介護休業給付(雇用保険法第61条の7から8)
(1)介護休業給付金
①支給要件
介護休業給付金は、一般被保険者が介護休業をした場合において、次の要件を満たしたときに、支給単位期間について支給される。
① 対象家族を介護するための休業であること
② 休業を開始した日前2年間(原則)にみなし被保険者期間が通算して12箇月以上であったこと
③ 厚生労働省令で定める介護休業であること
④ 被保険者が介護休業給付金の支給を受けたことがある場合は、介護休業開始日から起算して3月を経過する日後に当該対象家族の介護休業をしたものではないこと
⑤ 事業主から支払われた賃金が休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の80未満であること
- 介護休業を開始する時点で介護休業終了後に離職が予定されている者は支給対象とならない。
対象家族とは?
当該被保険者の配偶者(事実婚を含む)、父母、子(養子を含む)及び配偶者(養父母を含む)の父母、祖父母、兄弟姉妹及び孫
ポイント:平成29年1月1日以降「祖父母、兄弟姉妹及び孫」について同居かつ扶養しているという要件がなくなった。
厚生労働省令で定める介護休業とは?
負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態の家族の介護のための休業であって次の要件を満たす必要である。
a 支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日以下であること(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)=支給単位期間に10日まで出勤しても介護休業となる。
b 被保険者がその事業主に申し出ることによってすること
c その期間中は休業することとする一の期間について、その初日及び末日(休業終了予定日)とする日を明らかにして申し出ること
d 次のいずれかに該当することとなった日後の休業ではないこと(特別支給金の事情が生じたときを除く)
イ 休業終了予定日とされた日の前日までに、対象家族の死亡その他の被保険者が休業の申出に係る対象家族を介護しないこととなった事由をして公共職業安定所長が認める事由が生じたこと
ロ 休業終了予定日とされた日の前日までに、当該休業を開始した日から起算して3月を経過したこと
ハ 休業予定日とされた日までに、休業の申出をした被保険者について産前産後休業期間、育児休業期間又は新たな介護休業期間が始まったこと
常時介護を必要とする状態に関する判断基準
「常時介護を必要とする状態」とは、次のいずれかに該当するものとする。
①日常生活動作事項(第1表の事項欄の歩行、排泄、食事、入浴及び着脱衣の5項目をいう。)のうち、全部介助が1項目以上又は一部介助が2項目以上あり、かつ、その状態が継続すると認められること。
②問題行動(第2表の行動欄の攻撃的行為、自傷行為、火の扱い、徘徊、不穏興奮、不潔行為及び失禁の7項目をいう。)のうちいずれか1項目以上が重度又は中度に該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。
第1表(日常生活動作)
|
1 自 分 で 可 |
2 一 部 介 助 |
3 全 部 介 助 |
イ 歩行 |
・杖等を使用し、かつ、時間がかかっても自分で歩ける。 |
・付添いが手や肩を貸せば歩ける。 |
・歩行不可能 |
ロ 排泄 |
・自分で昼夜とも便所でできる。 ・自分で昼は便所、夜は簡易便器を使ってできる。 |
・介助があれば簡易便器でできる。 ・夜間はおむつを使用している。 |
・常時おむつを使用している。 |
ハ 食事 |
・スプーン等を使用すれば自分で食事ができる。 |
・スプーン等を使用し、一部介助すれば食事ができる。 |
・臥床のままで食べさせなければ食事ができない。 |
ニ 入浴 |
・自分で入浴でき、洗える。 |
・自分で入浴できるが、洗うときだけ介助を要する。 ・浴槽の出入りに介助を要する。 |
・自分でできないので全て介助しなければならない。・特殊浴槽を使っている。 ・清拭を使っている。 |
ホ 着脱衣 |
・自分で着脱できる。 |
・手を貸せば、着脱できる。 |
・自分でできないので全て介助しなければならない。 |
第2表 (問題行動)
|
重 度 |
中 度 |
軽 度 |
イ 攻撃的行動 |
人に暴力をふるう |
乱暴なふるまいを行う |
攻撃的な言動を吐く |
ロ 自傷行為 |
自殺を図る |
自分の体を傷つける |
自分の衣服を裂く、破く |
ハ 火の扱い |
火を常にもてあそぶ |
火の不始末が時々ある |
火の不始末をすることがある |
ニ 徘徊 |
屋外をあてもなく歩き回る |
家中をあてもなく歩きまわる |
ときどき部屋内でうろうろする |
ホ 不穏興奮 |
いつも興奮している |
しばしば興奮し騒ぎたてる |
ときには興奮し騒ぎたてる |
ヘ 不潔行為 |
糞尿をもてあそぶ |
場所をかまわず放尿、排便をする |
衣服等を汚す |
ト 失禁 |
常に失禁する |
時々失禁をする |
誘導すれば自分でトイレに行く |
みなし被保険者期間とは?
