寄宿舎


寄宿舎生活の自治(労働基準法第94条)

使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない。

「2.」使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない。等

(1)私生活の自由

使用者は次のような行為等寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を犯す行為をしてはならない。(寄則4条)

  1. 外出又は外泊について使用者の承認を受けさせること
  2. 教育、娯楽その他の行事に参加を強制すること
  3. 共同の利益を害する場所及び時間を除き、面会の自由を制限すること

◎ 事業の付属寄宿舎とは?

 [寄宿舎]とは常態として相当人数の労働者が宿泊し、共同生活の実態を備えるものをいい、[事業に付属する]とは事業経営の必要上その一部として設けられているような事業との関連を持つことをいうので、社宅、アパート式寄宿舎、住込み先は含まれない。(通達)

  • 本条1項(私生活の自由)の違反について罰則の適用はない。
  • 使用者が寄宿労働者の私生活の自由を侵すことは許されないが、舎監、寮母等を置くことは、私生活の自由を侵さない限り、差し支えない。(通達)
  • 本条は1項、2項ともに罰則の定めはなく、いわゆる訓示規定である。なお、未成年について酷使又は雑役使用の事実があるときは、行政官庁等が労働契約を解除することができる。

(2)寄宿舎生活の自治

使用者は寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に関する一切の事項に干渉してはならない。
例えば、使用者が役員の選任についての案を作成するようなことは本条違反である。(通達)

  • 法94条2項(寄宿舎生活の自治)に違反して役員の選任に干渉した場合は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。(法119条1号)
  • 寄宿舎に寄宿する労働者に関する事項について、使用者のために事務を処理する者(舎監、世話係等)は、たとえ寄宿舎に入舎していても、寮長等の役員になることはできない。(通達)
  • 事業付属寄宿舎の自治のみに選任する寮長に対して賃金を支払うか否かは当事者の自由である。(通達)

寄宿舎規則(労働基準法第95条)

(1)寄宿舎規則の作成および届出

事業の付属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、次の事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならず、当該事項を変更した場合も同様とされる。

  1. 起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
  2. 行事に関する事項
  3. 食事に関する事項
  4. 安全及び衛生に関する事項
  5. 建設物及び設備の管理に関する事項
  • 使用者は、寄宿舎規則の作成又は変更について、その案をあらかじめ寄宿舎に寄宿する労働者に周知させる措置を講ずるものとされている。(寄則2条)

(2)労働者の同意

使用者は前記「1.」~「4.」の事項に関する規定の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならず、届出の際にはその同意を証明する書面を添付しなければならない。

  • 就業規則の場合の「意見」とは異なり、寄宿舎規則の場合には「同意」を得なければならない。
  • 前記「1.」~「5.」の事項はいわゆる必要的記載事項であって、そのいずれか1つを欠いても届出は受理されない。ただし、⑤の事項に限っては、寄宿舎労働者の過半数を代表する者の同意は必要とされない。
  • 寄宿舎規則作成時に労働者の過半数代表者の同意を得ていれば、その後に作成当時の労働者の過半数が入れ替わっていても、改めて寄宿舎労働者の同意を得る必要はない。(通達)
  • 使用者は、寄宿舎規則の作成又は変更について、その案をあらかじめ寄宿舎に寄宿する労働者に周知させる措置を講ずるものとされている(寄2条)。
  • 同意を証明する書面は、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表するものの署名又は記名押印のあるものでなければならない(寄1条の2、2項)。
  • 建設業附属寄宿舎(事業の完了の時期が予定されてる建設業の事業の付属寄宿舎)規定には、以下のように定められている。
  1. 寄宿舎の所在地を管轄する労働基準監督署長と事業場の所在地を監督する労働基準監督署長が異なる場合には、寄宿舎規則は寄宿舎の所在地を管轄する労働基準監督署長に届け出ることができる(建寄2条1項)。
  2.        

