療養(補償)給付


療養(補償)給付(労災保険法第13条、22条)

労働者が業務上または通勤により負傷し、若しくは疾病にかかって療養を必要とする場合に療養(補償)給付が行われる。

原因が業務上の場合は「療養補償給付」と、通勤上の場合は「療養給付」という名称となる。

これは労災保険法の業務災害に関する保険給付が労働基準法の災害補償の規定に基づいているため、事業主の補償責任が業務災害にのみ存在し、通勤災害については当該補償責任が存在しないためである。

給付内容が同等なので両給付を合わせて「療養(補償)給付」とする。

(1)給付の種類

① 療養の給付

療養(補償)給付は、原則として現物給付であり、これを療養の給付という。(無料で治療等を受けられる)

a 療養の給付の範囲

次に掲げるもののうち、政府(医師でない)が必要と認めるもの

 イ 診察
 ロ 薬剤又は治療材料の支給
 ハ 処置手術その他の治療
 二 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
 ホ 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
 へ 移送

  • 労災保険の適用労働者が業務上の事由によって、伝染病にかかり、伝染病予防法の規定により伝染病院等の施設に隔離された場合、同法の規定により患者の治療費は原則として市町村が負担すべきものであるから、一般的には労災保険給付の対象とならないが、同法の規定により市町村により食費及び薬価が徴収されることとなった場合は、労働者が負担すべき額の範囲内においてのみ労災保険給付の対象となる。(通達)
  • 業務災害により眼鏡又は義肢を破損した場合これを購入し又は修理することは療養の範囲に属しないから保険給付の対象とならない。なお業務災害により義歯を破損した場合にこれを補綴し又は修理することは保険給付の対象となる。又、歯科補綴の際の金冠の使用は、歯科補綴の効果またはその技術上の必要から特に金を使用することを適当とする場合に限り保険給付の対象となる。(通達)
  • 健全肢を有していたが労働者が業務災害により四肢を切断して義肢を必要とする場合は、労働福祉事業として義肢が支給されるのであって、療養の給付として支給されるわけではない(通達)
  • 健全な視力を持つ労働者が業務災害のため視力(屈折異常の場合は矯正視力)が0.6以下に低下し、眼鏡を必要とする場合は、労働福祉事業として眼鏡が支給されるのであって、療養の給付として支給されるわけではない。(通達)
  • 温泉療養は原則として保険給付の対象とされないが、病院等の付属施設で医師が直接指導のもとに行うものについては給付の対象となる。なお、治ゆ後の温泉療養は保険給付の対象とならないが労働福祉事業の対象となることがある。(通達)
  • 入院中他の医師に往診を依頼した場合にはその初診料及び往診料は療養の範囲に入る。(通達)
  • 柔道整復師の骨折又は脱臼に対する施術については、応急手当の場合を除いて、医師の同意がある場合にのみ保険給付の対象となる。また、はり、灸及びマッサージについても医師が必要と認めることなど一定の要件を満たした場合は保険給付の対象となることがある。
  • リハビリテーション医療(業務上の事由又は通勤による傷病により療養中の労働者に対して当該傷病に係る本来の治療に加え、理学療法、作業療法等を個々の症例に応じ総合的に実施して、労働能力の回復を図り職場復帰への医学的指針を与えるまでの一連の行為)については、指定された施設で医師の指示のもとに資格を有する理学療法士又は作業療養士によって行うものについて認めることとされている。(通達)
b 給付期間

療養の必要が生じたときから、傷病が治ゆするか死亡するかして療養を必要としなくなるまでである。(給付期間が限定されているわけではない)

  • 「治ゆ」とは治療の必要がなくなった状態になることをいい、平常の健康状態に復帰することをいうのではない。症状が残っている場合でも症状が固定し、治療の効果が期待できない状態になった場合には「治ゆ」したことになり、以後は障害(補償)給付の対象等となる。(通達)
  • いったん療養を必要としなくなってもその後再びその傷病について療養を必要とするに至った場合(再発)は給付を受けることができる。

