Q 雇用保険の特定受給資格者と特定理由離職者の違いは?


雇用保険の特定受給資格者と特定理由離職者の違い等について

特定受給資格者とは?

離職理由が、倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた(いわゆる失業保険の)受給資格者です。
具体的な特定受給資格者の判断基準は以下の通りです。

① 「倒産」等により離職した者

  1. 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
  2. 事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
  3. 事業所の廃止 (事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
  4. 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

② 「解雇」等により離職した者

  1. 解雇 (自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
  2. 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
  3. 賃金 (退職手当を除く。) の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと等により離職した者
  4. 賃金が、 当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した (又は低下することとなった) ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
  5. 離職の直前3か月間に連続して労働基準法に基づき定める基準に規定する時間(各月45時間)を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
  6. 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行って いないため離職した者
  7. 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないことと なったことにより離職した者
  8. 期間の定めのある労働契約(当該期間が1年未満のものに限る。)の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったこと(1年以上引き続き同一の事業主の適用事業に雇用されるに至った場合を除く。)により離職した者
  9. 上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者及び事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかった場合
  10. 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者 (従来から恒常的に設けられている 「早期退職優遇制度」 等に応募して離職した場合は、 これに該当しない。)
  11. 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
  12. 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

特定受給資格者のメリット

①給付期間が長い

例えば離職時の年齢が45歳で、9年間雇用保険に加入していて自己都合退職した場合の給付日数は90日ですが、特定受給資格者の場合給付日数が240日となります。(期間が短い場合は一般の退職者と同じになる場合もあります)

②給付制限がない

自己都合で退職した場合はハローワークへ来所し、離職票の提出と求職の申し込みを行った日(受給資格決定日)から7日間(待期)を経過してからさらに3カ月経過しないと給付を受けることができませんが、特定受給資格者の場合は7日間の翌日から支給対象となります。

③最短で6カ月間で受給可能

自己都合で退職した場合は離職日以前2年間に12カ月以上の雇用保険被保険者期間が受給要件でありますが、特定受給資格者の場合は離職日前1年間に6カ月の雇用保険被保険者期間が受給要件となります。

特定理由離職者とは?

特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した者です。具体的な特定理由離職者の判断基準は以下の通りです。

①労働契約期間満了等により離職した者

具体的には期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)(「特定受給資格者の範囲」のⅡの(7)又は(8)に該当する場合を除く。)

②正当な理由のある自己都合により離職した者

具体的には

  1. 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
  2. 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
  3. 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した場合
  4. 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した場合
  5. 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
    1. 結婚に伴う住所の変更
    2. 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
    3. 事業所の通勤困難な地への移転(通常の方法により通勤するための往復所要時間が概ね4時間以上であるとき等)
    4. 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
    5. 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
    6. 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
    7. 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
  6. その他、上記IIの(10)に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等

特定受給資格者と特定理由離職者の違い

雇用保険では、離職者を一般の離職者、特定受給資格者、特定理由離職に分類しているわけですが、その違いは一般の離職者に対して、特定受給資格者と特定理由離職者を有利にするということです。

一般の離職者と特定受給資格者の違いは「特定受給資格者のメリット」で触れましたが、「特定受給資格者」と「特定理由離職者」の違いは、「給付日数」です。給付制限がないことと、最短6カ月で受給可能な点は変わりません。

原則として特定理由離職者は自己都合により離職した場合の給付日数しか受給できません。(10年未満90日など)
ただし、離職日が平成34年3月31日(その都度延長されていますが・・・)までの間にある方に限り、特定理由離職者の判断基準②正当な理由がある自己都合により退職し、かつ被保険者期間が12カ月未満(離職日以前2年間)で、かつ、6カ月以上(離職日以前1年間)ある場合に限り、給付日数が特定受給資格者と同じになります。

不正受給について

偽りその他不正の行為で失業等給付を受けたり、又は受けようとした場合には、以後これらの失業等給付が受けられなくなるばかりでなく、不正に受給した金額の返還・納付(3倍返し)を命ぜられ、また、詐欺罪等で処罰されることがある。離職票の離職理由について虚偽の申告を行うことも不正行為となるので注意である。

事業主が離職理由について虚偽の記載を行った場合、偽りその他不正の行為をしたものとして、そのような虚偽の離職理由に基づき不正に受給した者と連帯して不正受給金の返還・納付命令(3倍返し)の対象となるとともに、詐欺罪等として刑罰に処せられる場合がある。

助成金との関係

1人以上の被保険者を事業主都合により解雇(勧奨退職、解雇予告を含む)させた事業主または事業所の被保険者の一定割合以上の特定受給資格者(一部のものを除く)を発生させた事業主のいずれかには、雇入れ関係助成金が支給されないこととなる。(特定理由退職者を発生させた場合は雇入れ関係助成金の支給に影響しない。)

特定受給資格者および特定理由離職者の範囲と判断基準PDFデータのダウンロード

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