物給付
② 休業給付…療養のため休業する期間の所得保障としての給付
③ 障害給付…負傷、疾病の治ゆ後に障害が残った場合に支給される年金又は一時金
④ 遺族給付…労働者が死亡した場合にその遺族に支給される年金又は一時金
⑤ 葬祭給付…死亡した労働者の葬祭を行う者に支給される葬祭の費用としての給付
⑥ 傷病年金…療養のため長期にわたり休業する期間の所得保障としての給付
⑦ 介護給付…障害年金又は傷病年金を受ける一定の労働者に支給される介護費用としての給付
(3)業務災害と通勤災害の保険給付の違い
以下の点で通勤災害に関する保険給付は業務災害に関する保険給付と異なる。
① 一部負担金の徴収
療養給付(通勤災害)の支給を受ける者からは原則として、200円の一部負担金が徴収される。
② 待期期間の休業補償
業務災害による休業補償給付の待期期間については、事業主は労働基準法の規定に基づく休業補償の責任を負うが、通勤災害による休業給付の待期期間については当該休業補償の問題は生じない。
③ 解雇制限及び打切補償
労働基準法に基づく解雇制限は、業務上の傷病に係る休業をしている期間及びその後30日間が対象であるので通勤による傷病に係る休業をした場合であっても、解雇は制限されない。従って、打切補償の問題は生じない。
④ 特別加入者の通勤災害
特別加入者の中には、通勤と業務を明確に区別することができないため、通勤災害の規定が適用されない者がいる。
(例)
個人タクシー業者、個人貨物運送業者、個人水産業者、特定農作業従事者、指定農作業従事者