基本手当(雇用保険法第16~19条)
一般的に失業をした際に受給できる保険として「失業保険」という名称で認識されている方が多いと思いますが、雇用保険法上「基本手当」といいます。
(1)基本手当の受給資格
①受給資格の要件
基本手当の支給を受けることができる資格を受給資格といい、当該受給資格を有する者を受給資格者という。受給資格が認められるためには次の3つの受給資格要件を満たさなければならない。
① 離職による被保険者資格の喪失の確認を受けたこと
② 失業の状態にあること
③ 算定対象期間に被保険者期間が通算して12箇月以上あること(特定受給資格者または特定理由離職者については6箇月以上)
- 失業の状態とは「積極的に就職しようとする気持ち」と「いつでも就職できる能力(環境・健康状態)」があり、「積極的に就職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」にあることをいう。したがって、次のような場合は失業給付を受けることはできない。
①病気やけがですぐに働けないとき(労災保険の休業補償または健康保険の傷病手当金などの支給を受けている場合も含む。)
②妊娠・出産・育児などによりすぐに働けないとき
③親族の看護に専念し、すぐに働けないとき
④定年などで退職してしばらく休養するとき
⑤結婚して家事に専念するとき
⑥自営をはじめたとき(準備を開始した段階を含み、収入の有無を問わない。)また、税理士等の有資格者で法律によりその業務を行うための登録が義務づけられている者は、原則失業給付を受けられない。
⑦ 新しい仕事に就いたとき(パート、アルバイトなども含み、収入の有無を問わない。)
⑧ 会社の役員に就任したとき(事業活動及び収入が無い場合は窓口で相談)
⑨ 学生(夜間・定時制・通信制を除く)
⑩ 就職することがほとんど困難な職業や労働条件(賃金・勤務時間等)にこだわり続けるとき
⑪ 雇用保険の被保険者とならないような短時間就労のみを希望するとき
◎ 算定対象期間とは?
(原則)
離職の日以前2年間
ただし、特定受給資格者または特定理由離職者については、離職の日以前1年間でもよい
(例外)
次の場合には算定対象期間が延長される。この算定対象期間の延長措置を「受給要件の緩和」という
原則の期間に次のいずれかの理由により引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかった期間があるときは、その日数(3年を限度とする)が加算される。=最大4年間が算定対象期間となる。
a 疾病又は負傷
b 事業所の休業
c 出産
d 事業主の命による外国における勤務
e aからdに準ずる理由であって公共職業安定所長がやむを得ないと認めるもの(同盟罷業、親族の疾病、3歳未満の子の育児、配偶者の海外勤務に同行するための休職、親族の疾病、負傷等により必要とされる本人の看護等)
- 「疾病又は負傷」については業務上外を問わない。(行手)
- 「事業所の休業」とは事業主の責めに帰すべき理由以外の理由による休業(休業手当の支払を要しない場合)をいう。(同前)
- 「出産」とは妊娠4箇月以上の分娩をいい、生産、死産、人口流産を含む流産、早産を問わない。(同前)
- 「事業主の命による外国における勤務」とは、事業主との間に雇用関係を存続させたまま海外の事業主のもとで雇用されるような場合をいう。(同前)
被保険者期間とは?
被保険者であった期間のうち、資格喪失日の前日又は喪失応当日の各前日から各前月の喪失応当日までさかのぼった各期間(1箇月間)に賃金の支払の基礎となった日(賃金支払基礎日数)が11日以上である場合に、その期間を1箇月として計算する。
- 賃金支払基礎日数は、現実に労働した日であることを要せず、労働基準法26条の規定による休業手当の対象となった日、労働基準法39条の規定による年次有給休暇を取得した日も賃金支払基礎日数に算入される。(行手)
- 未払い賃金がある場合でも賃金計算の基礎となる日数が11日以上であれば、その月は被保険者期間に算入する。(行手)
- 家族手当、住宅手当等の支給が1箇月分ある場合でも、本給が11日未満しか支給されないときは、その月は被保険者期間に算入しない。(行手)
- 深夜労働に従事して翌日にわたり、かつ、その労働時間が8時間を超える場合には、賃金支払基礎日数は2日として計算する。ただし、宿直についてはこの限りでない。(行手)
- 完全月給者であれば賃金支払基礎日数は28日から31日である。
- 日給月給者(欠勤控除がある場合)はその欠勤した給与を差し引いた賃金に対応する日数が賃金支払基礎日数となる。
- 最後に被保険者となった日前に、受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得したことがある場合には、当該受給資格等に係る離職の日以前における被保険者であった期間については、被保険者期間を計算する場合には被保険者であった期間に含めない。
(例)A(前の職場)の離職において受給期間等を取得し、B(今回退職した会社)で被保険者期間を算定する場合、Aに係る被保険者であった期間は、Bの離職に関して被保険者期間の算定の対象となる被保険者であった期間に含めることができず、被保険者であった期間はBの会社の在籍月のみとなる。(基本手当等を受給していようがいまいが、受給資格等を取得したことのみによって前の離職にかかわる期間は被保険者であった期間には含まれない)
◎ 特定受給資格者とは?
次のいずれかに該当する受給資格者(就職困難者である受給資格者を除く)をいう。
a 当該基本手当の受給資格に係る離職が、その者を雇用していた事業主の事業について発生した倒産又は当該事業主の適用事業の縮小若しくは廃止に伴うものである者として厚生労働省令で定めるもの
b aに定めるもののほか、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由によるものを除く)その他の厚生労働省令で定める理由により離職した者
◎ 特定理由資格者とは?
