就業促進手当


就業促進手当(雇用保険法第56条の2)

就業促進給付のうち、失業者の再就職の促進と支援が目的とした就業促進手当には、非常用就職についた者に支給される就業手当、常用就職についた者について支払われる再就職手当就業定着促進手当、就業困難者が常用就職した場合に支払われる常用就職支度手当がある。

  • 常用就職支度手当は受給資格者のみだけではなく特例受給資格者又は日雇労働受給資格者にも支給される。
  • 偽りその他不正の行為により求職者給付又は就職促進給付の支給を受け、又は受けようとした者には、これらの給付の支給を受け、又は受けようとした日以後、就職促進給付は支給されない。ただし、やむを得ない理由がある場合には、就職促進給付の全部又は一部を支給することができるとされている。
  • 偽りその他不正行為によって給付の支給を受け、または受けようとした日以後新たに受給資格又は特例受給資格を取得した場合には、その受給資格又は特例受給資格に基づく就職促進給付は支給される。

(1)就業手当(法56条の2、則82条、82条の5)

① 支給要件

就業手当は、次のすべての要件を満たす場合に支給される。

a 職業に就いた受給資格者であって、厚生労働省令で定める安定した職業に就いた者ではないこと(職業に就き、又は事業を開始した受給資格者であって、再就職手当の支給対象とならない者=常用雇用等以外の形態で就業した受給資格者であること)

b 就職日の前日における基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ、45日以上、であること

c 受給資格者にかかわる離職について離職理由による給付制限を受ける者については、待期期間の満了後1箇月の期間内については、公共職業安定所の紹介により就職したものであること

d 雇入れることを約した事業主が受給資格の決定にかかわる求職の申込みをした日前にある場合において、当該事業主に雇用されたものでないこと

e 離職前の事業主又は資本、資金、人事、取引などの状況からみて離職前の事業主と密接な関係にある事業主に再び雇用されたものでないこと

f 待期期間の経過後に職業に就き、又は事業を開始したこと

◎ 支給残日数とは?

原則として、所定給付日数から、同一の受給資格に基づいて既に基本手当の支給を受けた日数又は傷病手当、就業手当、、再就職手当の支給を受けたことにより基本手当の支給を受けたものとみなされた日数差し引いた日数をいう。なお、所定給付日数から既に支給した基本手当又は傷病手当の日数を差し引いた日数が就職日(給付制限期間中に就職した場合については、当該給付制限期間の末日の翌日)から受給期間の最後の日までの日数を超えるときは、就職日(給付制限期間の末日から翌日)から受給期間の最後の日までの日数が支給残日数となる。

  • 就業手当を受給した後であっても、支給要件を満たせば再就職手当又は常用就職支度金の支給を受けることができる。また、再就職手当受給後に新たに受給資格を得ることなく再離職した場合にも、支給要件を満たせば就業手当を受けることができる。
  • 自己の労働によって収入を得た場合については、労働する者にとって主たる活動はあくまで求職活動であり、求職活動を妨げない範囲で行われるに過ぎないことから、自己の労働によって得た収入額を減額した上で基本手当が支給されることとなり、就業手当の対象とはならない。(行手)
  • 就職拒否、受講拒否又は指導拒否による給付制限又は離職理由による給付制限の給付制限期間中の受給資格者は早期に就業を開始することにより給付制限期間中であっても就業手当を受給できるが、就業手当受給後、当該給付制限期間中に再び離職した場合であっても給付制限が解除されるわけではないので、就業していない日について当該給付制限期間中は基本手当の支給は行われない。 (同前)

② 支給額

就業手当の額は、現に職業に就いている日(当該職業に就かなかったこととした場合における同日から当該就業手当に係る基本手当の受給資格に係る基本手当の受給期間の最後の日までに基本手当の支給を受けることができることとなる日があるときに限る)について、基本手当日額10分の3を乗じて獲た額とする。

