出来高払制の保障給(労働基準法第27条)
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
労働時間に応じ一定額の賃金の保障とは?
労働時間に関係なく、単に1箇月についていくら保障するというようなものは厳密な意味では本条の保障給とは解されず、一時間につきいくらと定める時間給であることが必要である。ただし、月、週について定めた場合でも労働時間の長短に応じて増減されるようなものは、労働時間に応じたものとみなされる。
最低賃金額以上かどうかを確認する方法(出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合)
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較する。
労働者Aさんは、ある月の総支給額が245,000円であり、そのうち、歩合給が170,000円、時間外割増賃金が62,500円、深夜割増賃金が12,500円の場合。
なお、Aさんの会社の1年間における1箇月平均所定労働時間は月170時間、M月の時間外労働は10時間、深夜労働が5時間でした。東京都の最低賃金は、時間額888円(平成26年度)
Aさんの賃金が最低賃金額以上となっているかどうかは次のように調べる。
Aさんに支給された賃金から、最低賃金の対象とならない賃金を除く。
除外される賃金は、時間外割増賃金、深夜割増賃金であり、
245,000円-(62,500円+12,500円)=170,000円
この金額を月間総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額と比較すると、
170,000円÷180時間=944円>888円
となり、最低賃金額を上回ることになる。
- 労働者が一定時間労働を提供した場合には,例え出来高が少なかったとしても,その労働時間に応じて一定の賃金を必ず支払わなければならないということであり、例えば新規顧客の獲得のための営業部社員の賃金を固定給のない完全出来高払い制とし、新規顧客の獲得数に応じた賃金を支払うこととした場合で170時間労働をしたが、成果がなく、0円の賃金とすることはできない。
- 最低保障額をどのくらいに設定するべきかについては、労働基準法には特に明文化された規定はない。
通達では、「常に通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定めるようにすべきである」とされている。 - 上記の労働者Aさんの場合、170時間の労働をしたとするのであれば、最低賃金法の規定があるので、888円×150,960円は保障すべきである。
- 労働者が労働しなかった場合には、本条の保障給の支払義務はない。(通達)
歩合給の支払いをもって時間外労働および深夜労働の割増賃金に代えるための要件(最高裁判例)
①歩合給の金額が、実際の労働時間に応じて適切に増額されていること
②給与明細上、通常の労働時間の賃金と残業手当が明確に区別できること
歩合給の場合の残業手当の計算例
総労働時間200時間
所定労働時間176時間
残業時間24時間
基本給27万円、歩合給7万円
基本給部分1時間あたり 270,000円÷176時間=1,534.09円
歩合給部分1時間あたり 70,000円÷200時間=350円
基本給部分 1,534.09円×1.25×24時間=46,173円
歩合給部分 350円×0.25×24時間=2,100円
合計残業代 48,273円