解雇


解雇(労働基準法第18条の2から21条)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 等

(1)解雇の定義

労働契約を将来に向かって解約する使用者の一方的意思表示による労働契約の解除をいう。

  • 契約期間の満了による退職の場合、契約期間の満了によって労働関係が終了することが明らかである場合には解雇ではないので、例えば解雇予告をする必要も無いが、労働契約が反復更新されてきていたり、労働者が雇用継続について合理的な期待を有するような場合には、実質において期間の定めのない契約と認められる可能性が高く、そう判断されたときは、これを使用者の側から解除しようとすることは解雇に該当し、したがって、例えば解雇予告が必要となる。(通達)
  • 派遣労働者の場合、解雇に関しては、派遣元の使用者が規制の対象になるので、派遣先の使用者が、派遣労働者の解雇制限期間中に労働者派遣契約を解除したとしても、労働基準法に抵触するものではない。(通達)
  • 会社の採用通知が、労働契約締結についての承諾の意思表示ではなく、労働契約の予約であれば、未だ労働契約は有効に成立せず、従ってその後の採用取消通知は解雇ではない(通達) 

(2)解雇の無効

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とされる。これは裁判実務で確立された判例法理を明文化したものである。

整理解雇がやむを得ない事業の都合によるものといい得るためには次の要件を満たしていなければならない。(解雇権濫用法理)

①人員整理の必要性が在すること
②使用者が解雇回避のための努力をしたこと
③被解雇者の選定が合理的であること
④解雇の手続きが妥当であること

  • 転勤命令に業務上に必要性が在し、転勤が労働者に与える家庭生活上の不利益が転勤に伴い通常甘受すべき程度のものである場合に、転勤命令を拒否した者の懲戒解雇は有効である。

(3)解雇制限

①解雇制限の期間

使用者は、次の期間は労働者を解雇してはならない。

a 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間

※療養のため休業する必要が認められなくなって出勤した日又は出勤しうる状態に回復した日から起算

b 産前産後の女性が法65条の規定によって休業する期間及びその後30日間

  • 産後8週間を経過した日又は産後6週間経過後その請求により就労させている労働者についてはその就労を開始した日から起算
  • 労働者が業務上負傷し、休業している期間中でも、契約期間が満了した場合には、当該契約が反復継続されたものでない限り、労働者を辞めさせても本条違反ではない。(契約期間の満了は解雇ではないので、解雇制限の問題も生じない)(通達)
  • 業務上傷病により治療中であっても休業し、またその必要性が認められなければ解雇制限の規定は適用されない。また休業していたとしても、その後出勤した日(出勤しうる状態に回復した日)から起算して30日経過すれば、完全治癒していなくてもその段階で解雇については本条に抵触しない。(通達)
  • 障害補償受給後の外科後処置としての休業期間は、「療養のための休業期間ではないので、障害補償支給事由確定日から30日経過後は、解雇制限の問題は生じない。(通達)
  • 産前の休業の場合は、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)の休業が取れる期間であっても、その労働者が休業しないで就労している期間についての解雇は制限されない。(通達)
  • 出産予定日前6週間の休業を与えられた後においても分娩が出産予定日より遅れて休業している期間は労働基準法第65条の産前休業と解され、この期間は解雇が制限される。(通達)
  • 産後の休業は、出産当日の翌日から8週間が法定の休業期間であるから、これを超えて休業している期間は、8週間とその後30日を経過すれば解雇できる。また産後8週間を経過していなくても、6週間経過後就労(本人の請求に基づき、医者が支障が無いと認める業務に従事)している場合は、就労し始めた日から30日を経過すれば解雇することができる。(通達)
  • 育児・介護休業の期間は解雇制限されない。
  • 派遣労働者の派遣先の使用者は、当該派遣労働者について解雇制限期間中であっても当該労働者派遣契約を解除することができる。
  •  「休業」とは、労働契約関係が存続したまま労働者の労務提供義務が消滅することをいい、労働基準法第89条第1号の「休暇」に含まれる。「休暇」と「休業」とを厳密に区別する基準はないが、労働基準法第65条の産前産後の休業などの用語例をみると、「休暇」のうち連続して取得することが一般的であるものを「休業」としている。(通達)