※1日当たりの支給額の上限は、1,747円(60歳以上65歳未満は1,416円) 平成26年8月1日以後

③ 支給申請手続(則82条の5)

就業手当の支給を受けようとする受給資格者は、失業の認定日(離職理由による給付制限により基本手当を支給しないこととされる期間中の就業については、当該給付制限期間経過後の最初の失業の認定日)に、就業手当支給申請書に受給資格者証を添えて管轄公共職業算定所長に提出しなければならない。ただし、当該失業の認定日に現に職業に就いている場合は、次の失業の認定日の前日までに提出することで差し支えない。

  • 就業手当支給申請書には、受給資格者証のほか、給与に関する明細その他の終業の事実を証明することができる書類を添えなければならない。また、一の労働契約の期間が7日以上であるときは、労働契約書その他の労働契約の期間及び所定労働時間を証明することができる書類を添えなければならない。

④ 支給の効果

就業手当が支給された日については基本手当が支給されたものとみなされる。

(2)再就職手当(法56条の2、57条、則82条、82条の2、82条の4、82条の7)

① 支給要件

再就職手当は、次のすべての要件を満たす場合に支給される。

a 厚生労働省令で定める安定した職業に就いた受給資格者であること(1年を超えて引き続いて雇用されることが確実であると認められる職業に就き、又は事業(当該事業により当該受給資格者が自立することができると公共職業安定所長が認めた者に限る)を開始した受給資格者であって、再就職手当を支給することが当該受給資格者の職業の安定に資すると認められるものであること)

b 就職日の前日における基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ、45日以上、であること

c 受給資格者にかかわる離職について離職理由による給付制限を受ける者については、待期期間の満了後1箇月の期間内については、公共職業安定所の紹介により就職したものであること

d 雇入れることを約した事業主が受給資格の決定にかかわる求職の申込みをした日前にある場合において、当該事業主に雇用されたものでないこと

e 離職前の事業主又は資本、資金、人事、取引などの状況からみて離職前の事業主と密接な関係にある事業主に再び雇用されたものでないこと

f 待期期間の経過後に職業に就き、又は事業を開始したこと

g 就職日前3年以内の就職について就業促進手当(就業手当を除く)の支給を受けたことがないこと

h 同一の就職について、高年齢再就職給付金の支給を受けていないこと

  • 就業手当や再就職手当は、待期期間中に雇入れを約した事業主に雇用された場合に支給されなくなるわけではない。(待期は求職の申込み後であるため)
  • 再就職手当は、短時間労働被保険者となった場合でも支給される。なお、再就職手当を受給するためには、雇用保険の適用事業の事業主に雇用されることを要する。
  • 再就職手当は、雇用保険の適用事業主とならない場合であっても、自立したと認められる事業を開始した場合には支給される。

② 支給額

再就職手当の額は、基本手当日額支給残日数に相当する日数100分の50を乗じて得た数を乗じて得た額とする。(支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の場合は100分の60

③ 支給申請手続

再就職手当の支給を受けようとする者は、安定した職業に就いた日の翌日から起算して1箇月以内に、再就職手当支給申請書に受給資格者証を添えて管轄公共職業算定所長に提出しなければならない。

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④ 支給の効果

再就職手当が支給されたときは、その額に相当する日数分の基本手当が支給されたものとみなされる。

  • 再就職手当の支給を受けて就職した者が再び失業した場合には、受給期間内において基本手当の支給残日数から再就職手当の額に相当する日数分を差し引いた日数分の支給が行われる。(行手)

⑤ 受給期間延長の特例

再就職手当の支給を受けた者であって、再離職の日が当該再就職手当に係る基本手当の受給資格に係る基本手当の受給期間内にあり、当該再離職が倒産・適用事業の廃止若しくは縮小、解雇等による者(特定就業促進手当受給者=再就職して、再就職手当を受給したが、再就職先がすぐ倒産するなどして失業した者)については、次のような受給期間延長の特例がある。(基本手当の日数が増えるわけではない)

