雇用保険の被保険者(雇用保険法第4条1項)
(1)雇用保険被保険者の定義
雇用保険の適用事業に雇用される労働者であって、法6条各号の適用除外となる者以外の者をいう。
(2)具体例
① 個人事業主
被保険者となることはない。
② 代表取締役
原則として被保険者とならないが、親会社との雇用関係を存続させたまま、子会社へ代表取締役として出向した場合に、親会社との雇用関係において被保険者となる。
③ 法人の取締役・合名会社・合資会社の社員・理事等
原則として被保険者とならないが、代表取締役・理事長、専務取締役・常務取締役、専務理事・常務理事など役付き以外の取締役であって同時に会社の部長・支部長・工場長等従業員としての身分を有し、労務の提供に対して給料が支給され労働者的性格が強い場合(兼務役員)は被保険者となる。
- 具体的には以下の要件を満たす場合は兼務役員として雇用保険の被保険者となる。
① 一般の取締役等であること
② 労働者としての実態があること
③ 役員報酬よりも労働者としての賃金が多いこと - 兼務役員の雇用保険の資格取得時、または一般社員が兼務役員となった時には、「兼務役員雇用実態証明書等」を所轄職業安定所長に提出する必要がある。具体的な書類等は以下の通りとなる。
①雇用保険被保険者資格取得届(兼務役員として新たに雇用する場合)または雇用保険被保険者資格取得確認通知書(事業主通知用)および雇用保険被保険者氏名変更・資格喪失届(一般社員が兼務役員となった場合・受付処理時に兼務役員承認済と表示をされる)
②兼務役員雇用実態証明書
③兼務役員における役員報酬等証明書(役員報酬規定が作成されており、その規程通りに役員報酬が支払われている場合は不要)
④登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
⑤役員報酬規程(ない場合は③が必要)の写し
⑥労働者名簿(人事記録カードや社員名簿)の写し
⑦出勤簿もしくはタイムカード(過去3か月分)の写し
⑧賃金台帳もしくは給与明細(過去3か月分)の写し
⑨人事組織図(役員就任直後のもの)の写し
⑩定款の写し
⑪役員就任時の議事録の写し
⑫雇用保険適用事業所台帳 等 - 兼務役員となった場合、役員報酬部分については雇用保険料はかからない。(役員報酬部分については基本手当の基礎とならない)
④ 監査
原則として被保険者とはならないが、名目的に監査に就任しているにすぎず、常態的に従業員としての雇用関係がある場合には被保険者となる。
⑤ 昼間学生
原則として被保険者とはならないが、次のいずれかに該当する場合は被保険者となる。
イ 卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続きその事業所に勤務する予定の者
ロ 休学中の者又は学校が一定の出席を課程終了の要件としないことが明らかである者(これらの事実についての学校当局の証明書があるときに限る)であって、当該事業において同種の業務に従事する通常の労働者と同様に勤務し得ると認められる者
- 次の者は昼間学生ではないので被保険者となる。
ⅰ 通信教育を受けている者
ⅱ 大学の夜間部の過程の者
ⅲ 高等学校の夜間又は定時制の過程の者 - 専修学校、各種学校の学生であって、授業時間、過程の内容等より見て昼間学生と同様の状態にあると認められる者については、昼間学生と同様に取り扱われる。
⑥ 生命保険の外交員等
原則として被保険者とならないが、その職務の内容、服務の実態、給与の算出方法等から総合的に、雇用関係が明確に認められる者は被保険者となる。
⑦ 家事使用人
原則として被保険者とならないが、適用事業の事業主に雇用され、主として家事以外の労働に従事することを本来の職務とする者は、家事に使用されることがあっても例外的に被保険者となる。
⑧ 同居の親族
原則として被保険者とならないが、次の要件をすべて満たす場合は被保険者となる。
イ 事業主の指揮命令に従っていることが明らかであること
ロ 就業の実態が当該事業所におけるほかの労働者と同様であり、賃金もまたこれに応じて支払われていること、特に①始業及び就業の時刻、休憩時間、休日、休暇等②賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切及び支払いの時期等について就業規則その他これに準ずるものこれに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること
ハ 取締役等事業主と利益を一にする地位にはないこと
- 具体的には取得届を提出する際に「同居の親族雇用実態証明書」を所轄公共職業安定所に提出して判断を受けることとなる。
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⑨ 長期欠勤者
労働者が長期欠勤している場合であっても、当該事業主との間で雇用関係が存続する限り、賃金の支払いを受けているかいないかにかからわず被保険者となる。
⑩ 短時間就労者
短時間就労者とは、その者の1週間の所定労働時間が、同一の適用事業に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間よりも短く、かつ、40時間未満である者をいう。短時間就労者は、その者の労働時間、賃金その他の労働条件が就業規則、雇用契約書、雇入通知書等に明確に定められている場合であって、次のいずれにも該当するときに限り被保険者となる。
