不服申立ておよび訴訟(雇用保険法第69条、70条)
(1)労審法による不服申立て
① 労審法の対象となる処分(法69条1項)
労審法による審査請求又は再審査請求をすることができるのは、次の処分について不服がある場合である。
a 被保険者の資格の取得又は喪失の確認に関する処分
b 失業等給付に関する処分
c 不正受給による失業等給付の返還命令又は納付命令
② 審査請求(労審法7条1項、8条1項)
審査請求は、原処分をした公共職業安定所の所在地を管轄する都道府県労働局に置かれた雇用保険審査官に対して行う。また、審査請求は正当な理由によりこの期間内に審査請求をすることができなかったことを疎明した場合を除き、原処分のあったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。
- 審査請求は文書で行っても、口頭で行ってもよい。また、代理人(特段の資格不要)によってもすることができる。(労審法9条、9条の2)
- 審査請求人は、決定があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができるが、この場合は文書によって行わなければならない。(労審法17条の2)
- 審査請求者は、審査請求をした日の翌日から起算して3箇月を経過しても審査請求についての決定がないときは、労働保険審査会に再審査請求をすることができるが、この場合、当該審査請求は取り下げられたものとみなされる。
③ 再審査請求(労審法38条)
再審査請求は、厚生労働大臣の所轄のもとに設置されている労働保険審査会に対して行う。また再審査請求は、正当な理由によりこの期間内に再審査請求をすることができなかったことを疎明した場合を除き、審査請求に対する決定の謄本が送付された日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。
- 再審査請求は文書で行わなければならない。また、代理人(特段の資格不要)によってもすることができる。(労審法39条)
- 再審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができる(口頭不可)(労審法49条)
- 審査請求及び再審査請求は、裁判上の請求をみなされ、時効中断の効果がある。
④ 不服理由の制限
法9条の規定による確認(被保険者の資格の取得又は喪失の確認)に関する処分が確定したときは、当該処分についての不服を当該処分に基づく失業等給付に関する処分についての不服の理由とすることができない。
- 審査請求又は再審査請求の裁決等により、先行行為たる資格特捜の確認の処分が確定した場合には、後続行為である失業等給付に冠する処分についての争いの中で再び争うことはできない。
(2)行政不服審査法による不服申立て
① 審査請求
日雇労働被保険者の任意加入の認可申請に対する不認可の処分等、労審法の対象とならない処分について不服がある場合には、厚生労働大臣(公共職業安定所長が処分庁であるときは都道府県労働局長)に対して審査請求を行う。
- この審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内、かつ、処分があった日の翌日から起算して1年以内に、原則として書面により行わなければならない。
② 訴訟との関係
行政不服審査法による不服申立ての対象となる処分に不服がある場合は、原則として、審査請求を待たず直ちに裁判所に提訴することができる。
- 二事業に関しては、行政不服審査法による審査請求も認めないとするのが現在の厚生労働省の立場であり、二事業に関して不服がある場合には直接裁判で争うことになる。