社会保険との調整


社会保険との調整(労災保険法別表第1等)

同一の事由により労災保険の年金給付と社会保険の年金給付が併給される場合には、社会保険の年金給付は全額支給されるが、労災保険の年金給付には一定の率(調整率)が乗じられ、減額して支給される。また、休業(補償)給付についても、傷病(補償)年金とみなして同様の調整率が乗じられる。調整率は具体的には次のようになる。

労災保険給付
社会保険給付等 
障害(補償)年金 遺族(補償)年金 傷病(補償)年金
休業(補償)年金
厚生年金保険+国民年金  障害厚生年金+障害基礎年金 0.73   0.73
遺族厚生年金+遺族基礎年金(寡婦年金)   0.80  
厚生年金保険  障害厚生年金 0.83   0.86
遺族厚生年金   0.84  
国民年金  障害基礎年金 0.88   0.88
遺族基礎年金(寡婦年金)   0.88  
  • 併給調整が行われるのは同一の事由により支給される給付である。従って、例えば障害(補償)年金や遺族(補償)年金の受給権者がその後老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給するようになっても併給調整は行われない。なお、遺族(補償)年金と社会保険の遺族年金の受給権者が異なっている場合であっても、同一人の死亡による場合には当該併給調整の対象となる。 
  • 厚生年金保険法の規定による障害手当金の認定日において障害(補償)給付(具体的には障害(補償)一時金)を受ける権利を有する者に ついては、障害手当金は支給されず、障害(補償)給付が支給されることとなる。 (厚生年金保険法56条3号)
  • 国民年金法30条の4(20歳前傷病による障害基礎年金)の規定による障害基礎年金については、労災保険の障害(補償)給付を受給するときは支給停止になる(国民年金法36条の2)ので障害(補償)給付との併給調整の必要はない。 
  • 同一の事由により共済組合等から障害共済年金又は遺族共済年金が支給される場合(同一事由に基づき障害基礎年金又は遺族基礎年金が併給される場合も含む)は、労災保険の側からの併給調整は行われない。すなわち、労災保険の年金給付は減額されず、共済年金が減額支給される。(法別表第1、3号等) 
  • 一時金たる保険給付及び特別支給金については当該併給調整は行われない。 
  • 休業(補償)給付については、休業1日につき給付基礎日額の100分の60に減額率を乗じることとなる。 
  • 併給調整をした場合の額が、併給がない場合の労災保険の保険給付額より低くなってしまう場合がある。このような場合は調整前の労災保険の保険給付額から併給される社会保険の年金額を減じた額が労災保険の保険給付額とされる。(令1条、3条、5条)

    (例)500万円の障害補償年金と50万円の障害厚生年金が併給されるとすると、労災保険の年金額に調整率を乗じると500万円×0.83=415万円となるが、この場合、社会保険の年金額(50万円)を合わせた年金受給総額は465万円となり、調整前の労災保険の年金額(500万円)より受給総額が低下してしまい不合理である。このような場合は500万円-50万円=450万円を労災保険において支給し、少なくとも併給により年金受給総額の低下が発生しないようにするのである。(労災保険から450万円、社会保険から50万円が支給され、合せて500万円受給することになる)

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