イ 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
ロ 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること(平成22年4月1日から6か月以上の雇用見込より拡大)
⑪ 派遣労働者
登録型派遣労働者は次のいずれにも該当する場合に被保険者となる。
イ 反復継続して派遣就業するものであること(具体的には次のいずれかに該当する場合であること、その場合派遣先が変わっても差し支えない)
ⅰ 一の派遣事業主に1年以上引き続き雇用されることが見込まれるとき
ⅱ 一の派遣事業主との間の雇用契約が1年未満であっても雇用契約と次の雇用契約の間隔が短く、その常態が通算して1年以上続く見込みがあるとき
ロ 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 一般労働者派遣事業(登録型の労働者派遣事業)に雇用される労働者のうち常時雇用される労働者及び特定労働者派遣事業(常用型の労働者派遣事業)に雇用される労働者は一般の労働者と同様に扱われる。
- 当初の雇入れ時に31日以上反復雇用することが見込まれない場合であっても、その後の就労実績等から考えて31日以上反復して雇用することが見込まれる場合には、その時点から雇用保険が適用される(被保険者となる)
⑫ 臨時内職的に雇用される者
臨時内職的に雇用される者は次のいずれにも該当するときは被保険者とならない。
イ その者の受ける賃金をもって家計の主たる部分をまかなわない者(家計補助的な者)
ロ 反復継続して就労しない者であって、臨時内職的に就労するに過ぎない者
⑬ 国外で就労する者
適用事業に雇用される労働者が事業主の命により日本国内の領域外において就労する場合であっても、事業主との雇用関係が存続している限り被保険者となる。
- 外国で就労する被保険者が、外国の失業補償制度の適用を受けるに至っても被保険者資格を喪失しない。
- 現地で採用されている者は国籍の如何にかかわらず被保険者とならない。
⑭ 2以上の適用事業に雇用される者
同時に2以上の雇用関係にある労働者については原則としてその者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみ被保険者となる。
- 在籍出向(事業主との雇用関係を存続したまま他の事業主に雇用されること)、在籍専従(事業主との雇用関係を存続したまま労働組合の専従役職員となること)により同時に2以上の雇用関係を有することとなった者についてもその者が主たる賃金を受ける一の雇用関係についてのみその被保険者資格を認めることとなるが、その者につき、主たる雇用関係がいずれにあるかの判断が困難であると認められる場合又はこの取扱いによって雇用保険の取扱い上、引き続き同一の事業主の適用事業に雇用されている場合に比べ著しく差異が生ずると認められる場合には、その者の選択するいずれか一の雇用関係について被保険者資格を認めることとして差し支えない。
⑮ 在日外国人
日本国に在住する外国人は、外国公務員及び外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された者を除き、国籍の如何を問わず被保険者となる。ただし、外国人であって被保険者となるべき者のうち、外国において雇用関係が成立した後日本国内にある事業所に赴き勤務している者については、雇用関係が終了した場合、又は雇用関係が終了する直前において帰国するのが通常であって、受給資格を得ても失業等給付は受け得ないので、これらの者については被保険者とされない。
⑯ 授産施設の作業員
生活保護法に基づく授産施設(身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている者、雇用されることが困難な者等に対して、就労又は技能の習得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする社会福祉施設をいう)の要保護者である作業員は原則として被保険者とされない。
⑰ 農業協同組合・漁業協同組合等の役員等
農業協同組合・漁業協同組合の役員及び法人格のない社団若しくは財団の役員は、雇用関係が明らかでない限り被保険者とならない。
(3)被保険者の種類
①一般被保険者
高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の被保険者
②高年齢継続被保険者
被保険者であって、同一の事業主の適用事業に65歳に達した日の前日から引き続いて65歳に達した日以後の日において雇用されている者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者に該当する者を除く)
③短期雇用特例被保険者
被保険者であって、季節的(4か月を超える場合)に雇用される者(日雇労働被保険者に該当する者を除く)
④日雇労働被保険者
被保険者である日雇労働者(日々雇用される者又は30日以内の期間を定めて雇用される者)
- 65歳に達した日以後に新たに雇用された者は、短期雇用特例被保険者又は日雇労働被保険者となることはあるが一般被保険者又は高年齢継続被保険者となることはない。