育児介護休業給付(雇用保険法第61条の4から6)
(1)育児休業基本給付金(法61条の4)
①支給要件(法61条の4、1項)
育児休業基本給付金は、一般被保険者が、その1歳(一定の場合1歳2か月、1歳6か月の場合あり)に満たない子(養子を含む)を養育するための休業をした場合において、次の要件を満たしたときに支給単位期間について支給される。
① 休業を開始した日前2年間(原則)にみなし被保険者期間が通算して12箇月以上であったこと
② 厚生労働省令で定める育児休業であること
③ 事業主から支払われた賃金額が休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の80相当額未満であること
- 介護休業を開始する時点で介護休業終了後に離職が予定されている者は支給対象とならない。
◎ 厚生労働省令で定める育児休業とは?
具体的には以下の要件を満たしていることが必要である。
a 支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日以下もしくは10日を超える場合であっても就業している時間が80時間以下であること
b 被保険者がその事業主に申し出ることによってすること
c その期間中は休業をすることとする一の期間について、その初日及び末日(休業終了予定日)とする日を明らかにして申し出ること
d 次のいずれかに該当することとなった日後の休業ではないこと(特別の事情があるときを除く)
イ 休業終了予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の被保険者が休業の申出に係る子を養育しないこととなった事由として公共職業安定所長が認める事由が生じたこと
ロ 休業終了予定日とされた日の前日までに、休業の申出に係る子が1歳に達したこと
ハ 休業終了予定日とされた日までに、休業の申出をした被保険者について産前産後休業期間、介護休業期間又は新たな育児休業期間が始まったこと
- 支給単位期間に10日まで出勤しても育児休業となる。また10日を超えて出勤しても就業時間が80時間以下であればその期間も育児休業となる。
◎ みなし被保険者期間とは?
その1歳に満たない子を養育するための休業を開始した日を被保険
者でなくなった日とみなして、当該休業を開始した日の前日からさかのぼって1箇月ごとに区切っていき、このように区切られた1箇月の期間に賃金支払基礎日数が11日以上ある場合にその1箇月の期間を1箇月として計算した期間をいう。ただし、次に掲げる被保険者であった期間はみなし被保険者期間には含めない。
a 最後に被保険者となった日前に、受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得した場合の当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であった期間(基本手当等の受給の有無にかかわらない)
b 被保険者の資格取得の確認があった日の2年前の日前における被保険者であった期間
◎ 支給単位期間とは?
育児休業をした期間を、当該休業を開始した日又は各月においてその日に応当し、かつ、当該休業をした期間内にある日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日(休業開始応当日)から各翌月の休業開始応当日の前日(当該休業を終了した日の属する月にあっては、当該休業を終了した日)までの各期間に区分した場合における当該区分による一の期間をいう。(産後8週間は就労させることができないので育児休業を最大限にとったとしても原則支給単位期間の最長は11箇月となる)
(例)4月1日に出産し、最大の育児休業期間を取得しようとする場合
1回目の支給単位期間 5/28 ~ 6/27
2回目の支給単位期間 6/28 ~ 7/27
3回目の支給単位期間 7/28 ~ 8/27
4回目の支給単位期間 8/28 ~ 9/27
5回目の支給単位期間 9/28 ~ 10/27
6回目の支給単位期間 10/28 ~ 11/27
7回目の支給単位期間 11/28 ~ 12/27
8回目の支給単位期間 12/28 ~ 1/27
9回目の支給単位期間 1/28 ~ 2/27
10回目の支給単位期間 2/28 ~ 3/27
11回目の支給単位期間 3/28 ~ ※3/30
※休業を終了した日については、子が1歳に達した日以後引き続き休業している場合は、子が1歳に達する日の前日(1歳の誕生日の前々日)となる。(子が1歳に達した日以後の期間については育児休業基本給付金の支給単位期間にはならない)
- パパママ育休プラス制度を利用する場合、父母ともに育児休業を取得する場合は、以下のいずれの要件も満たす場合に子が1歳2か月に達する日の前日までの間に、1年(※)まで育児休業給付金が支給される。