特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した者
特定受給資格者と特定理由資格者の具体的な判断理由についてはこちらを参照
◎ 就職困難者とは?
次のいずれかに該当する者をいう。
a 障害者雇用促進法に規定する身体障害者
b 障害者雇用促進法に規定する知的障害者
c 刑法等の規定により保護観察に付された者等
d 社会的事情により就職が著しく阻害されている者
- 就職困難者に該当するかどうかは受給資格決定時の状態で決定する。 (行手)
②受給資格の決定
基本手当の支給を受けるためには、まず、管轄公共職業安定所(その者の住所又は居所を管轄する公共職業安定所)に出頭し、求職の申込みをし、離職票を提出して受給資格の決定(基本手当の支給を受けることができる資格を有する者であると認定すること)を受けなければならない。管轄公共職業安定所長は、受給資格の決定を行ったときは、次回以後に出頭して失業の認定を受けるべき日を指定し、受給資格者に当該失業の認定日を知らせるとともに、基本手当の支給を受けるため必要となる受給資格者証を交付する。
- 2枚以上の離職票を有するとき又は受給期間延長通知書の交付を受けているときは受給資格の決定の際に併せて提出しなければならない。
- 受給資格者は、受給期間内に就職したときは、その期間内に再び離職し、当該受給資格に基づき基本手当の支給を受ける場合のために受給資格者証を保管しなければならない。
- 受給資格者は、受給資格者証を滅失し、又は損傷したときは、その旨を管轄公共職業安定所長に申し出て、再交付を受けることができる。(被保険者証の再交付はその者の選択する公共職業安定所長に対して申請する)
- 管轄公共職業安定所長は、離職票を提出した者に受給資格がないと認めたときは、離職票にその旨を記載し、返付しなければならない。
- 受給資格決定の際に必要となる書類は以下の通りである。
①雇用保険被保険者離職票―1及び離職票―2
②雇用(失業)保険被保険者証
③求職申込書(通常は離職票と一緒に事業主から交付される。ない場合はハローワークにあるので手続きの際にハローワークで記入することもできる)
④印かん
⑤運転免許証または住民基本台帳カード(写真付き)
ない場合は次のうちから2種類
a 旅券(パスポート)又は、健康保険被保険者証
b 住民票記載事項証明書(住民票の写し、印鑑証明書)
c 国民健康保険被保険者証
⑥写真2枚(3㎝×2.5㎝程度の正面上半身のもので3か月以内に撮影されたもの)
⑦本人名義の普通預(貯)金通帳(インターネットバンク・外資系金融機関・直近で新設された金融機関の店舗以外のもの)
(2)失業の認定
①通常の失業の認定
失業の認定は、求職の申込みを受けた公共職業安定所において、受給資格者が離職後最初に出頭した日から起算して4週間に1回ずつ直前の28日の各日について行うものとされている。
- 受給資格の決定を受けた者は、指定された失業の認定日に、管轄公共職業安定所に出頭し、失業認定申告書に受給資格者証を添えて提出し、職業の紹介を求めなければならない。なお、管轄公共職業安定所長は、失業の認定を行ったときは、その処分に関する事項を受給資格者証に記載したうえでこれを返付しなければならない。(則22条)
- 失業の認定は受給資格者本人の求職の申出によって行われる者であるので、未支給の失業等給付に係る場合(本人が死亡した場合)又は公共職業訓練等を受講中の場合を除き、代理人を出頭させて失業の認定を受けることはできない。(行手)
失業の認定を受けるべき期間中に受給資格者が就職した日があるときは、就職した日についての失業の認定は行わないが、この場合の就職とは、雇用関係に入るのはもちろん、請負、委任により常時労務を提供する地位にある場合、自営業を開始した場合等を言い、現実に収入の有無を問わない。(同前) - 60歳以上65歳未満の者については、被保険者とならない形態で就業した場合(週所定労働時間が20時間未満のパート勤務等をしながら求職活動を行う場合)でも失業の認定を受けることができるが、この場合基本手当は内職減額の方法で減額される。
- 受給資格者は、その氏名又は住所若しくは居所を変更した場合において、失業の認定又は基本手当の支給を受けようとするときは、失業の認定日又は支給日に、氏名を変更した場合にあっては受給資格者氏名変更届に、住所又は居所を変更した場合にあっては受給資格者住所変更届に、受給資格者証を添えて管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。(則49条)
- 失業の認定は、原則として、受給資格者について、あらかじめ定められた認定日に行うものであるから、所定の認定日に出頭しないときは、認定対象期間の全部について認定しないことになる。(行手512537)
- 失業の認定は、前回の認定日から今回の認定日の前日までの期間(認定対象期間)に原則として2回(離職理由による給付制限と初回支給認定日に係る給付制限満了後の認定対象期間とを合わせた期間については3回)以上の求職活動を行った実績(求職活動実績)が必要となるが、次の場合は、1回以上の求職活動実績で足りる。(通達)
① 就職困難者の場合
② 初回支給認定日における認定対象期間である場合
③ 認定対象期間の日数が14日未満となる場合
④ 求人への応募(応募書類の郵送、面接、筆記試験等の受験等)を行った場合
⑤ 巡回職業相談所における失業の認定及び市町村長の取次ぎによる失業の認定を行う場合 - 公共職業安定所や許可・届出のある民間職業紹介機関等が行う職業相談・職業紹介等を受けることは求職活動実績に該当するが、職業紹介機関への登録、知人への紹介依頼、新聞・インターネット等での求人情報の閲覧等だけでは求職活動実績に該当しない。(同前)
② 公共職業訓練等を受ける場合の失業の認定
公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等(特定公共職業訓練等を含む)を受ける受給資格者に係る失業の認定は、1月に1回、直前の月に属する各日(既に失業の認定の対象となった日を除く)について行うものとする。
◎ 特定公共職業訓練等とは?
