傷病手当(雇用保険法第37条)
(1)支給要件(法37条1項、2項)
傷病手当は、次の要件を満たす受給資格者に対し、基本手当に代え、傷病の認定を受けた日について支給される。
① 離職後公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをしていること
② 求職の申込後に疾病又は負傷のために、継続して15日以上職業に就くことができなかったこと
- 疾病又は負傷のために公共職業安定所に出頭することができない場合において、その期間が継続して15日未満のときは、証明書により失業の認定を受け基本手当の支給を受けることができるので、傷病手当は支給されない。
- 傷病のため職業につくことができない状態が、受給資格にかかわる離職前から継続している場合又はこのような状態が離職後に生じたものであっても公共職業安定所に出頭し求職の申込みをする前に生じ、その後も継続しているものであるときは、傷病手当は支給されない。ただし、受給期間の延長は所定の要件を満たせば可能である。(行手)
- 受給期間の延長申請をした後に、同一の傷病を理由として傷病手当の支給を申請した場合には、受給期間の延長の措置が取り消され、所定給付日数の支給残日数及び受給期間までの日数の範囲内で傷病手当が支給される。(行手1)
- 傷病手当は高年齢受給資格者、特例受給資格者、日雇受給資格者に対しては支給されない。
- 傷病手当は延長給付に係る基本手当を受給中の受給資格者については支給されない。
- 基本手当と傷病手当が同一の日に支給されることはない。
(2)支給額(法37条3項)
傷病手当の額は、1日につき基本手当に相当する額である。
(3)支給日数(法37条4項)
傷病手当の支給日数は、所定給付日数から当該受給資格に基づき既に基本手当を支給した日数を差し引いた日数が限度となる。
- 傷病手当を支給したときは、雇用保険法の規定(返還命令等(法10条の3)及び不正受給による給付制限(法34条)の規定を除く)の適用については、当該傷病手当を支給した日数分の基本手当を支給したものとみなすこととされている。
(4)受給手続(法37条7項)
① 傷病の認定(則63条1項、2項)
傷病の認定は、傷病手当の支給要件に該当する者が、当該職病につくことができない理由がやんだ後における最初の支給日(口座振込受給資格者にあっては、支給日直前の失業の認定日、支給がないときは受給期間の最後の日から起算して1箇月を経過した日)までに受けなければならない。ただし、天災その他傷病の認定を受けなかったことについてやむを得ない理由があるときは、当該やむを得ない理由がやんだ日の翌日から起算して7日以内に傷病の認定を受けなければならない。傷病の認定を受けようとする者は、傷病手当支給申請書に受給資格者証を添えて管轄公共職業安定所長に提出しなければならない。(正当な理由があるときは、受給資格者証を添えないことができる)
- 傷病の認定手続は郵送によって行うことも代理人によって行うこともできる。また、口座振込にしていない場合の傷病手当の受給も代理人によって行うことができる。(行手)
② 傷病手当の支給日
傷病手当は、傷病の認定を受けた日分を、当該職業に就くことができない理由がやんだ後最初に基本手当を支給すべき日(当該職業につくことができない理由がやんだ後において基本手当を支給すべき日がない場合には、公共職業安定所長の定める日)に支給される。
- 従って、基本手当の場合と同様、通常は傷病の認定日と傷病手当の支給日は同一日となる。
- 長期傷病者(疾病又は負傷のために職業に就くことができない期間が引き続き1箇月を超えるに至った者)については、その者の申出により、管轄公共職業安定所長の定める日に傷病手当の支給を受けることができる。(行手)
(5)傷病手当の不支給(法37条5項、8項、9項)
傷病手当は次に掲げる日には支給されない。
① 給付制限期間中の日
② 疾病又は負傷の日について次の給付を受けることができる日(受給していようがいまいが関係ない)
a 健康保険法45条の規定による傷病手当金
b 労働基準法76条の規定による休業補償
c 労働災害補償保険法の規定による休業(補償)給付
d その他これらに相当する給付(船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員共済組合法等による傷病手当金等)
③ 待期期間中の日
- 傷病手当金等の額が傷病手当の額を下回る場合に、傷病手当の差額支給が行われるわけではない。(全額支給されない)
- 傷病手当金等の支給申請をしない場合であっても傷病手当は支給されない。(受給権者本人が選択する余地はない)(通達)
- 交通事故により自動車損害賠償保障法に基づく保険金の支給を受けることができる受給資格者に対しても傷病手当は支給される。(通達)
- 休業(補償)給付の待期期間については、所定の要件を満たせば傷病手当は支給される。(通達)
(6)証明認定及び受給期間の延長と傷病手当の関係
- 受給資格者が公共職業安定所に出頭し、求職の申込みを行う以前から傷病により職業に就くことができない状態にある場合は、傷病手当の支給の対象とならないが、傷病により職業に就くことができない期間が引き続いて30日以上である場合は、受給期間の延長の申出をすることもできる。(傷病手当金の支給の選択も可能)
- 疾病又は負傷のため基本手当の受給期間を延長した場合であったも、その後傷病手当を受給したときは、受給期間の延長は当初からなかったものとみなされる。(行手)
(7)基本手当規定の準用(法37条9項)
具体的には次のようになる。
① 自己の労働による収入があった場合は、基本手当と同様に減額支給される。
② 受給資格者が死亡したため、傷病の認定を受けることができなかった期間に係る傷病手当の支給を請求する者は、当該受給資格者についての傷病の認定を受けなければならない。
③ 偽り不正の行為により求職者給付若しくは就職促進給付を受給し、又は受給しようとした者には、原則として、受給し、又は受給しようとした日以後傷病手当は支給されない。