イに掲げる期間がロに掲げる期間を超えるときは、当該特定就業促進手当受給者の基本手当の受給期間は、本来の規定による期間に当該超える期間を加えた期間とする。

イ 再就職手当に係る基本手当の受給資格に係る離職の日の翌日から再離職(当該再就職手当の支給を受けた後の最初の離職(新たに受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得した場合における離職を除く)をいう)の日までの期間に次のa及びbに掲げる日数を加えた期間

a) 20日以下の範囲内で厚生労働省令で定める日数(14日(則85条の2))

b) 当該再就職手当に係る職業に就いた日の前日における支給残日数から基本手当を支給したものとみなされた日数を差し引いた日数

ロ) 当該職業に就かなかったこととした場合における当該受給資格に係る受給期間。

(例)
支給残日数:100日、支給対象日数:40日分(再就職手当の支給率:10分の4)
再就職手当に係る受給資格のA社離職日:平成27年10月20日
再就職先のB社倒産による再離職日:平成27年8月31日(就職日は4月1日)

B社を離職してからの受給期間があと50日しかない。→14日+60日を延長する。

(3)就業定着促進手当

① 支給要件

再就職手当の支給を受けた者が、引き続きその再就職先6か月以上雇用され、かつ再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下していること

  • 起業により再就職手当を受給した場合には、「就業促進定着手当」は受けられない。
  • 就業促進定着手当の受給後に、離職し失業状態になった場合は、再就職手当と就業促進定着手当を除く残日数分の基本手当を受給できる場合がある。

② 支給額

(離職前の賃金日額-再就職手当の支給を受けた再就職の日から6か月間に支払われた賃金額の1日分の額)×再就職の日から6か月間内における賃金の支払いの基礎となった日数※
(基本手当日額×基本手当の支給残日数に相当する日数×40%を上限とする)

※通常月給制の場合は暦日数、日給月給制の場合はその基礎となる日数、日給制や時給制の場合は労働の日数

  • 離職前の賃金日額の上限額(平成26年8月以後分)
    30歳未満 12,780円
    30歳以上45歳未満 14,200円
    45歳以上60歳未満 15,610円
    60歳以上65歳未満 14,910円
  • 離職前の賃金日額の下限額は年齢にかかわらず2,300円となる。

③ 受給手続き

就業促進定着手当の支給を受けようとする者は、再就職した日から6か月経過した日の翌日から2か月間以内に就業促進定着手当支給申請書を再就職手当の支給申請を行った職業安定所長に提出しなければならない。

  • 申請の際には以下の書類を添付する必要がある。
    ①雇用保険受給資格者証
    ②就職日から6か月間(※)の出勤簿の写し(事業主から原本証明を受けたもの)
    ③就職日から6か月間(※)の給与明細又は賃金台帳の写し(事業主から原本証明を
    受けたもの)

(4)常用就職支度手当(法56条の2、則82条、82条の3、83条の2、84条)

① 支給要件

常用就職支度手当は、次のすべての要件を満たす場合に支給される。

a 次のいずれかに該当する者(受給資格者等)であって、身体障害者その他の就職が困難な者として厚生労働省令で定めるものであること

イ 受給資格者(当該職業に就いた日の前日における基本手当の支給残日数が当該受給資格に基づく所定給付日数の3分の1未満又は45日未満(最低でも1日はあること)である者に限る)

ロ 特例受給資格者(特例一時金の支給を受けた者であって、当該特例受給資格に係る離職の日の翌日から起算して6箇月を経過していないものを含む)

ハ 日雇受給資格者

b 厚生労働省令で定める安定した職業に就いた受給資格者等であること(1年以上引き続き雇用されることが確実であると認められる職業に就いた受給資格者等であって、常用就職支度手当を支給することが当該受給資格者等の職業の安定に資すると認められるものであること)

c 公共職業安定所又は職業紹介事業者の紹介により就職したものであること

d 給付制限を受ける者については、給付制限の期間が経過した後に職業に就いたこと

e 離職前の事業主又は資本、資金、人事、取引などの状況からみて離職前の事業主と密接な関係にある事業主に再び雇用されたものでないこと

f 待期期間の経過後に職業に就き、又は事業を開始したこと

g 就職日前3年以内の就職について就業促進手当(就業手当を除く)の支給を受けたことがないこと

◎ 身体障害者その他の就職が困難な者として厚生労働省令で定めるものとは?