中高年齢者(45歳以上60歳未満の者)の申出に基づきその再就職を容易にするものとして公共職業安定所長が特に指示した公共職業訓練等をいう。
- 平成13年に創設された雇用対策臨時特例法により、平成17年3月31日までの特例措置として、離職理由による給付制限の解除、寄宿手当及び移転費に係るものを除き、公共職業訓練等には、特定公共職業訓練等を加えるものとされた。
- 受給資格者は、公共職業安定所長の指示により公共職業訓練等を受けることとなったときは、速やかに、公共職業訓練等受講届及び公共職業訓練等通所届に受給資格者証(当該受給資格者が生計を維持している同居の親族と別居して寄宿する場合にあっては、当該親族の有無についての市町村の長の証明書及び受給資格者証)を添えて、管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。(則21条)
③ 失業の認定日の変更(法15条3項、則23条、24条2項)
次の受給権者は、あらかじめ管轄公共職業安定所長にその旨を申し出て失業の認定日の変更をすれば、その申し出た日にその前日までの各日について、失業の認定を受けることができる。なお、申し出た日が失業の認定日後であるときは、その失業の認定日における失業の認定の対象となる日及びその失業の認定日からその申し出た日の前日までの各日において失業の認定を受けることができる。
a 職業に就くためその他やむを得ない理由のため、失業の認定日に管轄公共職業安定所に出頭することができない者であって、その旨を管轄公共職業安定所長に申し出た者
b 管轄公共職業安定所長が、行政機関の休日、労働市場の状況その他の事情を勘案して、失業の認定日を変更することが適当であると認める者
- 認定日の変更の申出は、原則として事前になさなければならない。ただし、変更理由が突然生じた場合、認定日前に就職した場合等であって、事前に認定日の変更の申出を行わなかったことについてやむを得ない理由があると認められるときは、次回の所定の認定日の前日までに申し出て、認定日の変更の取り扱いを受けることができる。(行手)
- 認定日の変更が行われるのは、次のような理由により認定日に出頭できない場合である。(同前)
イ 就職する場合(公共職業安定所の紹介によると否とを問わない)
ロ 法15条4項(証明書による認定)に該当する場合
ハ 公共職業安定所の紹介によらないで求人者に面接する場合(採用試験を受験する場合も含む)
ニ 各種国家試験、検定等の資格試験を受検する場合
ホ 公共職業安定所の指導により、各種養成施設に入所する場合又は各種講習を受講する場合
へ 受給資格者本人の婚姻の場合(社会通念上妥当と認められる日数の新婚旅行等も含む)
ト 同居の親族又は一定別居の親族のための婚姻のための儀式に出席する場合
チ 同居の親族又は一定別居の親族の傷病について受給資格者の看護を必要とする場合
リ 同居の親族又は一定別居の親族の危篤又は死亡及び葬儀
ヌ 配偶者、3親等以内の血族又は姻族の命日の法事
ル 中学生以下の子弟の入学式又は卒業式等への出席
ヲ 選挙権その他公民としての権利を行使する場合
ワ イ~ヲに掲げる場合に準ずるものであって、社会通念上やむを得ないと認められるもの - 認定日の変更の申出を受けた日が、失業の認定日前の日であるときの失業の認定は、当該失業の認定日における失業の認定の対象となる日のうち、当該申出を受けた日前の各日について行われる。
- 認定日の変更の申出を受けた日が、失業の認定日後の日であるときの失業の認定は、当該失業の認定日における失業の認定の対象となる日及び当該失業の認定日から当該申出を受けた日の前日までの各日について行われる。
- 認定日を変更して失業の認定が行われたときは、その後における最初の失業の認定日における失業の認定は、認定日変更の申出を受けた日から当該失業の認定日の前日までの各日について行われる。
④ 証明書による失業の認定(法15条4項、則25条~28条)
受給資格者は、失業の認定日に公共職業安定所に出頭することができなかった場合でも、次のいずれかに該当するときは、その理由を記載した証明書を提出することによって、失業の認定を受けることができる。
a 疾病又は負傷のために公共職業安定所に出頭することができなかった場合において、その期間が継続して15日未満であるとき
b 公共職業安定所の紹介に応じて求職者に面接(採用試験の受験も含む)するために公共職業安定所に出頭することができなかったとき
c 公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるために公共職業安定所に出頭することができなかったとき
d 天災その他やむを得ない理由のために公共職業安定所に出頭することができなかったとき
- 継続15日以上の傷病については、基本手当でなく傷病手当の支給の対象となる。また、継続30日以上の傷病については受給期間の延長も可能である。
- 証明書による失業の認定を受ける場合は、a~dの理由がやんだ後における最初の失業の認定日に管轄公共職業安定所に出頭し、証明書を受給資格者証に添えて提出しなければならない。
- cによる場合にあっては、1月に1回公共職業訓練等受講証明書を管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。
- 公共職業安定所の紹介によらない求職者の面接やその指示によらない公共職業訓練等を受ける場合には、証明書による失業の認定を受けることはできない。(認定日の変更はできる)
(3) 基本手当の日額
①基本手当の日額の算定(法16条)
基本手当の日額は、賃金日額に厚生労働省令で定める給付率を乗じて得た額とされており、具体的には次のようになる。(基本手当の支給対象となる日が平成28年8月1日から平成29年7月31日までの場合)
離職時の年齢が30歳未満または65歳以上の者
賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
---|---|---|
2,290円以上4,580円未満 | 80% | 1,832円から3,663円 |
4,580円以上11,610円以下 | 80%から50% | 3,664円から5,805円 |
11,650円超12,740円以下 | 50% | 5,805円から6,370円 |
12,740円(上限額)超 | ― | 6,370円(上限額) |
離職時の年齢が30歳以上45歳未満の者
賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
---|---|---|