② 療養の費用の支給

次の場合には療養の給付にかえて療養の費用の支給が行われる。

a 療養の給付をすることが困難な場合

その地区に指定病院等がない場合や、特殊な医療技術又は診療施設を必要とする傷病の場合に最寄りの指定病院等にこれらの技術又は施設の設備がなされていない場合等、政府側の事情において療養の給付を行うことが困難な場合という。

b 療養の給付を受けないことについて労働者に相当の理由がある場合

労働者側に療養の費用によることを便宜とする事情がある場合、すなわち、傷病が指定病院等以外の病院、診療所等で緊急な療養を必要とする場合や最寄りの病院,診療所等が指定病院等でない等の事情がある場合をいう。

  • 療養の給付と療養の費用の支給のいずれかを受けるかが労働者の選択又は希望に委ねられているのではない。

(2)請求

① 療養の給付の請求(則12条)

療養補償給付(療養給付)たる療養の給付請求書」に負傷又は発病の年月日及び災害の原因及び発生状況について事業主の証明を受けたうえで、指定病院等を経由して当該請求書を所轄労働基準監督署長に提出する。

療養補償給付たる療養の給付請求書業務災害用(様式第5号)の無料ダウンロード

療養給付たる療養の給付請求書通勤災害用(様式第16号の3)の無料ダウンロード

  • 具体的には使用者が労災5号・16号の3用紙を作成し、労働者・使用者それぞれが押印したものを労働者が労災指定病院等に提出することになる。労災指定病院と労災指定薬局でそれぞれ受診した場合は、それぞれに5号用紙を提出する。また、A皮膚科病院で受診し、その後B整形外科病院で受診した場合は、A皮膚科病院に5号用紙を、B整形外科病院には6号用紙(指定病院変更届)を提出することになる。

② 療養の費用の請求(則12条の2)

療養にかかった費用をいったん医療機関に支払い、「療養補償給付(療養給付)たる療養の費用請求書」に負傷又は発病の年月日及び災害の原因及び発生状況について事業主の証明を受け、傷病名及び療養の内容及び療養に要した費用の額について診療担当者の証明を受けたうえで、当該請求書を直接所轄労働基準監督署長に提出する。

病院で治療した場合、薬局から薬剤の支給を受けた場合、柔道整復師から手当てを受けた場合、はり師・きゅう師、あん摩マッサージ指圧師から手当てを受けた場合、訪問看護事業者から訪問看護を受けた場合で様式が異なる。

療養補償給付たる療養の費用請求書業務災害用(様式第7号(1))の無料ダウンロード

療養補償給付たる療養の費用請求書(薬局)業務災害用(様式第7号(2))の無料ダウンロード

療養補償給付たる療養の費用請求書(柔整)業務災害用(様式第7号(3))の無料ダウンロード

療養補償給付たる療養の費用請求書(はり・きゅう)業務災害用(様式第7号(4))の無料ダウンロード

療養補償給付たる療養の費用請求書(訪看)業務災害用(様式第7号(5))の無料ダウンロード

療養給付たる療養の費用請求書通勤災害用(様式第16号の5(1))の無料ダウンロード

療養給付たる療養の費用請求書(薬局)通勤災害用(様式第16号の5(2))の無料ダウンロード

療養給付たる療養の費用請求書(柔整)通勤災害用(様式第16号の5(3))の無料ダウンロード

療養給付たる療養の費用請求書(はり・きゅう)通勤災害用(様式第16号の5(4))の無料ダウンロード

療養給付たる療養の費用請求書(訪看)通勤災害用(様式第16号の5(5))の無料ダウンロード

③ 指定病院の変更

療養の給付を受ける指定病院等を変更する場合は、指定病院変更届を変更後の指定病院等を経由して所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

療養補償給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第6号)の無料ダウンロード

療養給付たる療養の給付を受ける指定病院等(変更)届(様式第16号の4)の無料ダウンロード

  • 具体的には使用者が労災6号・16号の4用紙を作成し、労働者・使用者それぞれが押印したものを労働者が変更後の労災指定病院等に提出することになる。

 

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