適用事業および適用除外


労災保険の適用事業および適用除外(労災保険法第3条)

(1)適用事業

①強制適用事業(法3条1項)

法律によって保険加入を義務づけられている事業をいい、その事業が開始された日又は強制適用事業に該当するに至った日に、自動的に保険関係が成立する。労災における強制適用事業の範囲は、適用を除外されている者及び暫定任意適用事業を除き、労働者を1人でも使用する事業はすべて強制適用事業となる。

 

②暫定任意適用事業(S44法附則12条等)

労働者災害補償保険法は、原則として労働者を使用するすべての事業に強制的に適用されるが、次に掲げる農林水産業の一部については暫定的に任意適用事業とされている。(労働者災害補償保険に入らなくてもよい。)

 

a 農業(畜産及び養蚕を含む)

常時5人未満の労働者を使用する個人経営の事業で、次のいずれにも該当しないもの

 イ 一定の危険又は有害な作業を主として行う事業であって、常時労働者を使用するもの

 ロ 事業者が特別加入しているしているもの

 

b 林業

労働者を常時には使用せず、かつ、1年以内の期限において使用労働者延人数が300人未満である個人経営の事業

 

c 水産業

常時5人未満の労働者を使用する個人経営の事業であって、常時労働者を使用して一定の危険又は有害な作業を行う事業でなく次のいずれかに該当するもの

イ 総トン数5トン未満の漁船により操業するもの

ロ 総トン数5トン以上の漁船であっても、河川、湖沼又は特定水面において主に操業するもの

 

危険又は有害な作業とは?

 ① 毒劇薬、毒劇物又はこれらに準ずる毒劇性料品の取扱い

 ② 危険又は有害なガスの取扱い

 ③ 重量物の取扱い等の重激な作業

 ④ 病原体によつて汚染されるおそれが著しい作業

 ⑤ 機械の使用によつて、身体に著しい振動を与える作業

 ⑥ 危険又は有害なガス、蒸気又は粉じんの発散を伴う作業

 ⑦ 獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における作業

 ⑧ 強烈な騒音を発する場所における作業

 ⑨ 著しく暑熱な場所における作業

 ⑩ 著しく寒冷な場所における作業

 ⑪ 異常気圧下における作業

 

特定水面とは?

 ① 陸奥湾
 ② 富山湾
 ③ 若狭湾
 ④ 東京湾
 ⑤ 伊勢湾
 ⑥ 大阪湾
 ⑦ 有明海及び八代海
 ⑧ 大村湾
 ⑨ 鹿児島湾

 

  • 暫定任意適用事業の事業主は、その事業に使用される労働者(船員保険の強制被保険者を除く)の過半数が希望するときは加入の申請をしなければならない。 (整備法5条)
  • 事業とは企業を指すものではなく、工場、鉱山、事務所のように経営組織として独立性を持った最小単位の経営体をいい、一定の場所において一定の組織のもとに相関連して行われる作業の一体は、原則として一の事業として取り扱う。 (通達)
  • 事業とは、労働者を使用して行われる活動をいい利潤を目的とする経済活動のみならず、社会奉仕、宗教伝道等のごとく利潤を目的としない活動も含まれる。(通達)

 

(2)適用除外(法3条2項)

次の事業及び労働者については、労働者災害補償保険法は適用されない。

 

① 国の直営事業

 

国の直営事業(国営企業)である国有林野事業に使用される者は適用除外となる。(国家公務員としての身分を有するので国家公務員災害補償法の適用を受ける)

 

② 官公署の事業

 

現在では地方公共団体の現業部門の非常勤職員以外の公務員は全て適用除外となる。

・国家公務員は国家公務員災害補償法の適用となるので労働者災害補償保険法は適用除外となる。

 

・地方公務員については次のようになる。

  現業 非現業(一般事務)
常勤職員 地方公務員災害補償法 地方公務員災害補償法
非常勤職員 労働者災害補償保険法 地方公務員災害補償法に基づく条例

・市町村の組合の職員はすべて労働者災害補償保険法の適用をうける。(通達)

 

・独立行政法人国立印刷局、独立行政法人造幣局等の特定独立行政法人の職員も適用除外となる。(国家公務員としての身分を有するので国家公務員災害補償法の適用を受ける)

③ 船員保険の被保険者

 

船員保険の被保険者については船員保険法が適用されるため労働者災害補償保険法は適用除外となるが、次の船に乗り組むものは、船員保険法の適用を受けず、労働者災害補償保険法が適用される。(船員保険法1条)

 

a 総トン数5トン未満の船舶

b 政令で定める総トン数30トン未満の漁船

c 湖、川又は港のみを航行する船舶(総トン数を問わない)

 

・船員保険の疾病任意継続被保険者には労働者災害補償保険法が適用される。

(3)適用労働者

 

労働基準法9条に準じて、適用事業に使用される者で、賃金を支払われるものが労働者災害補償保険法の適用労働者となる。

 

(例)

① アルバイト、パートタイマー、日雇労働者、外国人労働者(不法就労を含む)であっても、適用事業に使用され賃金を支払われている場合は労働者災害補償保険法の適用労働者とされる。

 

② 派遣労働者については派遣元事業主の事業が適用事業とされ、その適用労働者となる。

 

③ 法人の取締役、理事、保険の外交員、電気・ガス料金の集金人等委託契約者については契約の形式にとらわれず、事業主との間に実質的使用従属関係があり、事実上賃金が支払われているような関係が認めれれる場合は、労働者災害補償保険法の適用労働者となる。

 

・労働者災害補償保険法においては2以上の事業に使用される者はそれぞれの事業において適用労働者となる。(雇用保険の場合は、原則としてその者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者となる)

 

・労働者災害補償保険法は、国外の事業には適用されないので、海外派遣者(国外の事業に使用されている者)は労働者災害補償保険法の適用は受けない。ただし、現地採用等を除き、特別加入の途が開かれている。なお国内の事業に使用される海外出張者は労働者災害補償保険法の適用を受ける。(通達)

 

・自営業者、中小事業主、家族労働者等は労働者とはならないが、特別加入することで労災保険の適用を受けることができる。

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