就職困難者(身体障害者等)のほか、次に該当する者をいう。

① 45歳以上の受給資格者であって、雇用対策法に基づく再就職援助計画等の対象労働者等
② 季節的に雇用されていた特例受給資格者であって、通年雇用安定給付金の支給対象となる事業主に通年雇用される者
③ 日雇労働被保険者として雇用されることを常態とする日雇受給資格者であって、就職日において45歳以上であるもの
④ 認定駐留軍関係離職者
⑤ 沖縄失業求職手帳所持者
⑥ 一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者
⑦ 石炭鉱業離職者求職手帳所持者

  • 常用就職支度手当は「1年以上」、再就職手当は「1年を超えて」引き続いて雇用されることが確実であると認められる職業に就いたことが必要である。従って、1年契約で雇用された場合、常用就職支度手当は支給の対象となるが、再就職手当の場合は、雇用契約が1年を超えて更新されることが確実であると認められる場合を除き、支給対象とされない。
  • 常用就職支度手当が支給されたことにより基本手当が支給されたものとみなされることはない。
  • 事業を開始した場合は、就業手当及び再就職手当は支給されることがあるが、常用就職支度手当が支給されることはない。
  • 常用就職支度金は必ず公共職業安定所又は職業紹介事業者の紹介によることが必要であるが、就業手当及び再就職手当は必ずしもそのようなことはない。従って、受給資格の決定に係る休職の申し込みをした日前に雇入れることを約した事業主に雇用された場合に支給されなくなるのは就業手当及び再就職手当である。
  • 常用就職支度金は給付制限期間中の支給はありえないが、就業手当及び再就職手当の場合はあり得る。
  • 就職日前3年以内の就職について再就職手当及び常用就職支度手当を受けたことがある場合は、再就職手当及び常用就職支度手当は支給されないが、就業手当は支給されることがある。
  • 離職前の事業主(関連事業主を含む)に再び雇用され場合又は待期期間中に職業に就いた場合は、いずれの就業促進手当も支給されない。
  • 短時間労働被保険者となった場合、再就職手当の場合は支給対象となるが、常用就職支度手当の場合は支給対象とされない。(行手)

② 支給額

常用就職支度手当の額は次の計算式による額となる。

a 所定給付日数が270日以上又は支給残日数が90日以上の場合

基本手当日額等×90×10分の4

b 所定給付日数が270未満かつ支給残日数が90日未満の場合

基本手当日額等×支給残日数(45を下回る場合には45)×10分の4

◎ 基本手当日額等とは?

受給資格者の場合は「基本手当日額」をいい、特例受給資格者の場合は「その者を基本手当の受給資格者とみなして基本手当日額に関する規定を適用した場合にその者に支給されることとなる基本手当の日額」をいい、日雇受給資格者については「日雇労働求職者給付金の日額」をいう。

  • 支給残日数が45日未満の者に支給される常用就職支度手当の額は、原則として基本手当日額等に18(45×0.4)を乗じて得た額となる。

③ 支給申請手続

常用就職支度手当の支給を受けようとする受給資格者等は、安定した職業に就いた日の翌日から起算して1箇月以内に、常用就職支度手当支給申請書に受給資格者証又は特例受給資格者証又は被保険者手帳を添えて、管轄公共職業安定所長(日雇受給資格者にあっては、安定した職業に係る事業所の所在地の所轄公共職業安定所長)に提出しなければならない。

 

 

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