  3. 他人の所有に係る建物を寄宿舎として使用する場合には、貸借契約の当事者及び期間等を明らかにした書面を寄宿舎規則に添付して届け出なければならない(建寄2条2項1号)。
  4. 寄宿舎規則において事業主及び寄宿舎管理者(寄宿舎の管理について権限を有するもの)を明らかにし、かつ、寄宿舎の出入り口等見やすい箇所にこれらの者の氏名または名称を掲示しなければならない(通達)

寄宿舎規則(労働基準法第96条)

措置の詳細については「事業付属寄宿舎規程」及び「建設業付属寄宿舎規程」に定められている。

(1)事業付属寄宿舎規程

  1. 完全な区画を設け且つ出入口を別にした場合を除き、男性と女性とを同一の棟の建物に収容してはならない。(建設業附属寄宿舎規程にはこの規程がない)(寄8条)
  2. 寝室は、原則として地下又は3階以上に設けてはならないが、建物が耐火建築物に該当する場合には3階以上に、準耐火建築物に該当する場合には3階に設けることができる。(寄9条)
  3. 常時15人未満の労働者が2階以上の寝室に寄宿する建物には、適切な避難設備がある場合を除いて、避難階段を1箇所以上(常時15人以上労働者が寄宿する場合には2箇所以上)設けなければならない。(寄11条)
  4. 就眠時間を異にする2組以上の労働者を同一の寝室に寄宿させてはならない。ただし、交替の際、睡眠を妨げないよう適切な方法を講じた場合にはこの限りでない。 (寄21条)
  5. 常時30人以上の労働者を寄宿させる寄宿舎には、食堂を設けなければならない。ただし、寄宿舎に近接した市に事業場の食堂がある場合には、この限りでない。(寄24条)
  6. 1回300食以上の給食を行う場合には栄養士をおかなければならない。(寄26条)
  7. 常時50人以上の労働者を寄宿舎に寄宿させる場合には寝台その他の臥床し得る設備を有する休養室を設けなければならない。(寄33条)

(2)建設業付属寄宿舎規程

  1. 寄宿舎管理者(寄宿舎の管理について権限を有する者)に1箇月以内ごとに1回、寄宿舎を巡視させなければならない。(建寄3条の2)
  2. 常時15人未満の者が2階以上の寝室に居住する建物には、避難階段を1箇所以上(常時15人以上の者が居住する場合は2箇所以上で、そのうちの1箇所については避難器具ではなく避難階段でなければならない)設けなければならない。(建寄8条)
  3. 寄宿舎に寄宿する者に対し、寄宿舎の使用を開始した後遅滞なく1回、及びその後6箇月以内ごとに1回、避難及び消火の訓練を行わなければならない。(建寄12条の2)
  4. 常時50人以上の者を寄宿舎に寄宿させる場合には休養室を設けなければならない。 (建寄23条)

監督上の行政措置(労働基準法第96条の2、3)

(1)計画の届出

使用者は次のいずれかの事業の付属寄宿舎の設置、移転、又は変更に当たっては、危害防止等に関する基準に従い定めた計画を、工事着手14日前までに、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない。

  1. 常時10人以上の労働者を就業させる事業
  2. 厚生労働省令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業

「2.」の事業の付属寄宿舎については、労働者数のいかんにかかわらず、計画を届け出なければならない。

(2)工事差止・計画変更命令

届けられた計画を審査した結果、労働者の安全及び衛生に必要と認める場合は、行政官庁(所轄労働基準監督署長)は工事着手を差し止め、又は計画の変更を命じることができる。

(3)寄宿舎の使用停止等の命令

労働者を就業させる事業の付属寄宿舎が、安全及び衛生に関し定められた基準に反する場合においては、行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、使用者に対して、その全部又は一部の使用の停止、変更その他必要な事項を命じることができる。この場合使用者に命じた事項について必要な事項を労働者に命ずることもできる。

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