対象家族を介護するための休業を開始した日を被保険者でなくなった日とみなして、当該休業を開始した日の前日からさかのぼって1箇月ごとに区切っていき、このように区切られた1箇月の期間に賃金の支払いの基礎となった日が11日以上である場合に、その1箇月を1箇月として計算した期間をいう。ただし、次に掲げる被保険者であった期間はみなし被保険者期間には含めない。
a 最後に被保険者となった日前に、受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得した場合の当該受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前における被保険者であった期間(基本手当等の受給の有無にかかわらない)
b 被保険者の資格取得の確認があった日の2年前の日前における被保険者であった期間
支給単位期間とは?
対象家族を介護するための休業をした期間(当該対象家族を介護するための休業を開始した日から起算して3月を経過する日までの期間に限る)を、当該休業を開始した日又は各月においてその日に応当し、かつ、当該休業をした期間内にある日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日以下「休業開始応当日というから翌月の休業開始応当日の前日(当該休業を終了した日の属する月にあっては、当該休業を終了した日)までの各期間に区分した場合における当該区分による一の期間をいう。
- 支給単位期間の途中で離職した場合、当該支給単位期間は介護休業給付金の支給を受けることはできない。
休業開始時賃金日額とは?
介護休業給付金の支給を受けることができる被保険者を受給資格者と、介護休業給付金の支給に係る休業を開始した日の前日を受給資格に係る離職の日とみなして算定されることとなる賃金日額に相当する額をいう。なお、その上限額は育児休業給付金と同様である。
- 介護休業給付金が支給された介護休業を開始した日から3月を経過する日後の期間については、同じ対象家族に係る介護休業について介護休業給付金は支給されない。
- 高年齢雇用継続給付を受けている場合、高年齢雇用継続給付の支給対象月の初日から末日までの間引き続いて介護休業給付を受けることができるときは、その月の高年齢雇用継続給付は受給することができない。
②支給額
介護休業給付金の額は、1支給単位期間について、休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の67に相当する額である。
- 以下のような給付金の減額及び不支給がある。
a 事業主から支払われた賃金の額が、休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の67相当額以下である場合
→ 減額なしb 事業主から支払われた賃金の額が、休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の67相当額を超え、100分の80相当額未満である場合
→ 支払われた賃金の額と支給単位期間における介護休業給付金の支給額との合計額が休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の80に相当する額になるように減額した額が支給額となる。(要は休業開始時賃金日額の80%までは保障されるということである)c 事業主から支払われた賃金の額が、休業開始時賃金日額に30を乗じて得た額の100分の80相当額以上である場合
→ 介護休業給付金は支給されない
③受給手続
条文上は被保険者が行うことが原則となっているが、現実的には事業主が行う。
被保険者は、介護休業給付金の支給を受けようとするときは、介護休業を終了した日(当該休業に係る最後の支給単位期間の末日)の翌日から起算して2箇月を経過する日の属する月の末日まで(天災その他やむを得ない理由があるときは、当該理由がやんだ日の翌日から起算して7日以内)に介護休業給付金支給申請書に休業開始時賃金証明書を添えて(正当な理由があるときは添えないことができる)、所轄公共職業安定所長に提出しなければならない。
- 事業主は、雇用している被保険者が対象家族の介護のため休業を開始した場合、休業を開始した日の翌日から10日以内に、休業開始時賃金月額証明書を事業所の所轄教協職業安定所長に提出しなければならない。この場合、賃金台帳、出勤簿などの記載内容を証明する書類を添付する必要がある。
ただし、介護休業給付金支給申請手続きを被保険者の方に代わって事業主の方が行う場合、この手続きについては、介護休業給付金の支給申請と併せて行うことが可能となる。(通常はこの手続きとなる。)
(2)給付制限
偽りその他不正の行為により介護休業給付金の支給を受け、又は受けようとした者には、当該給付金の支給を受け、又は受けようとした日以後、介護休業給付金を支給しない。ただし、やむを得ない理由がある場合には、介護休業給付金の全部又は一部を支給することができる。なお、介護休業給付金の支給を受けることができない者とされたものが、同項に規定する日以後、新たに介護休業を開始し、介護休業給付金の支給を受けることができる者となつた場合には、当該休業に係る介護休業給付金は支給される。