②解雇制限の解除

次の場合には、解雇制限が解除される。

a 使用者が、労働基準法第81条の規定により打切補償を支払う場合(行政官庁の認定不要)

b 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合で行政官庁(所轄労働基準監督署長)の認定を受けた場合

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  • 事業の継続が不可能」とは、事業の全部又は大部分の継続が不可能になった場合のことであって、事業の一部を縮小しなければならなくなった場合は含まれない。(通達)
  • 次のようなものはやむを得ない事由に含まれない。
    ①事業主が経済法令違反のため強制収容され、又は購入した諸機械、資材等を没収された場合
    ②税金の滞納処分を受け、事業廃止に至った場合
    ③事業経営上の見通しの齟齬等、事業主の危険負担に属すべき事由に起因して、資材不足、金融難に陥った場合(個人企業で別途に個人資産を有するか否かは本条の認定には直接関係ない)
    ④従来の取引き事業場が休業状態となり、発注品が無く、そのために事業が金融難に陥った場合<

(4)解雇予告

労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日以上の平均賃金を支払わなければならない。また、予告の日数は1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することが出来る。

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解雇予告の要件

① 少なくとも30日前の予告
② 30日分以上の平均賃金の支払い
③ ①と②の併用

  • 解雇予告期間を計算する場合はの起算日は解雇予告を行った日の翌日となるので具体的には次のようになる。
    (例)解雇日→1月31日 解雇予告日→1月11日
    この場合はの起算日は、1月12日となり、解雇日までの日数は20日。
    解雇予告手当の額は、10日分の平均賃金となる。
  • 解雇の予告は、解雇しようとする日の少なくとも30日前に行うこととされているので、30日前でも50日前でも差し支えないが、解雇日については、「○年○月○日の終了をもって貴殿を解雇する」等と特定しておかなければならない。
  • 30日間は労働日でなく暦日で計算されるので、その間に休日又は休業日があっても延長されない。したがって、例えば10月31日に解雇する(その日の終了をもって解雇の効力を発生させる。=11月1日を解雇の効力発生日とする)ためには、遅くとも10月1日には、解雇の予告をしなければならない。
  • 解雇の意思表示は、必ずしも書面により行わなくともよい。(通達)
  • 解雇予告は、一般的には取り消すことができないが、労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取り消すことができる。解雇予告の意思表示取消しに対して、労働者の同意がない場合は、自己退職の問題は生じない。(通達)
  • 解雇の予告はしたものの、解雇予定日を過ぎて労働者を使用してしまった場合には、同一条件で労働契約がなされたものとみなされるので、その解雇予告については無効となり、その後解雇しようとするときには改めて解雇予告等の手続が必要となる。(通達)
  • 未就学児童が禁止されている労働に従事しているのを発見した場合、これに配置転換その他の措置を講ずるが、その事業場をやめさせなければならないときは、30日分以上の平均賃金を支払い即時解雇しなければならない。(通達)
  • 法定の予告期間を設けず、また法定の予告に代わる平均賃金を支払わないで行った即時解雇の通知は即時解雇としては無効であるが、使用者に解雇する意思があり、かつその解雇が必ずしも即時解雇であることを要件としてないと認められる場合には、その即時解雇の通知は、法定の最短期間である30日経過後に解雇する旨の予告として効力を有する。(通達)
  • 使用者が解雇予告をせず、即時解雇の通知をしたため、労働者がこれを誤信して予告期間中に休業して就職活動をした場合には、その即時解雇の通知が解雇予告として有効と認められるときには、使用者は解雇が有効に成立するまでの期間について休業手当を支払わなければならない。(通達)