2,290円以上4,580円未満 | 80% | 1,82円から3,663円 |
4,580円以上11,610円以下 | 80%から50% | 3,664円から5,805円 |
11,610円超14,150円以下 | 50% | 5,805円から7,075円 |
14,150円(上限額)超 | ― | 7,075円(上限額) |
離職時の年齢が45歳以上60歳未満の者
賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
---|---|---|
2,290円以上4,580円未満 | 80% | 1,832円から3,663円 |
4,580円以上11,610円以下 | 80%から50% | 3,663円から5,805円 |
11,610円超15,550円以下 | 50% | 5,805円から7,775円 |
15,550円(上限額)超 | ― | 7,775円(上限額) |
離職時の年齢が60歳以上65歳未満の者
賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
---|---|---|
2,290円以上4,580円未満 | 80% | 1,832円から3,663円 |
4,580円以上10,460円以下 | 80%から45% | 3,664円から4,707円 |
10,460円超14,860円以下 | 45% | 4,707円から6,687円 |
14,860円(上限額)超 | ― | 6,687円(上限額) |
- 基本手当日額は個々の受給資格者について、その受給資格に基づいて確定したものであるから、その受給期間中は、離職後において未払い額として認定した額を超えて未払い賃金が支払われたため賃金日額が変わった場合を除いて変わることはない。即ち、受給期間中に就職して再び離職することがあっても新たな受給資格を得た場合でない限り、再就職した期間中の賃金その他によって基本手当日額は変更されない。(行手)
- 算定された基本手当の日額に1円未満の端数がある場合には、その端数は切り捨てる。(端数処理法)
◎ 賃金日額(法17条)
(原則)
算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6箇月間に支払われた賃金総額÷180日
- 被保険者期間として計算されない月の賃金総額は算定の基礎とならない。
- この賃金総額には臨時に支払われる賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれない。
- 賃金日額の算定の基礎となる賃金は、被保険者として雇用された期間に対するものとして、同期間中に事業主に支払義務が確定した賃金とされる。従って、事業主の支払義務が被保険者の離職後に確定したもの(例えば、離職後において労使間に協定がなされ、離職前にさかのぼって昇給するようになった場合をいう)は、賃金日額の算定の基礎となる賃金には算入しない。(行手)
- 未払い賃金は賃金日額の算定の対象に含まれる。したがって、離職後において未払い賃金として確定した額を超えて未払い賃金が支払われた場合には再計算が行われる。(行手)
(例外)
原則の式で求めた賃金日額が次のa又はbの式で求めた額に満たないときは当該式で求めた額が賃金日額とされる。(ただし、受給資格に係る離職の日において短時間労働被保険者であった受給資格者に係る賃金日額については、この扱いを行わない)
a 賃金が日給、時給、出来高払制その他請負制によって定められている場合
算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6箇月間に支払われた賃金総額÷ 算定対象期間において被保険者期間として計算された最後の6箇月間の労働日数 × 100分の70
b 賃金の一部が月、週その他一定の期間によって定められている場合
その部分の総額÷その期間の総日数 + ①の式による額
※賃金の一部が月によって定められている場合は1箇月を30日とする。
- 原則及び例外に規定する方法、賃金日額を算定することが困難な場合又は算定された額を賃金日額とすることが適当でないと認められる場合は、厚生労働大臣が定めるところにより算定した額を賃金日額とすることとされている。具体的には、次のような特例が設けられている。(厚労告)
イ 育児休業、介護休業又はこれに伴う勤務時間短縮措置により賃金を喪失又は賃金が低下している期間中に離職した特定受給資格者については、特例により、休業開始前又は勤務時間短縮前の賃金日額により基本手当日額を算定する。
ロ 基本手当の受給資格者を含む当該事業場の労働者に関し、厚生労働省職業安定局長の定めるところにより、生産量の減少等に伴い、労使協定による合意に基づき、所定労働時間又は所定外労働時間の短縮の実施およびそれに伴う賃金の減少ならびに労働者の雇い入れに関する計画が作成され、所轄都道府県労働局長に提出された場合において、当該計画の期間(当該計画に基づく所定労働時間又は所定外労働時間の短縮の実施及びそれに伴う賃金の減少が6箇月以上行われた後の期間に限る)中に当該受給資格者が離職し、特定受給資格者として受給資格の決定を受けた場合には、当該所定労働時間又は所定外労働時間短縮前の賃金日額離職時の賃金日額とを比較していずれか高い方の賃金日額に基づいて基本手当日額を算定する。
賃金日額最低限度額・最高限度額の適用(法17条4項、H14厚労告245号)
a 最低限度額
→ 2,290円(=基本手当日額下限額1,832円 平成28年8月以後分)
b 最高限度額
次に掲げる受給資格者に係る離職日(基準日)の年齢に応じ、前記①により算定した賃金日額が右欄の額を超えるときはその額が賃金日額とされる。
- 最高限度額が最も高いのは、受給資格者に係る離職の日に45歳以上60歳未満の者である。
②自動変更対象額の変更(法18条)
厚生労働大臣は、年度の平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における労働者の平均定期給与額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう)が、直近の自動変更対象額が変更された年度の前年度の平均給与額を超え、又は下るに至った場合においては,その上昇し、又は低下した比率に応じて、その翌年度の8月1日以後の自動変更対象額を変更しなければならない。(完全自動賃金スライド)
- 変更された自動変更対象額に5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げるものとされている。
◎ 自動変更対象額とは?