a 育児休業開始日が、1歳に達する日の翌日以前である場合
b 育児休業開始日が、配偶者が取得している育児休業期間の初日以後である場合
c 配偶者が当該子の1歳に達する日以前に育児休業を取得していること※出産日(産前休業の末日)と産後休業期間と育児休業給付金を受給できる期間を合わせて1年となる
(男性の場合は、育児休業給付金を受給できる期間が1年となる。) - 保育所における保育の実施が行われないなどの以下のいずれかに該当する理由により、子が1歳に達する日(※)後の期間に育児休業を取得する場合は、その子が1歳6か月に達する日前までの期間、育児休業給付金の支給対象となる。(支給対象期間の延長)
a 育児休業の申出に係る子について、保育所(無認可保育施設は対象外)における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、その子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合
b 常態として育児休業の申出に係る子の養育を行っている配偶者(事実婚を含む)であって、その子が1歳に達する日後の期間について常態としてその子の養育を行う予定であった者が以下のいずれかに該当した場合
イ 死亡したとき
ロ 負傷、疫病又は身体上若しくは精神上の障害により育児休業の申出に係る子を養育することが困難な状態になったとき
ハ 婚姻の解消その他の事情により配偶者が育児休業の申出に係る子と同居しないこととなったとき
ニ 6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定であるか又は産後8週間を経過しないとき(産前休業を請求できる期間又は産前休業期間及び産後休業期間)※「パパママ育休プラス制度」の利用により育児休業終了予定日とされた日が子の1歳に達する日以降である場合は休業終了予定日の翌日
◎ 休業開始時賃金日額とは?
育児休業基本給付金の支給を受けることのできる被保険者を受給資格者と、育児介護基本給付金の支給に係る休業を開始した日の前日を受給資格に係る離職の日とみなして算定されることとなる賃金日額に相当する額をいう。なお、その上限額は14,150円(平成28年8月1日以後)である。
- 休業を開始した日前2年間については、その期間中に疾病、負傷、出産又は、事業所の休業等により引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかった期間がある場合には、当該理由により賃金の支払いを受けることができなかった日数を2年間に加算した期間(最大で4年間)まで延長される。
- 育児休業期間中は、完全に不就労の状態でないと育児休業基本給付金が支給されないわけではないが、11日以上就業し、かつ就業時間が80時間を超える支給単位期間について育児休業基本給付金は支給されない。
- 産前産後休業期間と育児休業期間が重複することはない。例えば出産日が4月1日である場合は産後8週間(5月27日までの期間)に育児休業基本給付金が支給されることはあり得ない。
- 同一の子について2回目以降の育児休業については、育児・介護休業法にいう特別の事情がない限り育児休業給付金は支給されない。
- 育児休業基本給付金については、高年齢雇用継続給付のように最低下限額に満たない場合に支給されないということはない。
- 育児休業給付や介護休業給付に係る休業開始時賃金日額の上限は、被保険者の年齢にかかわらず、一律である。
②支給額
育児休業基本給付金の額は、1支給単位期間について、休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の67(ただし育児休業の開始から6か月経過後は100分の50)に相当する額とされる。
- 180日目までは休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の67%の額が支給される。
- 本則上は100分の40となっているが当分の間100分の50(当該休業を開始した日から起算し当該育児休業給付金の支給に係る休業が通算して180日に達するまでの間に限り100分の67)に相当する額が支給されるとされている。
- 以下のような給付金の減額及び不支給がある。(合計100分80まで減額されない)
a 事業主から支払われた賃金の額が、休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の13相当額以下である場合(支給率が100分の50の場合は100分の30相当額以下である場合以下同じ)
→ 減額されないb 事業主から支払われた賃金の額が、休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の13相当額を超え、100分の80相当額未満である場合