  • 使用者が、解雇の予告と同時に労働者に休業を命じ、予告期間中に(労働基準法第26条の休業手当を支給した場合、30日前に予告が為されている限り、予告期間の満了によって解雇は有効に成立する。(通達)
  • 労働者が労働組合専従者であって、会社より賃金を受けていない場合であっても、組合専従期間中に会社に在籍するものである限り、解雇予告又は解雇予告手当ての支払いを行わなければならない。(通達)
  • 解雇予告手当は賃金ではないが、解雇の申渡しと同時に、通貨で直接支払わなければならないが、現実に労働者が受け取りうる状態に置かれていればよく、受領を拒んだ場合は、法務局に供託できる。(通達)
  • 労働者の即時解雇の効力は、使用者が解雇の意思表示をするとともに、解雇予告手当を現実に当該労働者が受けうる状態になったときに始めた発生する者であり、解雇予告を支払った日数分の当該解雇による労働契約の終了日を遡るようなことはできない。(通達)
  • 使用者が解雇予告の目的をもって工事の完了日を通告した場合、使用者が工事の完了日を予告するのみでは解雇の予告と解されないが、工事完了日を予告することによって解雇の予告をも含ませるような慣習等が確立している場合にはこの限りでない。(通達)
  • 事業場が赤字のために閉鎖して労働者を使用者の責任において他の事業場へ斡旋就職させた場合においても、当該労働者が任意退職を申し出ない限り、解雇予告又は解雇予告手当の支払いが必要となる。(通達)
  • 労働者が使用者に対して負う借金と解雇予告手当は相殺することができない。(通達)
  • 多人数の労働者を一斉に即時解雇する場合において、正確な解雇予告手当を解雇の通告と同時に支払うことが困難なときに、解雇の通告日に概算額を支払い、かつ、概算額が精算額より不足するときは、その後速やかに残余の不足額を支払うこととする即時解雇は有効である。(通達)
  • 解雇予告を受けた労働者であっても解雇予告期間中に他の使用者と雇用契約を結ぶことができる。ただし、自ら契約を解除した場合を除き、予告期間満了までは従来の使用者のもとで勤務する義務がある。(通達)
  • 労働者側からの任意退職についての予告期間は、労働基準法では特に規定されているわけではないが、民法第627条で雇用契約期間は2週間前に予告すれば解約することができるとされている。
  • 地方公務員法第29条第1項の規定に基づく地方公務員の懲戒免職についても本条に定める解雇予告等の所定の手続きをとる必要があるものと解されている(通達) 

(5)解雇予告の除外

 次の場合には、労働基準法第20条の解雇予告の規定は適用されない。

①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合

※①、②ともに行政官庁(所轄労働基準監督署長)の認定が必要である。

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労働者の責めに帰すべき事由として認定すべきものは次のようなものである。(通達)
イ 原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合
ロ 賭博等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を与えた場合
ハ 経歴(雇入れの際の採用条件となるようなもの)を詐称した場合
二 2週間以上正当な理由が無く無断欠勤し、出勤の催促に応じない場合
ホ 出勤不良等で数回にわたって注意を受けても改めない場合
ト 他事業場への転職

  • 即時解雇の意思表示をした後に解雇予告除外認定を受けた場合であっても、その解雇の効力は、使用者が即時解雇の意思表示をした日に遡って発生する。(通達)
  • クローズドショップ制を採っている事業場において労働者が労働組合から除名された場合、その除名されるに至った原因が、使用者との関係において本条の「労働者の責めに帰すべき事由」に該当する場合には、解雇予告除外認定の対象となるが、組合から除名されたことのみによって本条の「労働者の責めに帰すべき事由」に該当するとは限らない。(通達)