賃金日額の最低限度額・最高限度額及び基本手当の支給率決定となる賃金日額をいう。
③基本手当の減額(法19条1項)
受給権者が、失業の認定に係る期間中に自己の労働による収入を得た場合には、その収入額によっては減額支給されることがある。具体的には、その収入の基礎となった日数(基礎日数)分の基本手当の支給については次のとおりである。
1 収入の1日分に相当する額から控除額(1,282円・平成28年8月以後分)を控除した額と基本手当日額との合計額(合計額)が、賃金日額の100分の80に相当する額を超えないとき
→ 減額されずに全額が支給される。
2 合計額が賃金日額の100分の80に相当する額を超えるとき
→ 当該超える額(超過額)を基本手当の日額から控除した残りの額が支給される。
3 超過額が基本手当の日額以上であるとき
→ 全く支給されない。
◎ 自己の労働による収入とは?
いわゆる内職程度のものをいい、例えば、裁縫、製本、袋又は箱製造等の一般家庭内職に従事し、又は、たまたま他家の営業の手伝い、荷造り、荷物の運搬、翻訳、仲介等を行って得た収入、預金利息等は含まれない。(行手)
- 基本手当の減額は、失業の認定に係る期間中に内職収入があった場合に行われる。従って、例えば、自己都合退職による3箇月間の給付制限期間中に内職収入があっても基本手当の減額は行われない。
- 日雇労働者として雇用され、賃金を得た場合は就職であり、ここでいう自己の労働ではない。(行手51652)
- 次の場合は基本手当の減給支給の対象となる。(通達)
a 待期中に内職に従事し、待期中に収入を得た場合
b 待期中に内職に従事し、支給開始後に収入を得た場合 - 収入の1日分に相当する額から控除する額についても、賃金水準の変動に伴う自動的変更によって、その翌年度の8月1日以後の額が変更される。(法19条2項)
- 受給資格者が自己の労働により収入を得たときは、その届出を、収入を得るに至った日の後における最初の失業の認定日に、失業認定申告書により管轄公共職業安定所職業安定所長にしなければならない。(則29条)
(4)基本手当の受給期間
①基本手当の受給期間
基本手当は原則として、次の①~③に掲げる受給資格者の区分に応じ、①~③に定める期間(受給期間)内に失業している日について、所定給付日数に相当する日数分を限度として支給される。
① 次の②、③に掲げる受給資格者以外の受給資格者(原則)
→ 当該受給資格に係る離職の日(基準日)の翌日から起算して1年
② 所定給付日数が360日である就職困難者たる受給資格者
→ 基準日の翌日から起算して1年に60日を加えた期間
③ (所定給付日数が330日である特定受給資格者)
→ 基準日の翌日から起算して1年に30日を加えた期間
- 受給資格者が上記の受給期間中に再就職した後、再び離職した場合において、再就職後新たに受給資格等を得ることができないときは、前の受給資格に基づく所定給付日数が残っていれば、残りの基本手当を当該受給期間中において受給することができる。
- 受給期間が経過してしまうと、たとえ所定給付日数が残っている場合であってもその受給資格に基づく基本手当を受給することはできない。
◎ 所定給付日数とは?(法22条、23条)
一の受給資格に基づき基本手当が支給される日数をいう。所定給付日数は、基準日における算定基礎期間、離職理由、年齢、その者が就職困難者であるか否か又は特定受給資格者であるか否かによって次のように定められている。
① 定年・自己都合・懲戒解雇等により離職した場合
算定基礎期間→ 離職時等の年齢↓ |
10年未満 | 10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
---|---|---|---|---|
全年齢共通 | 90日 | 120日 | 150日 | |
障害者等の就職困難者 | 45歳未満 | 300日 | ||
45歳以上 65歳未満 | 360日 |
②特定受給資格者・一部特定理由離職者
算定基礎期間→ 離職時等の年齢↓ |
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
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30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – | |
30歳以上 35歳未満 | 180日 | 210日 | 240日 | |||
35歳以上 45歳未満 | 240日 | 270日 | ||||
45歳以上 60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
60歳以上 65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
障害者等の 就職困難者 | 45歳未満 | 150日 | 300日 | |||
45歳以上 65歳未満 | 360日 |
◎ 算定基礎期間とは?(法22条3項、4項)
受給資格者が基準日まで引き続いて同一の事業主の適用事業に被保険者として雇用された期間(当該雇用された期間に係る被保険者となった日前に被保険者であったことがある者については、当該雇用された期間と前の適用事業での被保険者であった期間とを通算した期間)をいう。ただし、当該期間の算定に当たっては次に掲げる期間は通算されない。
① 前の適用事業での被保険者資格を喪失してから、後の適用事業で被保険者資格を取得するまでの期間が1年を超える場合の前の適用事業での被保険者であった期間
② 以前に基本手当又は特例一時金の支給を受けたことがあるときは、当該給付の受給資格又は特例受給資格に係る離職の日以前の被保険者であった期間
③ 一の被保険者であった期間に関し、被保険者となった日が被保険者となったことの確認があった日の2年前の日より前であるときは、当該確認のあった日の2年前の日における被保険者であった期間