→ 支払われた賃金の額と支給単位期間における育児休業基本給付金の支給額との合計額が休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の80に相当する額になるように減額した額が支給額となる。(要は休業開始時賃金日額の80%までは保障されるということである)c 事業主から支払われた賃金の額が、休業開始時賃金日額に30を乗じてた額の100分の80相当額以上である場合
→ 育児休業基本給付金は支給されない。
③受給手続
条文上は被保険者が行うことが原則となっているが、現実的には事業主が行う。
① 最初の支給申請
被保険者は、初めて育児休業基本給付金の支給を受けようとするときは、支給単位期間の初日から起算して4箇月を経過する日の属する月の末日までに育児休業基本給付金支給申請書に休業開始時賃金月額証明書を添えて所轄公共職業安定所長に提出しなければならない。
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- 事業主は、労使協定がある場合には被保険者に代わって育児休業基本給付金支給申請書を提出することができる。この場合、事業主は育児休業に係る休業開始時賃金証明書を育児休業基本給付金支給申請書の提出をする日までに提出すればよい。(通常はこの手続きとなる。)
- ・あらかじめ受給資格等を照会するため、「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を「育児休業給付受給資格確認票」として休業開始時賃金証明書を添えて、初回の支給申請前に提出することも可能。受給資格の確認のみ行う場合は育児休業を開始した日の翌日から起算して10日以内にする必要がある。
- ・支給申請書と賃金証明書の記載内容を確認できる書類(賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など)、振込先銀行口座の預金通帳のコピー、母子健康手帳のコピーを添付する必要がある。
② 2回目以後の支給申請
高年齢雇用継続給付金と同様、所轄公共職業安定所長は、最初の支給申請に基づいて育児休業基本給付金を支給することを決定したときは、次回以後の支給申請を行うべき期間を定め、次回に使用する支給申請書を交付するので、2回目以降は当該指定期間に当該申請書で支給申請を行う。
- 天災その他やむを得ない理由があるときは、提出期限をすぎても受理されるが、この場合はその理由がやんだ日の翌日から起算して7日以内に提出しなければならない。
- パパママ育休プラス制度を利用する場合は、子が1歳に達する日を含む支給対象期間までの支給申請時に、通常の確認書類に加えて以下の確認書類を添付する必要がある。
a 世帯全員について記載された住民票の写し等
b 配偶者の育児休業取扱通知書の写し等(申請書に配偶者の雇用保険被保険者番号がある場合を除く)
④支給対象期間延長の手続き
支給対象期間の延長の取扱いを受けるためには、以下のいずれかの時に「育児休業給付金支給申請書」に必要な記載を行い、延長事由に該当することを確認することができる書類を添えて提出することが必要となる。
①(子が1歳に達する日前の支給対象期間について)子が1歳に達する日以降最初に提出する際
②子が1歳に達する日以後の日を含む支給対象期間について提出する際
・支給対象期間延長の手続きをする場合には以下の理由に応じてそれぞれ添付書類が必要となる。
a 育児休業の申出に係る子について、保育所(無認可保育施設は対象外)における保育の実施を希望し、申込みを行っているが、その子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合
→市町村が発行した保育所の入所不承諾の通知書など当面保育所において保育が行われない事実を証明することができる書類
b 常態として育児休業の申出に係る子の養育を行っている配偶者(事実婚を含む)であって、その子が1歳に達する日後の期間について常態としてその子の養育を行う予定であった者が以下のいずれかに該当した場合であって、
イ 死亡したときまたは負傷、疫病又は婚姻の解消その他の事情により配偶者が育児休業の申出に係る子と同居しないこととなったとき
→世帯全員について記載された住民票の写し及び母子健康手帳
ロ 身体上若しくは精神上の障害により育児休業の申出に係る子を養育することが困難な状態になったとき
→ 保育を予定していた配偶者の状態についての医師の診断書等
ハ 産前休業を請求できる期間又は産前休業期間及び産後休業期間
→母子健康手帳
(2) 給付制限(法61条の6)
偽りその他不正の行為により育児休業基本給付金の支給を受け、又は受けようとした者には、当該給付金の支給を受け、又は受けようとした日以後、育児休業給付を支給しない。ただし、やむを得ない理由がある場合には、育児休業給付の全部又は一部を支給することができる。