(6)解雇制限と解雇予告との関係

解雇予告の効力よりも、解雇制限が優先される。

  • 解雇制限期間中の労働者には、たとえ労働者の責めに帰すべき事由と判断される者であっても、解雇制限期間中には解雇してはならない。(通達)
  • 30日前に解雇予告をした場合であっても、当該解雇予告期間満了の直前にその労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業を要する以上は、1日の程度の負傷等であっても、本条が適用される。負傷し又は疾病にかかり、休業したことによって前の予告の効力の発生自体は中止されるだけであるから、改めて解雇予告する必要は無い。ただし、休業期間が長期にわたり、解雇予告として効力を失うものと認められる場合には改めて解雇予告する必要がある。(通達)

(7)解雇予告の適用除外

解雇予告の規定は、下記の労働者については適用されないが、それぞれ下記の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合には適用される。

①日日雇入れられるもの→1箇月を超えて引き続き使用されるに至った場合
②2箇月以内の期間を定めて使用される者→所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合
③季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者→同上 
④試みの使用期間中の者 →14日を超えて引き続き使用されるに至った場合

  • 1箇月の期間を定めて雇った者を、その期間を超えて引き続き使用した場合にはたとえ全体で2箇月を超えていなくても解雇の予告又は解雇予告手当の支払いを行う必要がある。
  • 季節的業務に4箇月間の期間を定めて使用される者であって雇入れの日から2週間の試用期間を設けている者を、雇入れの日から14日を経過した後に解雇する場合であっても、所定の期間を超えて使用していない場合には、解雇の予告又は解雇予告手当の支払いを行わなくてもよい。
  • 試みの試用期間中の者については、たとえ会社の規則で30日間の試用期間を定めていたとしても、14日を超えた時点で解雇の予告が必要となる。(通達)
  • 労働契約が形式的に更新されていても、短期の契約を数回に渡って更新し、かつ同一作業に引き続き従事させる場合には、実質的に期間の定めのない契約と同一に取り扱うべきものであるから、2箇月以内の期間を定めて使用される者には該当しない。(通達)
  • 日日雇い入れられる者として雇用していた労働者を幾日か経過した後に2箇月の期限付き労働者として雇用した場合であっても、当該2箇月の契約が反復継続されたものでない限り、その2箇月の期間満了前に解雇する際に解雇予告又は解雇予告手当の支払いを行う必要はない。(通達)
  • 日日雇い入れられる者を2週間の試みの試用期間を設けて期限付き若しくは無期限の雇用契約に変更したあと、その2週間の試みの試用期間中に解雇しようとする場合は、契約更新に伴い、明らかに作業内容が切り替えられる等客観的に試みの試用期間と認められる場合のほか、解雇予告又は解雇予告手当の支払いを必要とする。(通達)
  • 前記の期間については、暦日で計算する。例えば、本条の「1箇月」とは、労働日のみならず休日を含む暦による1箇月を意味する。(通達)

(8)退職勧奨について

退職勧奨の法的な性質は、退職の申し込みの誘因(労働者から退職を申し出るように使用者が働きかけるもの)、もしくは会社からする合意退職の申し込みである。

このような退職勧奨は、その行為自体から何か法的な効果が生じるものではなく、勧奨された労働者がこれに応じて初めて退職が成立する。労働者には諾否の自由があり、労働者が応じなければそれまでの話。したがって退職勧奨を行うための要件や制約を法律で定める必要も意味もない。このような観点から判例は、使用者は人事管理等の必要に基づき事由にいつでも退職勧奨をすることができ、適法に実施するための要件や手続などの制約は必要ないとする立場をとっている。

ただし、従業員の自由な意思形成を妨げたり、名誉感情その他人格権を侵害するような言動は許されず、そのような退職勧奨については不法行為(民法第709条)が成立し、慰謝料等損害賠償の対象となる。

そこで不当な退職勧奨とされないよう、説得のための手段・方法が社会通念上相当と認められる範囲内のものである必要がある。

違法とされた退職勧奨の例

①仕事をとりあげたり、机の上のごみ箱のごみをぶちまけたり、暴力・暴言がある場合
②ホワイトボードに「永久欠勤」と書くなどの嫌がらせ など

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