- 高年齢継続被保険者(同一の事業主の適用事業に65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されているもの)が受給できる高年齢求職者給付金の所定給付日数は次のようになる。
算定基礎期間 日数 1年未満 30日分 1年以上 50日分
②受給期間の延長
次のいずれかに該当する場合には受給期間が延長される。
① 職業につくことができない期間がある場合(法20条1項かっこ書き)
受給期間内に次のa~hのいずれかの理由により引き続き30日以上職業につくことができない者が、公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該理由により職業につくことができない日数が受給期間の日数に加算される。(ただし、受給期間の最長は4年間となる)
a 妊娠
b 出産
c 育児(3歳未満の乳幼児の育児をいう)
d 疾病又は負傷(当該疾病又は負傷を理由として傷病手当を受給する場合を除く)
e 親族の看護
f 事業主の命により海外勤務する配偶者に同行する場合
g 青年海外協力隊など公的機関が行う海外技術指導等による海外派遣
h a~gに準ずる理由であって、公共職業安定所長がやむを得ないと認めるもの
- 当該受給期間延長の申出は、引き続き30日以上職業に就くことができなくなるに至った日の翌日から起算して1箇月以内に受給期間延長申請書に医師の証明書その他職業に就くことができない事実を証明することができる書類及び受給資格者証(受給資格者証の交付を受けていない場合には離職票)を添えて管轄公共職業安定所長に提出することによって行うものとされている。(則31条)
- 傷病手当の支給を受ける場合、当該傷病手当に係る疾病又は負傷については、受給期間の延長の対象となる理由にはならない。
② 定年退職者等の場合(法20条2項)
受給資格にかかわる離職が次のいずれかの理由によるものである者が、離職後一定の期間求職の申込みをしないことを希望する場合の受給期間は、申出により、①に規定する受給期間と、当該求職の申込みをしないことを希望する一定の期間(1年を限度とする)に相当する期間を合算した期間とされる。
a 60歳以上の定年に達したこと
b 60歳以上の定年に達した後の勤務延長又は再雇用により、一定期限まで引き続き雇用されることとなっている場合に、当該期限が到来したこと
- 当該受給期間の延長の申出は、離職の日の翌日から起算して2箇月以内に受給期間延長申請書に離職票(2枚以上の離職票を保管するときは、その全ての離職票)を添えて管轄公共職業安定所長に提出することによって行わなければならない。(則31条の3)
- ②の規定により合算された期間について①の規定による延長が行われても受給期間の最長は4年となる。
- 受給期間の延長は受給資格者についてのみ行われるものである。
③受給期間内の再就職・再取得(法20条3項)
受給資格者が受給期間内に再就職し、再び離職した場合で、新たに受給資格、高年齢受給資格、特例受給資格を取得したときは、その取得した日以後においては、前の受給資格に基づく基本手当は支給されない。
- 受給期間内に再就職し、新たに受給資格等を取得できなかったときは、前の受給資格に基づく残りの基本手当を受給期間内に限り受給することができる。
④待期(法21条)
基本手当は、受給資格者が当該基本手当の受給資格に係る離職後最初に公共職業安定所に求職の申込みをした日以後において、失業している日(疾病又は負傷のため職業につくことができない日を含む)が通算して7日に満たない間は、支給されない。
- 待期は1受給期間内に1回でよい。つまり、受給期間内に就職して新たな受給資格を取得することなく、再び失業した場合には、最初の離職後において既に待期を満了している者については再び要求されない。(行手51102)
- 失業の認定は、待期の7日についても行わなければならないが、待期には、疾病又は負傷のため職業に就くことができない日も含まれる。(行手51101)
- 給付制限の期間は待期の7日には含まれない。
- 待期期間は連続している必要はない。(断続していてもよい)
①訓練延長給付
イ 待期中の訓練延長給付(法24条1項、令4条)
公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等(2年以内のものに限る)を受けるために待期している者に対しては、当該待期している期間のうちの当該公共職業訓練等を受け始める日の前日までの引き続く90日間の期間内の失業している日について、所定給付日数を超えて基本手当が支給される。(受給期間もその分も延長される。)
ロ 受講中の訓練延長給付(法24条1項、令4条)
公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等(2年以内のものに限る。)を受講している場合には、当該公共職業訓練等を受け終わる日までの失業している日について所定給付日数を超えて基本手当が支給される。(受給期間もその分延長される)
ハ 受講後の訓練延長給付(法24条2項、令4条の2、特例法2条)
a 支給対象者
公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受け終わった者に対する訓練延長給付の支給対象者は次のいずれにも該当するものである。
イ 当該公共職業訓練等を受け終わる日における基本手当の支給残日数が30日に満たない者であること。
ロ 次のいずれかに該当すること
ⅰ 35歳以上60歳未満の中高年齢者であって、当該公共職業訓練等を受け終わってもなお職業に就くことができず、かつ、再就職を容易にするために公共職業訓練等を再度受けようとする者であると認めた者(そのものを受ける公共職業訓練等の期間の合計が2年を超えないものに限る)であること
ⅱ 当該公共職業訓練等を受け終わる日における支給残日数の基本手当の支給を受け終わる日(当該公共職業訓練等を受け終わる日までに支給残日数がない者にあったは、その日)までに職業につくことができる見込みがなく、かつ、特に職業指導その他再就職の援助を行う必要があると認められること
b 給付日数
30日から支給残日数を差し引いた日数を限度として所定給付日数が延長される。(受給期間もその分延長される)
- 訓練延長給付は、公共職業安定所長の指示した2年以内の公共職業訓練等を受講する場合に支給される。
- 受講届及び通所届を提出した受給資格者は、待期中又は受講中の訓練延長給付の支給を受けようとするときは、失業の認定を受ける都度、公共職業訓練等受講証明書を提出しなければならない。(則37条)
②広域延長給付(法25条、令5条)
イ 要件
厚生労働大臣は、関係都道府県労働局長又は公共職業安定所長に、広域職業紹介活動をすることを命じた場合において、当該広域職業活動の命令に係る地域について、政令で定める基準に照らして必要があると認めるときは、その指定する期間内に限り、公共職業安定所長が当該広域職業紹介活動により職業のあっせんを受けることが適当であると認定する受給資格者について広域延長給付を行うことができる。
- 広域延長給付が行われるのは、その公共職業安定所の管轄区域内における基本手当の受給率が、全国の基本手当の受給率の2倍以上となり、かつ、その状態が継続すると認められる場合である。
- 広域延長措置の決定がされた日以後において、他の地域から当該措置に係る地域に移転した受給資格者は、当該措置に基づく基本手当の支給を受けようとするときは、管轄公共職業安定所に出頭し、その移転について特別の理由がある旨を申し出なければならない。(則40条1項)また当該移転について特別の理由がないと認められた場合は、広域延長給付は行われない。(特別な理由がある場合には支給されることがある)
ロ 給付日数
90日を限度に所定給付日数を超えて基本手当が支給される。(受給期間もその分延長される)
- 広域職業紹介活動命令の実施期間が終了した場合や、広域延長措置の指定期間の末日が到来した場合は、広域延長給付の支給終了前であっても給付は打ち切られる。(行手)
③全国延長給付(法27条、令6条)
イ 要件
厚生労働大臣は失業の状況が全国的に著しく悪化し、連続する4月の期間の失業の状況が一定の規準に該当するに至った場合において、受給資格者の就職状況からみて必要があると認められるときは、その指定する期間内に限り、全国延長給付を行うことができる。
- 全国延長給付が行われるのは連続する4箇月の全国の基本手当の受給率が4%を超え、それが低下する傾向がなく、かつ、その状況が継続すると認められる場合である。(令6条)
ロ 給付日数
90日を限度に所定給付日数を超えて基本手当が支給される。(受給期間もその分延長される)
- 全国延長措置の指定期間の末日が到来したときは、支給終了前であっても給付は打ち切られる。(行手)
- 厚生労働大臣は、全国延長措置を決定した後において、失業の状況が改善されない場合には、当初の指定期間を延長することができる。 (法27条2項、令7条)
④延長給付に関する調整(法28条)
一人の受給資格者に延長給付が重複して行われる場合には、優先度の高い延長給付から順次行われることになる。
第1順位 広域延長給付
第2順位 全国延長給付
第3順位 訓練延長給付
(例)
全国延長給付を受けている受給資格者について、広域延長給付を行うことになった場合のように、優先度の高い延長給付を中途で行うことになったときは優先度の低い延長給付は一時支給されないことになり、優先度の高い延長給付が終わり次第引き続いて優先度の低い延長給付が行われることになる。(従って、延長給付の日数が90日を超えることもある)
⑤延長給付を受けている場合の給付制限(法29条)
訓練延長給付(訓練終了後の延長給付に限る)、広域延長給付、全国延長給付を受けている受給資格者が、正当な理由がなく、公共職業安定所長の紹介する職業に就くこと、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けること又は公共職業安定所が行うその者の再就職を促進するために必要な職業指導を受けることを拒んだときは、その拒んだ日以後基本手当は支給されない。(その後新たに受給資格を取得したときは、新たな受給資格に基づく基本手当は支給される)
- 待期中又は受講中の訓練延長給付を受けている受給資格者については、法32条の規定に基づく給付制限が行われる。(行手)
(6)基本手当の支給方法及び支給期日
①基本手当の支給方法(法30条1項、則43条)
基本手当は、原則として、4週間に1回、失業の認定を受けた日分が支給される。ただし、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者に係る基本手当は1月に1回支給される。
②基本手当の支給手続(則44条、45条)
受給資格者は、基本手当の支給を受けようとするときは、口座振込によって基本手当の支給を受ける場合を除き、支給日に管轄公共職業安定所に出頭し、受給資格者証を提出しなければならない。(実際は金融機関への振込により支給される。)
- 受給資格者は、その者の申出によりそのものに対する基本手当の支給をその者の預金又は貯金への振り込みの方法によって受けることができる。なお、この場合の申出は、払渡希望金融機関指定届に受給資格者証を添えて管轄公共職業安定所長に提出することによって行わなければならない。(則145条)
- 受給資格者(口座振込受給資格者を除く)が疾病、負傷、就職その他やむを得ない理由によって、支給日に管轄公共職業安定所に出頭することができないときは、その代理人が当該受給資格者に支給されるべき基本手当の支給を受けることができる。この場合において、代理人は、その資格を証明する書類に受給資格者証を添えて管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。(則46条)
(7)未支給の基本手当の請求手続
受給資格者が死亡したため失業の認定を受けることができなかつた期間に係る基本手当の支給を請求する者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該受給資格者について失業の認定を受けなければならない。
- 死亡者に係る公共職業安定所長がやむを得ない理由があると認めるときは、未支給給付請求者の代理人が死亡者に係る公共職業安定所に出頭し、その資格を証明することができる書類を提出した上、死亡した受給資格者について失業の認定を受けることができる。(則47条)
- 死亡した受給資格者が,失業の認定に係る期間中に自己の労働によって収入を得ていた場合には、未支給給付請求者は、当該収入の額その他の事項を公共職業安定所長に届け出なければならない。
- 当該規定は傷病手当、高年齢求職者給付金、特例一時金、日雇労働求職者給付金についても準用される。
(8)基本手当の給付制限
①職業に就くこと等を拒んだことによる給付制限(法32条1項)
受給資格者が公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだときは、その拒んだ日から起算して1箇月間は、基本手当は支給されない。
- 次のいずれかに該当する場合には上記の給付制限は行われない。
① 紹介された職業又は公共職業訓練等を受けることを指示された職種が、受給資格者の能力からみて不適当と認められるとき
② 就職するため、又は公共職業訓練等を受けるため、現在の住所又は居所を変更することを要する場合において、その変更が困難であると認められるとき
③ 就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準に比べて不当に低いとき
④ 職業安定法20条の規定に該当する労働争議中の事業所(同盟罷業又は作業所閉鎖の行われている事業所)に紹介されたとき
⑤ その他正当な理由があるとき
②職業指導を受けることを拒んだことによる給付制限(法32条2項)
受給資格者が正当な理由がなく、公共職業安定所が行うその者の再就職を促進するために必要な職業指導を受けることを拒んだときは、その拒んだ日から起算して1箇月を超えない範囲内において公共職業安定所長の定める期間(1箇月)は、基本手当は支給されない。
- 待期中の訓練延長給付又は公共職業訓練等受講中の訓練延長給付を受けている受給資格者については、①、②が適用されるが、公共職業訓練等終了後の訓練延長給付、広域延長給付又は全国延長給付を受けている受給資格者が正当な理由がなく、職業紹介の拒否等をした場合は、その拒んだ日以後の延長給付は打ち切られる。(法29条)
- 待期期間中に①、②の給付制限を行うべき理由が生じた場合は、その拒んだ日から1箇月間給付制限が行われ、かつ、その期間の経過後において待期の残期間が満了するまで基本手当は支給されない。(通達)
③離職理由による給付制限(法33条)
被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合には、待期期間の満了後1箇月以上3箇月以内の期間で公共職業安定所長の定める期間(原則3箇月間)は、基本手当は支給されない。
- 上記の規定にかかわらず、公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等(特定職業訓練等を除く)を受ける期間及び当該公共職業訓練等(特定職業訓練等を除く)を受け終わった日後の期間については、基本手当は支給される。(離職理由による給付制限の解除)
- 公共職業訓練を受ける場合の特例により特例受給資格者に支給される基本手当については、上記の離職理由による給付制限の解除は適用されない。(法41条1項)
- 離職理由による給付制限が行われる場合には、当該給付制限期間に7日を超え30日以下の範囲内で厚生労働省令で定める日数(21日)及び所定給付日数に相当する日数を加えた期間が1年(所定給付日数が360日である就職困難者たる受給資格者にあっては、1年に60日を加えた期間)を超えるときは、当該超える期間分、受給期間が延長される。これを離職理由による受給期間の延長という。この場合には受給期間が4年間に延長されていてもさらにこの期間も延長されることになるので、受給期間が4年を超えるということもあり得る。なお、当該延長が行われるために、受給資格者が申し出る等の特別な手続きは必要ない)
(例) 所定給付日数が300日の者が8月1日に受給資格の決定を受け、同月7日に待期を満了し、翌日から3月間(92日間)、離職理由による給付制限を受けた場合
→ 92日+21日+300日が1年(365日)を超えるので、365-(92+21+300)=48日受給期間が延長される。 - 受給資格者が、受給期間中に再就職した後、正当な理由がなく自己の都合により当該再就職先をその受給期間中に離職した場合は次のようになる。
① 当該再就職先からの離職により新たな受給資格を取得した場合は、離職理由による給付制限が行われる。
② 当該再就職先からの離職により新たな受給資格を取得しなかった場合は、はじめの離職理由による給付制限期間中でない限り、離職理由による給付制限は行われない。
④偽りその他の不正行為による給付制限(法34条)
偽りその他の不正行為により求職者給付又は就職促進給付の支給を受け、又は受けようとした場合にはこれらの給付の支給を受け、又は受けようとした日以後、基本手当は支給されない。なおその後再就職し新たに受給資格を取得した場合には、その後新たに取得した受給資格に基づく基本手当は支給される。
- 上記の規定にかかわらず、やむを得ない理由がある場合には基本手当の全部又は一部が支給されることもある。
- 算定基礎期間の算定においては、当該給付制限により受給資格に基づき基本手当の支給を受けることができる日数の全部について基本手当の支給を受けることができなくなった場合にあっても、基本手当の支給があったものとみなされる。従って、当該受給資格に係る被保険者であった期間が算定対象期間に通算されることはない。
- 当該規定は、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当、高年齢求職者給付金、特例一時金についても準用される。